PixVerse659億円調達|アリババの狙いとは

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • AI動画サービス「PixVerse(ピックスバース)」が659億円もの巨額資金を集めました。
  • 会社の価値は3000億円を超え、たった3年で急成長しています。
  • 出資を主導したのは、中国の巨大IT企業アリババです。
  • アリババは自分でもAI動画を作っており、「敵に投資する」形になっています。
  • ライバルのSora(ソラ)は撤退。日本のクリエイターにも関係する話です。

スマホで文章を打つだけで、数十秒の動画ができる。そんなAIサービスに、いま世界中のお金が集まっています。その代表格が「PixVerse」です。659億円という巨額調達の裏には、アリババの意外な思惑がありました。この記事を読めば、AI動画競争のいまがまるごとわかります。

PixVerseとは?659億円を集めたAI動画サービス

PixVerse(ピックスバース)は、AIで動画を作るサービスです。

文章や写真を入れると、AIが自動で動画に仕上げてくれます。

運営するのはシンガポールに本社を置く「AIsphere(アイスフィア)」という会社です。中国名は「爱诗科技」といいます。

創業は2023年4月。まだ3年ほどしか経っていません。

作ったのは、王長虎(ワン・チャンフー)さんです。もとは中国の大手IT企業バイトダンス(TikTokの会社)で、画像認識AIを率いていた技術者です。

社員はわずか150人ほど。それでも登録ユーザーは1億5000万人を超え、毎月1500万人以上が使っています。少人数で世界規模のサービスを回している、いまどきのAI企業らしい姿です。

今回の資金調達で決まったこと

2026年7月、PixVerseは大きな発表をしました。

シリーズC(成長期の大型出資)で合計4億3900万ドル、日本円で約659億円を集めたという内容です。

もともと2026年3月に約300億円を集めていました。今回はそこに追加(エクステンション)で上乗せされた形です。

この出資で、会社全体の価値(評価額)は20億ドル(約3000億円)を突破しました。

お金を出したのは、アリババのほかにも8社の新しい投資家です。ミラエアセットなど、アジアの有力ファンドが名を連ねました。

集めたお金は、次世代モデルの開発と、世界中への展開に使われる予定です。

なぜアリババが出資?「二枚舌」に見える戦略

今回いちばん注目されたのが、出資を主導したアリババの動きです。

アリババは中国最大級のIT企業。ネット通販からクラウド、AIまで幅広く手がけています。

実は、アリババは自分でもAI動画モデル「Wan(ワン)」を作っています。つまり、PixVerseはライバルでもあるのです。

ライバルにお金を出す。一見おかしな話に思えませんか。

これは「敵に投資して、自社サービスにも取り込む」という賢い戦略です。PixVerseはアリババのクラウド上でAIを動かす契約も結んでいます。

アリババから見れば、勝ってもいいし負けてもいい。どちらに転んでも自分に利益が返ってくる仕組みを作っているのです。

ライバルと比べてどう違う?主要AI動画サービス比較

AI動画の世界は、いま群雄割拠です。主なサービスを比べてみましょう。

  • PixVerse:初心者向け。テンプレが豊富で「動画版のCanva」と呼ばれます。画像から動画への変換品質は世界トップ評価です。
  • Kling(クリング):中国・快手(クアイショウ)が開発。最長3分の長い動画に強いのが特徴です。
  • Runway(ランウェイ):映画のようなカメラワークが得意。プロ向けで操作はやや難しめです。
  • Veo(ヴェオ):グーグルが開発。検索や他サービスとの連携が強みです。

注目は、王者だったはずのOpenAIの「Sora(ソラ)」が撤退したことです。

Soraアプリは2026年4月に閉鎖されました。トップ企業ですら、この競争から降りたのです。

それだけ、AI動画は開発費がかさむ厳しい戦いだといえます。だからこそ659億円という「弾薬」を持つPixVerseが有利なのです。

「ワールドモデル」で何が変わる?

PixVerseがいま力を入れているのが「ワールドモデル」です。

ワールドモデルとは、AIがその場でリアルタイムに映像世界を作り、操作に反応する技術のことです。

ふつうのAI動画は、完成した映像を最後まで待つ必要があります。

一方ワールドモデルは、ゲームのようにユーザーの動きにその場で反応します。

PixVerseは2026年1月に「R1」という世界初のリアルタイム・ワールドモデルを公開しました。

これはゲーム開発への応用が期待されています。動画作りが、そのまま「遊べる世界」作りに変わろうとしているのです。

日本のユーザー・企業にどう関係する?

「海外の話でしょ」と思ったかもしれません。でも、日本にも深く関わります。

まず、PixVerseは日本からも使えます。日本語の画面にも対応しており、SNS用のショート動画作りに人気です。

たとえば、ある個人経営のカフェを想像してみてください。プロに頼まなくても、店の写真からAIで宣伝動画を作り、その日のうちにSNSへ投稿できます。

中小企業の広報担当者にとっても心強い味方です。数万円の制作費と数日の時間が、数百円と数分に縮まります。

料金は画像から動画への変換で1分あたり約720円(4.8ドル)ほど。プロの制作費に比べれば格安です。

一方で注意点もあります。AI動画は著作権や商用利用のルールがまだ整っていません。仕事で使うときは、必ず利用規約を確認しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. PixVerseは無料で使えますか?
無料でお試しできる枠があります。ただし高画質や長い動画、商用利用には有料プランが必要です。

Q. 日本語で使えますか?
はい。日本語の画面に対応しており、日本からでも問題なく利用できます。

Q. なぜアリババはライバルに出資したのですか?
自社のクラウドやサービスに取り込みつつ、成長する市場から利益を得るためです。勝っても負けても得をする狙いがあります。

Q. SoraがなくなったらAI動画は下火になりますか?
いいえ。Soraの撤退はOpenAI側の事情で、市場そのものは伸び続けると見られています。

Q. 作った動画は仕事に使ってもいいですか?
有料プランなら商用利用できる場合が多いです。ただし規約は変わることがあるので、使う前の確認が大切です。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • AI動画サービスPixVerseが約659億円を調達し、評価額は3000億円超になりました。
  • 創業わずか3年、社員150人で1億5000万人が使う急成長企業です。
  • 出資を主導したアリババは、自社でもAI動画を持つ「ライバルへの投資」でした。
  • 王者Soraは撤退し、資金力のあるPixVerseの立場が強まっています。
  • 日本からも使え、個人や中小企業の動画作りを大きく変える可能性があります。

まずは無料枠で、あなたの写真から短い動画を1本作ってみてはいかがでしょうか。

参考文献

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