- 国産AI企業「Noetra(ノエトラ)」が産総研と組み、マルチモーダル基盤モデルの開発を6月30日に発表しました
- ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーグループなどが出資し、最終的に44社連合へと広がります
- 目標は国内最大級の「1兆パラメータ」。政府は5年間で約1兆円を支援します
- ロボットや工場を動かす「フィジカルAI」と、物理空間を理解する「世界基盤モデル」を目指します
- 学習済みモデルは国内に順次公開予定で、日本語に強いAIの土台になります
「日本のAIって、結局アメリカや中国に勝てないのでは?」と思ったことはありませんか?
その流れを変えようとする大型プロジェクトが、2026年6月30日に動き出しました。国産AI企業Noetra(ノエトラ)の始動です。この記事を読むと、何が新しくて、私たちの暮らしや仕事にどう関わるのかがわかります。
Noetra(ノエトラ)とは?まず3つのポイント
Noetraは、日本の大手企業が共同で出資したAI開発の会社です。
もともとは「株式会社 日本AI基盤モデル開発」という名前でした。2026年4月に設立され、6月に「Noetra」へ社名を変更して本格始動しました。
つかみとして、まず3つだけ覚えてください。
- 誰が:ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーグループなどが出資
- 何を:日本語に強い「基盤モデル(いろんなAIの土台になる大きなAI)」を開発
- 誰と:産総研(産業技術総合研究所)という国の研究機関と協力
代表をつとめるのは丹波廣寅(たんば・ひろとよ)氏です。ソフトバンク傘下でAIを研究してきたSB Intuitionsの前代表で、日本語AIの第一線にいた人物です。
6月30日に何が発表された?
今回のニュースの中心は、経済産業省が6月30日に明らかにした発表です。
ポイントは、Noetraが産総研と協力して「マルチモーダル基盤モデル」を開発するという点です。
マルチモーダルとは、テキスト(文章)・画像・音声など、複数の種類のデータをまとめて扱えるAIのことです。文字だけでなく、目や耳も持ったAIだとイメージするとわかりやすいです。
役割分担もはっきりしています。
- Noetra:AIモデルそのものを開発し、世の中に提供する
- 産総研:理論やアーキテクチャ(AIの設計の仕組み)を研究する
事業の期間は2026〜30年度の5年間です。開発したAIの「学習済みの重み(AIの知識のかたまり)」や研究知見は、期間中に国内へ順次公開される予定です。つまり、ほかの企業や研究者も使える土台になります。
「フィジカルAI」「世界基盤モデル」をやさしく解説
Noetraが目指すゴールには、聞き慣れない言葉が出てきます。ここを押さえると一気に理解が進みます。
フィジカルAIとは?
フィジカルAIは、ロボットや工場の機械など、現実世界のモノを動かすAIのことです。
ChatGPTのように文章で答えるAIは、画面の中で完結します。これに対してフィジカルAIは、腕を動かしたり、設備を制御したりと、体を持って働くイメージです。
日本は製造業に強く、工場には貴重な現場データがたくさんあります。その強みをAIに生かそうという狙いです。
世界基盤モデルとは?
Noetraは、物理空間を認識できる「世界基盤モデル」も目指しています。
これは、ものの位置や動き、重さといった「現実のルール」をAIが理解するための土台です。たとえばロボットが「この箱を落とさずに棚へ置く」と判断するには、こうした感覚が欠かせません。
文章を書くAIから、現実で手を動かすAIへ。Noetraはその橋渡しを狙っています。
44社連合と1兆円規模の国家プロジェクト
このプロジェクトは、数社だけの話では終わりません。
報道によると、製造業と非製造業をあわせて44社が連合を組みます。製造業からは日立製作所や東芝など28社、非製造業からは楽天グループなど16社が名を連ねます。
規模の大きさも見どころです。
- パラメータ数:国内最大級の「1兆」を目標(パラメータはAIの賢さの目安)
- これまでの国産:最大でも7000億程度にとどまっていた
- 政府の支援:5年間で約1兆円規模を計画
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募した開発事業では、2026年度の提案1件あたり最大3,800億円台という大型予算が示されました。国をあげての本気度がうかがえます。
他の国産AIと何が違う?
「国産AIならELYZAやPLaMoもあるのでは?」と思った方もいるはずです。整理してみましょう。
- ELYZA:海外製のLlamaを日本語データで追加学習。日本語タスクに強い
- PFNのPLaMo:ゼロから作る純国産。国内データセンターで運用しデータ主権を重視
- NTT tsuzumi:軽量で省エネを売りにした日本語特化モデル
- Noetra:1兆パラメータ級+フィジカルAIという、規模と用途の両面で最大級
大きな違いは2つです。1つは規模が桁違いであること。もう1つは、文章だけでなくロボットや工場まで視野に入れていることです。
多くの企業が同じ船に乗り、国の予算も入る「オールジャパン」体制も特徴です。バラバラに開発するより、データも人材も集めやすくなります。
日本のユーザー・企業にどう関係する?
「大企業の話で、自分には関係ない」と感じるかもしれません。でも、影響は意外と身近です。
身近な3つの場面を想像してみてください。
まず、地方の中小工場で働く人。人手不足が深刻でも、現場データで鍛えたフィジカルAIがロボットを賢く動かせば、少ない人数でもラインを回しやすくなります。
次に、役所や病院など機密情報を扱う現場。海外のAIにデータを預けるのが不安でも、国内で完結する基盤モデルなら情報を国外に出さずに使える安心感があります。
そして、AIを使う私たち自身。学習済みモデルが国内公開されれば、日本語に強いAIサービスが増え、回答の自然さや精度の向上が期待できます。
背景には「ソブリンAI(自国でAIを開発・運用する力)」という考え方があります。海外サービスに頼りきりだと、ルール変更や利用停止のリスクを受けやすい。だからこそ、自前の土台を持つ意味が大きいのです。
よくある質問(FAQ)
Q. Noetraはいつから使えますか?
2026〜30年度の事業期間中に、学習済みモデルや研究知見を国内へ順次公開する予定です。一般向けサービスの形や時期はこれから明らかになります。
Q. ChatGPTやGeminiの代わりになりますか?
同じ文章生成の用途でも、Noetraは日本語理解とフィジカルAIに重点があります。当面は競合というより、用途で使い分ける関係になりそうです。
Q. 「1兆パラメータ」はすごいのですか?
パラメータはAIの賢さの目安の1つです。国内ではこれまで最大7000億程度だったため、1兆は国産として大きな挑戦といえます。ただし数が多いほど良いとは限らず、学習の質も重要です。
Q. 個人でも開発に関われますか?
直接の出資は大手企業が中心ですが、モデルや知見が公開されれば、研究者や開発者が活用したり応用サービスを作ったりできる余地が広がります。
まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- 国産AI企業Noetraが、産総研と組みマルチモーダル基盤モデル開発を6月30日に発表
- 出資はソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーなどで、最終的に44社連合へ
- 目標は国内最大級の1兆パラメータ。政府は5年で約1兆円を支援
- ロボットや工場を動かすフィジカルAIと世界基盤モデルを狙う
- 学習済みモデルは国内公開予定で、日本語に強いAIの土台になる
まずは、これから登場する「日本語に強い国産AIサービス」のニュースに注目してみましょう。

