- 楽天がAIエージェント運用でコストと遅延を30%以上、初期の重大エラーを97%も減らしたこと
- 大型リリースが「四半期に1回」から「2週間に1回」へと一気に速まった理由
- AIに単発の質問をするだけの企業が、なぜこれから大きく差をつけられるのか
- 楽天が掲げる「Galileo(ガリレオ)」という新しい働き方の考え方
- Microsoft・Salesforce・Googleとの違いと、日本企業がいま準備すべきこと
あなたの会社では、AIをどう使っていますか。「分からないことをチャットで聞くだけ」という使い方が多いのではないでしょうか。実は、その使い方のままだと、これから大きく差をつけられるかもしれません。楽天はAIエージェントを業務の中心に置き、コストも失敗も大きく減らしました。この記事では、その勝ち筋をやさしく解説します。
楽天が出した「3つの数字」がすごい
まず、楽天がたたき出した成果から見ていきます。AIの専門企業Anthropic(アンソロピック/Claudeを作る会社)が公開した事例で明らかになりました。
コストと遅延(処理にかかる待ち時間)が、どちらも30%以上も下がりました。しかも、出てくる結果の品質は落ちていません。
導入したての頃に出ていた重大なミスは、97%も減りました。ほぼゼロに近づいたということです。
さらに驚くのが開発スピードです。これまで大型のアップデートは「3カ月に1回」のペースでした。それが「2週間に1回」まで速くなったのです。
つまり、安く・速く・正確に、そして頻繁に。AIエージェントを正しく使うと、ここまで変わるという証拠です。
AIエージェントって、普通のAIと何が違う?
そもそも「AIエージェント」とは何でしょうか。ChatGPTのようなチャットAIとの違いを押さえておきましょう。
チャットAIは、質問に1回答えて終わりです。「この英語を訳して」と頼めば、訳して終了します。これが単発質問の使い方です。
一方でAIエージェントは、ゴールだけを伝えると、自分で手順を考えて何時間も働き続けます。「この問題を解決して」と言えば、必要な作業を分解し、順番に実行してくれます。
楽天では、人がAIに「細かい作業」を頼むのをやめました。代わりに「目標と成果」を任せる形に変えたのです。AIは夜の間も自動で作業を進めてくれます。
「単発質問の企業」はなぜ大敗するのか
Anthropicのガイド「Building AI agents for the enterprise(企業のためのAIエージェント構築)」は、はっきりと指摘しています。
AIをチャットボットとして使い、単発の質問に答えさせているだけの企業。そして、複雑なタスクを推論し、何段階もの業務をこなすエージェント型AIを仕事の根幹に据えた企業。この2つの間には、すでに大きな差がついているというのです。
なぜでしょうか。カギは「知識がたまるかどうか」です。
単発質問では、毎回ゼロからのやり取りです。前回の学びは残りません。ところがエージェント型は、会社のやり方や過去の失敗を覚えて、同じミスを繰り返さなくなります。使うほど賢くなり、差は雪だるま式に広がっていきます。
楽天の「Galileo(ガリレオ)」という考え方
楽天は、優秀な社員を「Galileo(ガリレオ)」と呼んでいます。一人で何でもこなせる万能な人材、というイメージです。
AIエージェントを使うと、普通の社員もこのGalileoのように働けると楽天は考えています。自分の専門分野を超えて、いろいろな仕事ができるようになるからです。
実例を見てみましょう。楽天のあるプロダクトマネジャーは、本来エンジニアでなければ難しかった作業を一人でこなすようになりました。
具体的には、クラウドの費用を管理する「FinOpsパイプライン」を自分で構築。複数のダッシュボードを管理し、製品の異常もひとりで追えるようになったのです。今までならエンジニアの応援が必要だった仕事です。
エージェントが自動で働く流れを見てみよう
では、楽天のAIエージェントは実際にどう動いているのでしょうか。ある製品改善の流れを追ってみます。
まず、ユーザーからの意見をAIが集めます。次に、その内容から自動でチケット(作業の依頼書)を作成。重要度を判断して仕分けします。
さらに、製品の仕様書や試作品まで作り、改善案を素早く回していきます。人が寝ている夜の間に、処理が進んでいるのです。
これらのエージェントは、SlackやMicrosoft Teamsといったツールとつながっています。スマホからの音声でも作業を頼めます。「あれやっておいて」と話しかける感覚に近いですね。
しかも、各エージェントはたった1週間で本番に投入できたといいます。導入のハードルが思ったより低いことも分かります。
Microsoft・Salesforce・Googleとどう違う?
