xAI、年1兆円の赤字判明|SpaceX上場が暴いた

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • xAIは2025年の1年間で約1兆円(64億ドル)の営業赤字を出していた
  • 非公開だったxAIの財務が、SpaceXの上場申請書類で初めて表に出た
  • 売上は約5,000億円なのに、設備投資は年2兆円ペースで急拡大中
  • OpenAIやAnthropicと比べても「お金の溶かし方」が際立っている
  • 日本でもGrokはXの有料プランで使え、競争の行方が料金に影響する

「赤字が1兆円」と聞いて、それがたった1年分だと言われたら驚きませんか。イーロン・マスク氏のAI企業xAIは、2025年の1年間でそれだけのお金を失っていました。しかもこの事実は、長いあいだ外からは見えませんでした。SpaceXの上場申請という思わぬ形で、AIの裏側にある桁外れのお金の流れが、ついに表に出たのです。

SpaceXの上場申請が、xAIの財務を初めて映し出した

2026年5月20日、宇宙企業のSpaceXがアメリカで上場(IPO=新しく株式を売り出して市場に参加すること)の申請書類を公開しました。

この書類は「目論見書(もくろみしょ)」と呼ばれます。投資家にお金を出してもらうため、会社の中身をすべて書き出した分厚い資料です。

注目を集めたのは、その中にxAIの数字が丸ごと含まれていたことです。xAIは2026年2月にSpaceXと合併していたため、SpaceXの書類に一体化して載りました。

これまでxAIは非公開の会社で、財務を世間に出す義務がありませんでした。だからこそ、これまで隠れていた実態が一気に明るみに出たのです。

数字で見る、xAIの「お金の溶かし方」

では、具体的にどれくらいのお金が動いていたのでしょうか。

2025年のxAIは、売上が約32億ドル(約5,000億円)に対して、約64億ドル(約1兆円)の営業赤字でした。

2024年は売上26億ドル、赤字15.6億ドル(約2,400億円)でした。つまり1年で赤字が4倍以上にふくらんだ計算になります。

稼ぎの中身も見てみます。XとGrokの課金収入が3.65億ドル、データ提供が0.88億ドル、広告が1.16億ドルです。AIブームの主役のわりに、売上はまだ小さいことがわかります。

一方で、設備投資(データセンターなどに使うお金)は別格でした。2025年は127億ドル(約2兆円)。さらに2026年の1〜3月だけで77億ドルを使い、年換算では約4.8兆円ペースに達しています。

燃焼ペースは月10億ドル超、日本円にすると毎月1,500億円以上が出ていく感覚です。家計にたとえれば、収入の倍を毎月使い続けているようなものです。

なぜそこまで投資する?Colossusと「数兆パラメータ」構想

これだけの赤字を出してまで、xAIは何にお金を注いでいるのでしょうか。

中心にあるのは、巨大なデータセンター「Colossus(コロッサス)」と「Colossus II」です。2つ合わせて約1ギガワットという、けた違いの電力を使う計算施設です。

しかも建設が異常に速く、それぞれ122日と91日で稼働させたとされています。普通なら数年かかる規模を、数カ月で立ち上げたわけです。

目的は、AIをさらに賢くすることです。xAIは次世代AIを「数兆パラメータ」級にすると説明しています。パラメータとは、AIの賢さを支える設定値の数のことです。

さらに2028年には、宇宙にAI計算用の衛星を打ち上げる構想まで明かしています。

足りないお金は借金でまかないました。xAIは2025年に160億ドル(約2.5兆円)を新たに借り入れています。2026年3月にはSpaceXが200億ドルのつなぎ融資を受け、xAIの借金を肩代わりしました。AIの借金が、ロケット会社の財務に付け替えられたのです。

競合比較:OpenAI・AnthropicとxAIはどう違う

「AIは赤字が当たり前」とよく言われます。では、ライバルと比べてxAIはどうなのでしょうか。

OpenAI(ChatGPTの会社)は、年商が約240億ドル規模に育っています。それでも今年のキャッシュ燃焼は約170億ドルと巨大で、黒字化は2030年ごろの見通しです。

Anthropic(Claudeの会社)は、年換算の売上が約300億ドルに到達しました。赤字を2026年に売上の3分の1まで、2027年には9%まで縮める計画で、2028年の黒字化を見込んでいます。

