画像AI39種を同じ命令で比較|1枚6円

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

taolis.net X note Voicy YouTube
  • OpenRouterが39種類の画像生成AIを同じ命令で比べられる「画像ベンチマーク」を公開
  • 課題は「数を数える」「文字を書く」「〜がない絵を描く」など、AIが苦手な7カテゴリ
  • 結果は価格順・生成時間順に並べ替え可能。1枚あたり約6円のモデルもある
  • LMArenaのような投票式ランキングと違い、点数ではなく実物の画像を並べて見せる方式
  • 日本語の文字を絵の中に入れたい人ほど、この比較表が効いてくる

画像生成AIを選ぶとき、「結局どれが一番いいの?」で止まってしまったことはありませんか。モデルは毎月のように増えるのに、横に並べて比べる手段がありませんでした。OpenRouterが公開した新しい比較ツールは、39種類のAIにまったく同じ命令を出し、その結果を一枚の表に並べてくれます。

OpenRouterが「画像ベンチマーク」を公開

OpenRouterは2026年8月21日、画像生成AIの比較ツール「Image Benchmarks」を発表しました。日本ではGIGAZINEが8月25日に取り上げ、一気に知られるようになりました。

OpenRouter(オープンルーター)は、いろいろな会社のAIを一つの窓口から使えるサービスです。GoogleのAIもOpenAIのAIも、同じ入り口から呼び出せます。

今回の対象は、そこで使える画像モデル39種類すべてです。一部の人気モデルだけを選んだ「おすすめ集」ではありません。

仕組みはとてもシンプルです。同じプロンプト(AIへの命令文)を全モデルに投げ、返ってきた画像をグリッド状に並べる。それだけです。

点数もランキングも出しません。判断するのは見ている人自身という設計になっています。

OpenRouterはこの方針の理由も説明しています。従来のアリーナ方式のスコアや、AIに採点させる方法(LLM-as-judge)では、人が感じる微妙な品質差を拾いきれない、という考え方です。

AIが苦手なことだけを集めた7つの課題

並べるだけなら誰でもできます。このツールの価値は、選ばれているお題の意地悪さにあります。

課題は7つのカテゴリに分かれています。ありえない場面、数を数える、文字を書く、位置関係、否定、画像編集、一貫性の7つです。

どれも「AIが昔から転びやすいポイント」ばかりです。順に見ていきます。

数を数える

「指を3本立てた手」。この一言で崩れる画像生成AIは、いまだにたくさんあります。

ベンチマークにはほかにも、決まった枚数のトランプや、決まった個数のサイコロを描かせる課題が入っています。

AIは絵の「雰囲気」を再現するのは得意でも、個数という正解が一つしかない情報は取りこぼしがちです。

文字を書く

ポスターに長い文字列をそのまま正確に入れる、という課題があります。

さらに難易度が高いのが、複数の言語を同じ画面の中に共存させる課題です。

広告やサムネイルを作る人にとって、ここは死活問題になります。文字が一文字でも崩れれば、その画像は使えないからです。

「ない」を描く

否定カテゴリのお題が、いちばん人間らしくて面白いところです。

「縞のないシマウマ」「広告のないタイムズスクエア」。この2つが代表例として挙げられています。

AIは「シマウマ」と聞いた瞬間に縞模様を描き始めます。「〜がない」という指示を無視してしまうのです。

ほかにも、縁までなみなみと注がれた白ワインのグラスという課題があります。AIの学習データには八分目まで注がれた写真しかないため、多くのモデルが勝手に量を減らしてしまいます。

価格と速度で並べ替えられるのが本当の価値

この比較表には、画像のきれいさ以外にもう一つの軸があります。価格と生成時間で並べ替えられる点です。

実務では、これが効きます。最高品質のモデルを1枚だけ使うのか、そこそこの品質を100枚使うのかで、選ぶべきモデルはまったく変わるからです。

実際の単価も公開されています。ByteDanceのSeedream 4.5は1枚あたり0.04ドル(約6円)。Seedream 5.0 Proは0.045ドル(約7円)からです。

Black Forest LabsのFLUX.2 Proは、1メガピクセルあたり0.03ドル(約4.5円)という面積課金になっています。

一方、OpenAIのGPT Image 2は入力・出力とも100万トークンあたり8ドルという方式です。ちなみに1ドル150円で換算しています。

つまり同じ「1枚の画像」でも、料金の数え方からしてバラバラなのです。この表は、その違いを実際の生成結果と一緒に見せてくれます。

こんな場面で効いてくる

抽象的な話が続いたので、具体的な使い方を3つ挙げます。

ある通販サイトの担当者は、商品バナーを毎週30枚作っています。文字入れは外注していましたが、コストが重い。文字カテゴリの結果だけを見て、日本語が崩れないモデルを2つに絞り込みました。

個人でブログを運営している人は、サムネイルを月に60枚ほど作ります。品質より枚数と速さが大事です。生成時間の短い順に並べ替えて、上から順に画質を確認していけば、数分で候補が決まります。

社内資料用のイラストを探している総務担当者は、そもそもどのAIを申請すればいいか分かりませんでした。同じ命令に対する39種類の結果を上司に見せれば、それがそのまま比較検討資料になります。

いずれの場合も、共通しているのは「自分の用途に近い課題だけを見ればいい」という点です。全部を眺める必要はありません。

LMArenaやArtificial Analysisと何が違う?

