- ICT総研がChatGPT・Gemini・Claude Sonnet 5の応答速度をAPI経由で実測した
- 回答が出始めるまではChatGPTが0.70秒で最速、Geminiが1.79秒で最も遅い
- 回答が終わるまではClaude Sonnet 5が3.28秒で、ChatGPTの約2.5倍かかった
- Geminiは「開始=完了」で追加の待ち時間がなく、ばらつきは3社中で最小
- 速さの順位は測り方で入れ替わる。用途に合った指標を選ぶ必要がある
AIに質問して、返事が出てくるまでの数秒がやけに長く感じたことはありませんか。その「なんとなく遅い」を秒単位の数字にした調査が公開されました。ChatGPT・Gemini・Claude Sonnet 5の3つを、昼と深夜に30回ずつ実測した結果です。そして順位は、物差しを変えると入れ替わります。
調査の中身|昼と深夜に30回ずつAPIで実測
調査したのはIT調査会社のICT総研です。発表は2026年7月21日でした。
対象は3サービス。ChatGPT(gpt-5-chat-latest)、Gemini(gemini-3.5-flash)、Claude Sonnet 5(claude-sonnet-5)です。
使ったのはAPI(プログラムからAIを直接呼び出す窓口)でした。アプリの画面越しではなく、裏側の通信をそのまま計っています。
質問は「日本の首都はどこですか?」「水の沸点は何度ですか?」といった一問一答の短文10種類。出力上限は3サービスとも200トークン(日本語でおよそ100〜200文字)にそろえました。
測定日は2026年7月14日の12時台を昼帯、7月15日の2時台を深夜帯としています。各サービス・各時間帯で30回ずつ、30秒おきの計測です。
回線は有線LAN、VPN(通信を別経路に通す仕組み)は無効。条件のブレをできるだけ削った測り方になっています。
「速さ」を2つに分けたのがポイント
この調査が面白いのは、速さを1つの数字で片づけなかったところです。
TTFT(初回トークン到達時間)は、質問を送ってから最初の1文字が画面に出るまでの時間を指します。
E2E(完全応答時間)は、回答が最後まで表示し終わるまでの時間です。
似ているようで、この2つはまったく別の性質を測っています。分けた瞬間に、3サービスの性格がくっきり見えてきました。
応答開始はChatGPTが0.70秒で最速
まずTTFTの結果です。中央値(数字を並べたときの真ん中の値)で比べます。
- ChatGPT:昼0.70秒/深夜0.73秒
- Claude Sonnet 5:昼0.94秒/深夜1.05秒
- Gemini:昼1.79秒/深夜2.05秒
ChatGPTが3サービス中で最速でした。2位のClaude Sonnet 5(昼0.94秒)と比べても約1.3倍の差があります。
しかもChatGPTは昼と深夜でほとんど変わりません。0.70秒と0.73秒、その差はたった0.03秒でした。
ただし、いいことばかりではありません。測定値の標準偏差(数字のばらつきの大きさ)は昼0.43秒・深夜0.44秒で、3サービス中で最大でした。
ICT総研は「通常ケースの応答は非常に速い一方、まれな大幅遅延も発生する」と説明しています。ふだんは速い。ただ、たまに待たされる、ということです。
応答完了では最大2.5倍の差がついた
次はE2Eです。ここで景色が変わります。
- ChatGPT:昼1.29秒/深夜1.27秒
- Gemini:昼1.79秒/深夜2.05秒
- Claude Sonnet 5:昼3.28秒/深夜3.41秒
ChatGPTは最速の座を守りました。開始から完了まで、昼で増えたのはわずか0.59秒(1.29秒−0.70秒)です。
Claude Sonnet 5は「書き終わる」のに時間がかかる
Claude Sonnet 5のE2Eは昼3.28秒で、自身のTTFTの約3倍でした。
開始から完了までの差は昼2.34秒、深夜2.36秒。文字が出始めたあとも2秒以上は書き続けている計算になります。
ChatGPTの1.29秒と並べると、最大2.5倍の開きです。同じ「1文で終わる答え」を返すのに、これだけ差がつきました。
Geminiの1.79秒は、実はもう全部終わっている
いちばん興味深いのはGeminiです。
GeminiのE2Eは昼1.79秒・深夜2.05秒。TTFTとほぼ同じ数字でした。
ICT総研はこれを「短文回答における生成時間がほぼゼロ」と表現しています。文字が出始めた時点で、答えはもう出そろっているわけです。
つまりTTFTだけを見ればGeminiは最下位。けれど「答えが全部そろうまで」で比べると、Claude Sonnet 5より1.5秒ほど速い2位に上がります。
順位が指標でひっくり返る。ここが今回いちばん実務に効く発見でした。
速さより大事かもしれない「安定性」
この調査がもう1つ持ち込んだ物差しが標準偏差です。応答時間がどれだけブレるかを表します。
- Gemini:昼0.20秒/深夜0.20秒(3サービス中で最小)
- Claude Sonnet 5:昼0.30秒/深夜0.45秒
- ChatGPT:昼0.43秒/深夜0.44秒(3サービス中で最大)
Geminiのばらつきは昼も深夜も0.20秒で一定でした。ChatGPTの昼0.43秒の約半分にとどまっています。
中央値と平均値の差も最大0.34秒と小さく、極端に遅い回がほとんど出ていません。
速くはない。けれど、いつ呼んでも同じくらいの時間で返ってくる。処理時間を見積もりたいシステムでは、この性質が効いてきます。
深夜のほうがブレる、という意外な結果
Claude Sonnet 5は昼0.30秒から深夜0.45秒へ、ばらつきが1.5倍に広がりました。
