AIの熱で電気代爆増?冷却電力85%減の新技術

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 生成AIの普及で、データセンターは「熱との戦い」に直面しています
  • データセンターの電力のうち、約30〜40%が「冷やすこと」に使われています
  • 富士電機が冷却の電力を最大85%減らす「エジェクタ冷却機」を世界で初めて開発しました
  • 冷却の主流は「空冷」から、水を使う「液冷」へと一気に進化しています
  • 省エネ冷却は日本企業が得意な分野で、世界での商機が広がっています

ChatGPTに質問すると、数秒で答えが返ってきますよね。でもその裏側では、巨大なコンピューターが猛烈な熱を出しています。その熱を冷やすために、いま世界中で膨大な電気が使われているのです。この記事では、生成AIを支える「冷却技術」の最前線と、電力を85%も減らす日本発の新技術をやさしく解説します。

そもそもデータセンターは何が問題なの?

データセンターとは、たくさんのコンピューター(サーバー)を集めた施設です。

ネット検索も、動画配信も、ChatGPTも、すべてこの施設の中で動いています。

生成AIの登場で、この施設の発熱が大問題になっています。

AIの計算にはGPU(画像処理に使う高性能な半導体)が大量に必要です。GPUは計算するとき、たくさんの電気を使い、その分だけ強い熱を出します。

NVIDIAの最新サーバーでは、ラック(サーバーを並べる棚)1つで約120キロワットもの電力を使います。これは一般家庭およそ40軒分の電気に相当します。

使った電気は、ほぼすべて熱に変わります。そのまま放っておけば、サーバーは熱で壊れてしまいます。

だから冷やし続ける必要があるのです。実は、データセンターの電力のうち約30〜40%が「冷やすこと」だけに使われています

つまり、AIを動かす電気と同じくらい、AIを冷やす電気もかかっているのです。

富士電機の「エジェクタ冷却機」がすごい理由

この冷却の電力をなんと最大85%も減らす技術が、2026年に登場しました。

富士電機が世界で初めて開発した「エジェクタ冷却機」です。

2026年5月27日に発表され、同年6月から発売されます。データセンターの省エネを大きく前進させる新技術として注目を集めています。

どうやって電力を85%も減らすの?

ふつうのエアコンは「コンプレッサ(圧縮機)」というモーターで冷媒を圧縮します。この部品が電気をたくさん使います。

エジェクタ冷却機は、このコンプレッサを使いません。

代わりに、サーバーが出す「排熱」をエネルギー源として再利用します。捨てていた熱を、冷やす力に変えてしまうのです。

仕組みのカギは「エジェクタ」という独自の部品です。超音速のノズルから冷媒を噴き出し、その勢いでガスを圧縮・循環させます。電気で動くモーターがほとんど要りません。

面白いことに、この技術は富士電機が自動販売機で長年培ってきた省エネ技術から生まれました。冷たい飲み物を効率よく冷やすノウハウが、データセンターに応用されたのです。

いつから、どこで使えるの?

発売は2026年6月からです。まずは国内のデータセンター向けに提供されます。

冷却にかかる消費電力を最大85%削減できるため、施設全体の電気代を大きく下げられます。

電力不足が心配される日本にとって、省エネはとても重要なテーマです。だからこそ、この技術への期待は高まっています。

冷却技術の進化|「空冷」から「液冷」へ

冷やし方そのものも、いま大きく変わっています。

これまでの主流は「空冷」でした。エアコンで冷たい風を送り、サーバーを冷やす方法です。

ところがAIサーバーの発熱が激しすぎて、風だけでは追いつかなくなりました。

そこで広がっているのが、水などの液体で直接冷やす「液冷」です。

水は空気よりもずっと効率よく熱を運びます。実際、ラックの密度が30キロワットを超えると、もう空冷では冷やしきれないと言われています。

液冷にはいくつかの種類があります。代表的なものを見てみましょう。

  • 直接液冷(DtC):チップの真上に冷却プレートを貼り、水を流して冷やす方法。熱の70〜80%を回収できます。
  • 液浸冷却:サーバーまるごとを特殊な液体に沈める方法。冷やす力が非常に強いのが特徴です。
  • エジェクタ冷却:排熱を再利用する富士電機の新方式。冷却そのものの電力を大きく減らせます。

最新のNVIDIA製サーバーでは、すでに約85%を液体で、残り15%を空気で冷やす構成が一般的になっています。

他の冷却技術と比べてどう違う?