画像AIの比較サービスは、これが初めてではありません。代表的なものと比べてみます。

LMArena(エルエムアリーナ)は、2つの画像を伏せて見せ、どちらが良いかを人間に投票させる方式です。多数決でランキングが決まります。

Artificial Analysis(アーティフィシャル・アナリシス)も同じくアリーナ形式で、Eloスコアという数値を出します。2026年8月時点では、GPT Image 2がEloスコア1,370で首位。1万2,460回のブラインド比較の結果で、2位との差はこのアリーナの歴史上で最大とされています。

これらは「平均的にどのモデルが強いか」を知るのに向いています。ただし、平均点は自分の用途と一致するとは限りません。

OpenRouterのベンチマークは逆の発想です。順位をつけず、生の画像を並べる。自分の目で選ぶ前提になっています。

もう一つ、OpenRouterには実利用ベースのランキングもあります。週あたりのリクエスト数では、GoogleのGemini 3.1 Flash Image(通称Nano Banana 2)が約133万件で首位。2位のGemini 2.5 Flash Imageが約78.9万件、OpenAIのGPT-Image-2が約46.1万件と続きます。

ただしこれは「よく使われている順」であって、品質の順位ではありません。ベンチマーク・アリーナ・利用実績の3つは、それぞれ別のことを測っています。

日本のユーザーと企業にとっての意味

日本から使う場合、いちばん気になるのは日本語の扱いでしょう。

画像生成AIは長いあいだ、日本語の文字を絵の中に入れるのが苦手でした。漢字の画数が多く、少し崩れただけで別の字に見えてしまうからです。

最近は状況が変わりつつあります。Nano Banana 2は漢字やひらがなをほぼ崩さずに描けると言われています。一方でSeedream 4.5は、日本語についてはあと一歩という評価が多いようです。

とはいえ、こうした評価は誰かの主観です。自分の作りたい文字で試すのがいちばん確実です。文字カテゴリの比較表は、その入口として使えます。

企業にとっての意味も小さくありません。生成AIの導入では「なぜそのモデルを選んだのか」を説明できることが求められます。同じ命令に対する39種類の結果は、そのまま根拠資料になります。

コスト面でも効きます。1枚6円のモデルと、その数倍かかるモデルの差は、月に数千枚を作る現場では無視できない金額になります。

なお、このベンチマークは今のところ画像だけが対象です。OpenRouterは今後、動画と音声にも広げる予定だと説明しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 無料で見られますか?

A. 比較結果のページはOpenRouterのサイトで公開されています。表示された画像を眺めるだけなら、料金は発生しません。実際に自分でモデルを動かす場合は、そのモデルの利用料がかかります。

Q. 自分のプロンプトで試すことはできますか?

A. 今回のベンチマークは、OpenRouter側が用意した課題を使った固定の比較表です。自分の命令文で試したい場合は、OpenRouterのAPIや対応アプリから各モデルを呼び出す形になります。

Q. 39種類も見るのは大変では?

A. 価格順や生成時間順に並べ替えられるので、上位数件だけを見れば十分なことが多いです。用途に近いカテゴリを1つ選ぶのがコツです。

Q. スコアが出ないと結局迷いませんか?

A. 迷いやすいのは事実です。ただしOpenRouterは、点数化には人の感じる品質差を捉えきれない限界があると説明しています。アリーナ形式のランキングと併用するのが現実的です。

Q. 日本語のプロンプトでも使えますか?

A. 主要な画像モデルの多くは日本語の命令文を受け付けます。ただし英語のほうが指示の通りが良い場合もあるため、うまくいかないときは英語で書き直すと改善することがあります。

まとめ

  • OpenRouterが2026年8月21日、画像生成AI39種類を同じ命令で比べる「画像ベンチマーク」を公開した
  • 課題は数を数える・文字を書く・「〜がない」を描くなど、AIが苦手な7カテゴリ
  • 結果は価格順と生成時間順に並べ替えでき、1枚約6円のモデルも確認できる
  • 順位はつけず、実物の画像を並べて人間に選ばせる設計になっている
  • LMArenaなどのスコア型ランキングとは役割が異なり、併用するのが実用的
  • 日本語の文字入れを重視するなら、文字カテゴリの比較が特に役立つ

まずは自分が作りたい画像に近いカテゴリを1つ選び、価格順に並べ替えて上位3件を見比べてみてください。

参考文献