この2社と比べると、xAIは売上の規模に対して赤字がとても大きいのが特徴です。下の表で並べてみます。

企業2025年の売上赤字・キャッシュ燃焼の状況
xAI約32億ドル営業赤字 約64億ドル
OpenAI約240億ドル(年換算)今年のキャッシュ燃焼 約170億ドル
Anthropic約300億ドル(年換算)2028年の黒字化を計画

つまりxAIは、売上で先を行く2社を、巨額の投資で一気に追い抜こうとしている段階だと言えます。

専門家の見方は「無謀」か「先回り」か

この財務を、市場のプロはどう見ているのでしょうか。

調査会社PitchBookのアナリスト、ハリソン・ロルフス氏は、はっきりした言葉を使いました。「xAIを普通のソフト企業と比べれば、財務は無謀に見える」というものです。

ただし同氏は、見方に含みも持たせています。「無謀なのは支出そのものではなく、賭けの中身だ」という指摘です。

その賭けとは、こういう読みです。ライバルが大量のGPU(AI計算用の高性能チップ)をそろえる頃には、xAIはすでに次の目標へ進んでいる、というものです。

もしこの賭けが当たれば、月10億ドル超の燃焼も「安い投資だった」と振り返られます。外れれば、ロルフス氏いわく「史上最大級のベンチャー資金の崩壊」になりかねません。

日本のユーザー・企業への影響

この話は、遠いアメリカの大企業の事情に聞こえるかもしれません。でも、日本のあなたにも関係があります。

まず、Grokは日本でも使えます。公式サイトのgrok.comやアプリから、無料登録だけで試せます。

画像生成や詳しい調べもの機能を使いたい場合は、Xの有料プラン「Xプレミアム」(月980円~)に入ると利用できます。すでにXプレミアムに入っている人は、追加料金なしでGrokを活用できます。

ここで考えたいのが、今回の財務との関係です。SpaceXの上場で巨額の資金が集まれば、Grokの開発は加速し、日本語の精度も伸びる可能性があります。

反対に、もし資金繰りが苦しくなれば、無料枠の縮小や値上げが起きるかもしれません。これはxAIに限らず、AI業界全体に共通するリスクです。

企業でAIを選ぶ担当者にとっては、教訓もあります。性能や価格だけでなく、そのAI企業がお金の面で長く続けられるかも、見るべき時代になったということです。

よくある質問(FAQ)

Q. xAIは倒産しそうなのですか?

いいえ、すぐに倒産する状況ではありません。xAIはSpaceXと合併しており、SpaceXの上場で巨額の資金が入る見通しだからです。ただし、赤字が続いている事実は変わりません。

Q. なぜ赤字なのに上場できるのですか?

赤字でも上場はできます。投資家が「将来の成長」に期待してお金を出すからです。SpaceX全体では、衛星通信のStarlinkがしっかり稼いでいる点も支えになっています。

Q. GrokはChatGPTやClaudeより劣るのですか?

一概には言えません。GrokはX(旧Twitter)の投稿をリアルタイムで検索できる点が強みです。用途に合わせて選ぶのがおすすめです。

Q. 「キャッシュを燃やす」とはどういう意味ですか?

稼ぐ額よりも使う額のほうが多く、手元のお金がどんどん減っていく状態を指す言い回しです。スタートアップの世界でよく使われます。

Q. 私が払うGrokの料金は上がりますか?

すぐに上がるとは限りません。ただ、AI業界全体で運営コストがふくらんでいます。長期的には、各社とも値上げや無料枠の縮小が起きる可能性があります。

まとめ

今回わかったことを、最後に整理します。

  • xAIは2025年に売上約32億ドルに対し、約64億ドル(約1兆円)の営業赤字を出していた
  • 非公開だった財務は、SpaceXの上場申請という形で初めて明らかになった
  • 巨大データセンターや「数兆パラメータ」構想に、年2兆円ペースの設備投資を続けている
  • OpenAIやAnthropicと比べても、売上に対する赤字の大きさが際立つ
  • 日本でもGrokは使え、AI各社の体力が今後の料金やサービスに影響する

気になる人は、自分が使っているAIサービスの「運営会社の体力」にも、一度目を向けてみてください。

参考文献

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