ChatGPTの8割が左寄り?6大AI検証

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • ワシントン・ポストが主要AI6種を検証し、ほとんどが「左派寄り」と判明
  • ChatGPTは約8割が左派寄りの回答で、もっとも偏りが大きかった
  • 偏りの理由は「学習データ」と「人の手による微調整(RLHF)」の2つ
  • 企業献金や差別是正など、意見が割れる話題で偏りが出やすい
  • 日本は国産AI「源内」を育成中。海外AIの価値観のクセに注意が必要

AIに政治の質問をしたとき、その答えが「片方の意見」に寄っていたら、あなたは気づけますか?2026年6月、ワシントン・ポストが主要なAIを徹底検証し、その多くが左派寄りの回答をしやすいと報じました。この記事では、何がどれくらい偏っていたのか、なぜそうなるのか、そして日本の私たちにどう関係するのかを、やさしく解説します。

ワシントン・ポストが暴いたAIの「政治的なクセ」

2026年6月24日、米国の大手新聞ワシントン・ポストが、ある調査結果を公開しました。

内容は、人気のAIチャットボット(人間のように会話できるAI)に政治的な質問を投げかけ、その答えの傾向を分析するというものです。

質問は、ダートマス大学とスタンフォード大学の研究者がつくったものを使いました。各AIには30語以内で答えるよう指定し、回答を「左派寄り」「右派寄り」「両方の意見を含む」に分類しました。

調べたのは、次の6つのAIです。

  • OpenAIの「GPT-5.5」(ChatGPTの頭脳)
  • Googleの「Gemini 3.1 Pro」
  • Anthropicの「Claude Opus 4.8」
  • 中国の「DeepSeek V4 Pro」
  • イーロン・マスク氏の「Grok 4.3」
  • 右派系SNSが開発した「Arya」

6大AIを検証した結果は?数字で見る偏り

結果は、AIごとにはっきりと差が出ました。具体的な数字を見てみましょう。

ChatGPT(GPT-5.5)がもっとも左寄り

ChatGPTは、約80%が左派寄りだけの回答でした。両方の意見を示したのは17%、右派寄りだけはわずか3%です。

6つのなかで、もっとも偏りが大きいという結果になりました。

Geminiはバランス重視

逆にGoogleのGeminiは、約93%が両論併記(両方の意見を載せること)でした。左派寄りだけは7%にとどまりました。

同じAIでも、設計の考え方でここまで変わります。

ClaudeとGrokは中間

Claudeは左派寄りだけが43%、両論併記が57%でした。

意外なのはGrokです。マスク氏は「偏らないAI」を目指したはずですが、左派寄りだけが40%。右派寄りだけの33%を上回りました。中国のDeepSeekも、はっきり左寄りだったと報告されています。

なぜAIは左寄りになるの?2つの理由

「AIは機械だから中立なはず」と思った方も多いはずです。では、なぜ偏りが生まれるのでしょうか。理由は大きく2つあります。

理由1:学習データのかたより

AIは、インターネット上の大量の文章を読んで言葉を覚えます。

その文章自体に、もともと特定の価値観が多く含まれていると、AIの「常識」もそちらに引っぱられます。元になる材料が偏っていれば、できあがる答えも偏るというわけです。

理由2:人の手による微調整(RLHF)

もう1つが「RLHF」(人間の評価でAIを賢くする仕組み)です。

AIの答えに人間が「良い・悪い」と点数をつけ、好まれる答え方へ調整します。このとき、評価する人の価値観がAIに移りやすいのです。

スタンフォード大学が2025年に24個のAIを調べたところ、ほとんどが左寄りで、RLHFがその偏りをさらに強めると分かっています。

つまり、賢く整える工程そのものが、結果として偏りを生むことがあるのです。だからこそ、各社は「どんな人が、どんな基準で評価するか」に頭を悩ませています。

偏りが出やすかった3つの話題

すべての質問で偏ったわけではありません。意見が大きく割れるテーマほど、差が出やすかったといいます。

  • 企業からの政治献金を無制限に認めるべきか
  • 他国への侵略戦争をどう評価するか
  • アファーマティブ・アクション(人種などの格差を是正する優遇措置)の是非

こうした「答えが1つに決まらない問い」で、AIは片方の立場に寄りがちでした。

他の調査やAIとどう違う?

AIの政治的な偏りは、実は今回が初めての指摘ではありません。

2025年のスタンフォード大学の調査でも、多くのモデルが左寄りと判定されています。今回のワシントン・ポストは、最新モデルで同じ傾向を改めて確認した形です。

一方で、右派系SNSが作った「Arya」のように、あえて特定の立場に寄せて設計されたAIもあります。AIの中立性は「自然に決まる」のではなく、開発側の方針で大きく変わるのです。

各社の反応も分かれました。Googleは「どの立場にも偏らないよう設計している」と説明。Anthropicは「政治的な話題では、もっと背景情報を加える余地がある」と前向きにコメントしています。

日本のユーザーや企業への影響は?

ここで気になるのが、日本への関係です。ポイントは2つあります。

1つ目は、米国の「左右」は日本にそのまま当てはまらないこと。今回の調査は米国基準です。日本の政治や社会の感覚とはズレる場合があります。

2つ目は、海外製AIが「英語圏の価値観」を土台にしている点です。日本の行政手続きや商習慣をたずねると、正論でもどこかズレた答えが返ることがあります。

こうした懸念から、日本政府はデジタル庁の国産AI基盤「源内(げんない)」を進めています。2026年3月にはNTTデータ・NEC・富士通・PFNなど7社のLLM(文章を作るAI)が選ばれました。選定基準にも「バイアスへの対策」が明記されています。

AIの答えを鵜呑みにしない3つのコツ

では、私たちはどう付き合えばよいのでしょう。身近な場面で考えてみます。

たとえば中学生が宿題で「移民政策の賛成・反対」をChatGPTに聞いたとします。片方の意見だけが返ってきても、それが「唯一の正解」ではありません。もう片方の意見も聞き返すクセをつけましょう。

会社員が企画書づくりで「両論を整理して」とAIに頼む場面もあります。出てきた文章をそのまま貼ると、知らないうちに偏りが混ざることがあります。最後は人の目で確認が必要です。

選挙前に候補者の比較をAIに聞くのも要注意です。投票の判断は、AIの要約だけでなく、公式情報や複数のニュースで確かめてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. AIが左寄りなのは、わざとですか?
いいえ、多くは意図的ではありません。学習データや調整の過程で自然に生まれる偏りと考えられています。

Q2. 設定で中立にできますか?
完全には難しいです。ただ「賛成・反対の両方を、同じ分量で教えて」と頼むと、バランスは取りやすくなります。

Q3. 日本語で使うと偏りは変わりますか?
変わる可能性があります。今回の調査は英語が中心です。日本語特有の傾向は、まだ研究の途中です。

Q4. どのAIが一番中立ですか?
今回の検証では、両論を示す割合が高かったのはGeminiでした。ただし話題や時期で結果は変わります。

まとめ

  • ワシントン・ポストの検証で、主要AIの多くが左派寄りと判明した
  • ChatGPTは約8割が左派寄りで、もっとも偏りが大きかった
  • 原因は「学習データ」と「人の手による微調整(RLHF)」の2つ
  • 米国基準の左右なので、日本にそのまま当てはまるわけではない
  • 日本は国産AI「源内」でバイアス対策を進めている

AIは便利な相棒ですが、その答えには「クセ」があります。大事な判断のときは、必ず両方の意見を確かめる習慣を持ちましょう。

参考文献

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