深夜なら空いていて安定しそうなものです。ところが日本の深夜帯は、米国や欧州の利用が集中する時間と重なります。
ICT総研も、これがClaude Sonnet 5の深夜帯のばらつき拡大の要因ではないかと説明しています。
世界中で同じサーバー群を共有するサービスでは、「日本時間の夜中はすいている」とは限らないわけです。
海外ベンチマークと数字が食い違う理由
ここで疑問が浮かびます。海外の比較サイトを見ると、まるで違う数字が並んでいるからです。
たとえばArtificial Analysisでは、Claude Sonnet 5を最大の思考モードで動かしたときのTTFTが180秒を超える、といった値が掲載されています。今回の0.94秒とは桁が違います。
矛盾しているわけではありません。測っているものが別なのです。
- 質問の重さ:今回は一問一答の短文。比較サイトは難問や長文を投げることが多い
- 思考モードの有無:Claude Sonnet 5には答える前にじっくり考えるモードがある。これを効かせると最初の1文字までが極端に延びる
- 出力の長さ:今回は200トークン上限。数千トークン出す前提なら、1秒あたりの生成速度のほうが効いてくる
- 計測地点:日本の有線LANから測るか、海外のデータセンターから測るかで往復時間が変わる
ちなみに出力の速さで見ると評価はまた動きます。Gemini系のFlashモデルは毎秒300トークン前後を出すという報告があり、長文ではむしろ有利になる場面があります。
どれが正しい、という話ではありません。自分の使い方に近い測り方をした数字を選ぶのが正解です。
日本のユーザーと企業にどう効くのか
では、この秒数は現場でどんな意味を持つのでしょうか。
1秒の壁は想像より手前にある
音声対話の設計では、応答が300ミリ秒を超えると違和感が生まれ、1秒を超えると「壊れたのかな」と疑われると言われています。500〜800ミリ秒が自然に感じる帯域だという整理もあります。
この基準で見ると、TTFT0.70秒のChatGPTはぎりぎり自然な範囲に収まります。
一方、1.79秒のGeminiをそのまま音声で使うと、沈黙が気になる水準です。
ただし文字で読むチャットなら話は別。読み始められさえすればいいので、TTFTの短さがそのまま「サクサク感」になります。
3つの現場で考えてみる
コールセンターの一次応答をAIに任せる場合を考えてみてください。お客さまが話し終えてから3秒黙り込まれると、運用担当者は「これは使えない」と判断するはずです。ここではE2Eの短さが最優先になります。
社内の問い合わせボットならどうでしょう。総務に「有給の残り日数はどこで見るのか」を尋ねるような用途です。1〜2秒の差より、文字が出始めるまでの短さのほうが満足度を左右します。
夜間バッチで問い合わせ履歴を大量に要約する場合は、また事情が違います。1件あたり0.5秒の差でも、2万件なら約2.8時間の差です。ここでは速さと、時間が読めることの両方が効いてきます。
「深夜は空いている」の前提を見直す
日本企業が重い処理を深夜に寄せるのは、長く続いてきた定番です。
けれど今回の結果は、グローバルなAIサービスではその前提が崩れうることを示しました。深夜のほうがブレが大きくなる場合があるからです。
自社が実際に使う時間帯で測り直してみる。それだけで見積もりの精度が変わります。
よくある質問(FAQ)
Q1. この数字は普段アプリで使うときの速度と同じですか?
少し違います。ICT総研は「API経由のため体感値より若干速い傾向がある」と明記しています。
アプリ経由では画面の描画やログイン処理が挟まるぶん、体感はもう少し遅くなると考えるのが自然です。
Q2. 結局どれを選べばいいですか?
用途で変わります。反応の速さを重視するならChatGPT、処理時間の読みやすさを重視するならGemini、というのが今回の数字から言えることです。
ただし注意点があります。この調査が測ったのは速度だけで、回答の正確さや質は評価の対象外です。速さだけで選ぶのは危険です。
Q3. なぜGeminiだけTTFTとE2Eがほぼ同じなのですか?
短い回答では生成にかかる時間がほぼゼロで、答えがまとまって届くためです。
今回は200トークン上限の短文でした。数千字の長文を書かせる場合は、この差が現れる可能性があります。
Q4. TTFTとE2E、どちらを重視すべきですか?
人が画面を見ながら待つ用途ならTTFTです。文字が出始めれば、人は読み始められます。
逆に、AIの回答を受け取ってから次の処理に渡すシステムならE2Eです。全部そろわないと先に進めないからです。
Q5. 30回という試行回数で十分ですか?
傾向をつかむには有効ですが、決して多くはありません。
ICT総研自身も、測定値は実施日時やネットワーク環境、サーバー稼働状況で変動し、各社の公表値と異なる場合があると注記しています。参考値として受け取るのが適切です。
まとめ
- ICT総研が2026年7月21日、3大AIチャットサービスの応答速度実測調査を発表した
- 回答が出始めるまで(TTFT)はChatGPTが昼0.70秒で最速、Geminiが昼1.79秒で最も遅い
- 回答完了まで(E2E)はChatGPTが昼1.29秒、Claude Sonnet 5が昼3.28秒で最大2.5倍差
- GeminiはTTFTとE2Eがほぼ同値で、ばらつきも0.20秒と3サービス中で最小
- Claude Sonnet 5は深夜帯にばらつきが0.45秒へ拡大。海外の利用集中が背景と見られる
- 速さの順位は指標と条件で入れ替わる。海外ベンチマークとの食い違いもここに理由がある
まずは自分がAIを使う時間帯と用途で、実際に何秒かかっているかを測ってみてください。他人のベンチマークより、その1回の実測のほうが判断材料になります。


