孫正義はなぜ東電を欲しがる?AI電力の壁

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 孫正義氏が東京電力ホールディングス(東電HD)の「次のオーナー」に名乗りを上げました
  • 狙いは、電力を増やして日本国内にAIデータセンターを建てることです
  • 東電の資本提携の公募には、ソフトバンクなど数十社が応募しています
  • 孫氏は「データセンターはあるのに、日本には電力がない」と危機感を語りました
  • 背景には、総額約75兆円の巨大プロジェクト「Stargate」があります

「日本はAIで世界に遅れてしまう」。そんな危機感から、孫正義氏が動きました。狙ったのは、なんと電力会社・東京電力です。なぜAIの会社が電力会社を欲しがるのでしょうか。この記事を読めば、その理由と日本のAIが抱える「電力の壁」がよくわかります。

孫正義氏が東電の「次のオーナー」に名乗り

2026年6月24日、ソフトバンクグループ(SBG)の株主総会が開かれました。

そこで会長兼社長の孫正義氏が、こう発言しました。

「われわれの子会社のソフトバンクが、東京電力の次のオーナーになるために手を挙げた」

ソフトバンクとは、みなさんがよく知る通信会社のことです。そのソフトバンクが、東京電力ホールディングスへの出資を目指しているというのです。

孫氏によると、現在は「何社かの候補の中で、重要な候補として残っている」状態だそうです。つまり、まだ決定ではありませんが、有力候補の1つというわけです。

なぜAIの会社が電力会社を欲しがるのか

ここで多くの人が「?」と思うはずです。AIと電力会社が、どう関係するのでしょうか。

カギは「AIデータセンター」です。データセンターとは、AIを動かすための巨大なコンピューター倉庫のことです。

このデータセンターは、とにかく大量の電気を使います。街ひとつ分の電力を消費する施設もあるほどです。

孫氏は株主総会で、はっきりと理由を語りました。

「データセンターがないと日本はAI開発で完全に遅れてしまう。でも電力がない。規制ががんじがらめだ」

つまり、AIを動かすデータセンターを日本に建てたい。でも、それを動かす電力が足りない。だから電力会社そのものを手に入れて、電気を確保しようという作戦です。

孫氏は「もし東京電力がわれわれのグループに入れば、電力を増やしてAIデータセンターを日本に持ってくる」と述べました。

電気代はコストの「7%」だけ?意外な数字

面白いデータも出てきました。

孫氏によると、AIデータセンターの運営コストのうち、電気代が占める割合は全体の7%ほどだそうです。

「思ったより少ない」と感じませんか。残りの大部分は、半導体チップ(AIの頭脳になる部品)などの費用が占めています。

ではなぜ、7%の電気代のために電力会社を買おうとするのでしょうか。

答えはシンプルです。電気代が安いかどうかではなく、「電気がそもそも手に入るかどうか」が問題だからです。お金を払っても電力が確保できなければ、データセンターは1台も動きません。

東電の争奪戦には数十社が殺到

実は、東京電力の資本提携先を決める公募には、たくさんの会社が応募しています。

名乗りを上げたとされる企業には、次のような顔ぶれがあります。

  • ソフトバンクグループ
  • 東京ガス
  • 米ブラックストーン・グループ(巨大投資ファンド)
  • 米KKR(巨大投資ファンド)
  • 米ベインキャピタル(巨大投資ファンド)
  • 日本産業パートナーズ、産業革新投資機構 など

数十社が応募し、有力候補は5陣営ほどに絞られているといわれています。

なぜこれほど人気なのでしょうか。それは、脱炭素やAIで電力の需要が今後ますます増えると、多くの企業が読んでいるからです。電力は「これからの成長分野」とみなされているのです。

背景にある巨大プロジェクト「Stargate」

孫氏の東電出資は、突然出てきた話ではありません。その裏には、世界規模の壮大な計画があります。

それが「Stargate(スターゲート)」プロジェクトです。

これは、ソフトバンクグループ・OpenAI(ChatGPTを作った会社)・Oracle(オラクル)などが組んで進める、AIデータセンターの建設計画です。

その規模は、想像を超えています。

  • 総投資額: 最大5000億ドル(約75兆円)
  • 電力容量: 10ギガワット級(原発10基ほどに相当)
  • 建設地: 米テキサス州アビリーン、オハイオ州ローズタウンなど

このプロジェクトでは、ソフトバンクグループが「お金の責任」、OpenAIが「運営の責任」を担当しています。半導体のArm(アーム)やNVIDIA(エヌビディア)も参加しています。

つまり孫氏は、アメリカで巨大なAIインフラを作りながら、同じことを日本でもやろうとしているのです。そのための電力源が、東京電力というわけです。

日本のユーザーや企業にどう関係する?

「大企業の話でしょ」と思うかもしれません。でも、これは私たちの生活にも関わる話です。

今、日本では生成AIを使うサービスが急増しています。しかし、その多くは海外のデータセンターを借りて動いています。

もし日本国内に大規模なAIデータセンターができれば、次のようなメリットが期待できます。

1つ目は、通信の速さです。データが海外を往復しないぶん、AIの反応が速くなる可能性があります。

2つ目は、データの安心感です。企業の機密情報や個人情報を、日本国内で管理しやすくなります。

3つ目は、産業の競争力です。AIの「土台」を国内に持つことは、日本企業がAI開発で戦ううえで大きな武器になります。

一方で、心配な点もあります。電力会社が特定の企業の傘下に入ることに対して、「公共インフラとして大丈夫なのか」という議論も出てくるでしょう。私たちの電気料金にどう影響するかも、注目すべきポイントです。

よくある質問(FAQ)

Q1. ソフトバンクは本当に東京電力を買うのですか?

まだ決定ではありません。東京電力の資本提携先を決める公募に「有力候補の1社」として残っている段階です。今後の選考しだいです。

Q2. なぜAI企業が電力会社を欲しがるのですか?

AIを動かすデータセンターが大量の電気を必要とするからです。電気そのものを確保しないと、日本にデータセンターを建てられないと孫氏は考えています。

Q3. 電気代はAIコストの7%だけなのに、なぜ電力が重要なのですか?

値段ではなく「量」の問題だからです。お金を払っても十分な電力が手に入らなければ、データセンターは動きません。安定した電力の確保が最優先なのです。

Q4. 「Stargate」とは何ですか?

ソフトバンクグループやOpenAIなどが進める、総額約75兆円のAIデータセンター建設計画です。アメリカを中心に、巨大な施設の建設が進んでいます。

Q5. 私たちの生活に影響はありますか?

国内にAIデータセンターができれば、AIサービスが速く・安心して使えるようになる可能性があります。ただし電気料金への影響など、注意すべき点もあります。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • 孫正義氏が、子会社ソフトバンクを通じて東京電力HDの「次のオーナー」に名乗りを上げた
  • 狙いは、電力を確保して日本国内にAIデータセンターを建てること
  • 「データセンターはあるのに電力がない」という、日本のAIの弱点が背景にある
  • 東電の公募には数十社が殺到し、電力は「成長分野」とみなされている
  • 裏には約75兆円の巨大プロジェクト「Stargate」がある

AIの進化は、もはや「電力をどう確保するか」という勝負に入っています。日本のAIの未来を左右するこの動き、今後の選考結果に注目しておきましょう。

参考文献

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