企業向けのAIエージェント市場は、いま激しい競争が起きています。主要なライバルを整理しておきましょう。
- Microsoft Copilot(コパイロット):WordやTeamsなど普段のオフィスソフトと相性が良いです。非エンジニアでも始めやすいのが強みです。
- Salesforce Agentforce(エージェントフォース):顧客管理(CRM)が得意です。営業やサポート業務の自動化に向いています。
- Google Gemini Enterprise(ジェミニ):エージェント同士をつなぐ標準ルールを採用。複数のAIを連携させやすい設計です。
楽天が選んだのは、AnthropicのClaude(クロード)を土台にした仕組みです。実は、Microsoftも自社のエージェント基盤にClaudeを採用しており、Claudeの実力が業界で評価されている表れと言えます。
調査会社ガートナーは、2028年までに企業向けソフトの33%がAIエージェント機能を標準で持つと予測しています。もはや一部の先進企業だけの話ではありません。
日本市場と私たちの仕事への影響
この動きは、日本で働く私たちにどう関係するのでしょうか。
楽天は日本を代表する大企業です。その楽天が「AI-nization(AI化)」という全社戦略を掲げ、成果を出しました。日本企業でもエージェント型AIが通用する、という心強い実例になります。
一方で、注意も必要です。AIにすべてを任せるわけではありません。最後の判断は人が行うことが前提です。AIが下準備をして、人が決める。この役割分担が大切になります。
個人にとっても無関係ではありません。これからは「AIに細かく指示する力」より、「AIにゴールを任せて使いこなす力」が問われそうです。早めに慣れておくと、あなた自身の市場価値も上がるはずです。
よくある質問(FAQ)
Q1. AIエージェントを入れると、仕事がなくなりますか?
すぐに人がいらなくなるわけではありません。楽天でも、最後の判断は人が担っています。むしろ、面倒な作業をAIに任せ、人はより重要な仕事に集中できるようになります。
Q2. 中小企業でも導入できますか?
可能です。楽天の事例ではエージェントを1週間で構築しています。ノーコード(プログラミング不要)で使えるツールも増えており、規模が小さくても始めやすくなっています。
Q3. 「コスト30%減」はどの会社でも実現できますか?
必ず同じ結果になるとは限りません。これは楽天の事例の数字です。ただし、単発質問から業務を任せる使い方に変えることで、効率が上がる傾向は多くの企業で期待できます。
Q4. どのサービスから試せばいいですか?
すでに使っているツールに合わせるのが近道です。Microsoft環境ならCopilot、Salesforce環境ならAgentforceが自然につながります。まずは小さな業務から試すのがおすすめです。
まとめ
楽天の事例から分かったポイントを振り返ります。
- 楽天はAIエージェントでコストと遅延を30%以上、重大エラーを97%削減した
- 大型リリースは四半期に1回から2週間に1回へと大幅に高速化した
- AIに単発質問するだけの企業は、知識がたまる企業に差をつけられる
- 「ゴールを任せる」使い方が、普通の社員を万能なGalileoに変える
- Microsoft・Salesforce・Googleも参入し、競争は本格化している
まずは身近な業務を1つ、AIエージェントに「丸ごと任せて」みることから始めてみましょう。