世界の大手も、それぞれ独自の冷却技術を打ち出しています。

NVIDIAは新世代基盤「Blackwell(ブラックウェル)」で、液冷により水の使用効率を従来の300倍以上に高めたと発表しました。

パナソニックは2026年3月から、欧州の生成AIデータセンター向けに冷却液を分配する装置(CDU)の受注を始めました。空冷と液冷を組み合わせ、省電力と省スペースを両立させる狙いです。

では、富士電機のエジェクタ冷却機は何が違うのでしょうか。

多くの技術が「いかに効率よく熱を運ぶか」を競っているのに対し、エジェクタ冷却機は「冷やす装置そのものの電力を減らす」点に強みがあります。

排熱をエネルギーに変えるという発想は、ほかにあまり例がありません。だからこそ「世界初」と呼ばれているのです。

つまり、液冷で効率よく熱を集め、エジェクタで省エネに冷やす。両方を組み合わせれば、さらに大きな効果が見込めます。

日本市場や私たちへの影響は?

「データセンターの話なんて、自分には関係ない」と思っていませんか。

実は、私たちの生活に深く関わっています。

AIの利用が増えれば、データセンターの電力消費も増えます。電力需要が高まれば、電気代の上昇につながる心配があります。

だから冷却の省エネは、社会全体の電気代を抑えることにもつながるのです。

そしてこの分野は、日本企業がとても強い領域です。

富士電機の省エネ冷却、パナソニックの冷却ユニット、富士通の省電力サーバー技術など、世界に通用する技術が次々に生まれています。

ある国内のデータセンター運営会社を想像してみてください。AI需要でサーバーを増やしたいのに、電気代と発熱がネックになっています。そこに「冷却電力を85%減らせる」という技術が登場すれば、増設のハードルは一気に下がります。

省エネ冷却は、日本が世界で勝てる新しい商機になりつつあるのです。

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜAIはそんなに熱くなるのですか?

AIの計算には大量のGPUが使われます。GPUは多くの電気を使い、その電気がほぼすべて熱に変わるからです。最新チップは1個で1200ワット近い熱を出すこともあります。

Q2. 液冷だと水道代が高くなりませんか?

多くの液冷システムは、同じ水を循環させて使います。NVIDIAのBlackwellでは水の使用効率を300倍以上に高めており、思ったほど水を消費しない設計が進んでいます。

Q3. エジェクタ冷却機は家庭でも使えますか?

今のところデータセンター向けの大型設備です。ただし、もとは自動販売機の省エネ技術が出発点なので、将来は身近な機器に応用される可能性もあります。

Q4. 冷却技術が進むと、私たちに何かメリットはありますか?

あります。冷却の省エネが進めば、AIサービスを動かすコストが下がります。電力需要の抑制にもつながり、電気代の上昇を和らげる効果が期待できます。

Q5. 空冷はもう使われなくなるのですか?

いいえ。発熱の少ない用途では今も空冷が使われます。実際の現場では、液冷と空冷を組み合わせて使うのが一般的です。

まとめ

最後に、この記事のポイントを振り返ります。

  • 生成AIの普及で、データセンターは深刻な「発熱問題」を抱えています
  • 電力の約30〜40%が冷却に使われており、省エネが大きな課題です
  • 富士電機が冷却電力を最大85%減らす「エジェクタ冷却機」を世界初開発しました
  • 冷却は「空冷」から「液冷」へ進化し、直接液冷や液浸が広がっています
  • 省エネ冷却は日本企業が強い分野で、世界での商機が拡大しています

次にAIを使うときは、その裏側で頑張る「冷却技術」のことも少し思い出してみてください。今後の省エネ冷却のニュースに注目してみましょう。

参考文献

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