MSの新AIが脆弱性を格安で自動修正|Mythos対抗

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • Microsoftが新しいAIセキュリティツール「Project Perception」を準備中です
  • 自社・OpenAI・Anthropicのモデルを使い分ける「モデルルーター」方式が特徴です
  • 最大の武器はコスト。話題のAnthropic「Mythos」より大幅に安く使えると言われています
  • すでにWindows 11のパッチ作業に関わっている可能性が指摘されています
  • 日本の企業にとっても、セキュリティ対策の費用を下げる新しい選択肢になりそうです

「AIがソフトの弱点を自動で見つけて、勝手に直してくれる」。そんな時代がすぐそこまで来ています。今回はMicrosoftが2026年7月に準備を進める新ツール「Project Perception(プロジェクト・パーセプション)」を、やさしく解説します。ライバルのAnthropic「Mythos」との違いや、日本の私たちへの影響までまとめました。

Project Perceptionとは?Microsoftの新しいAIセキュリティ

Project Perceptionは、Microsoftが開発している新しいセキュリティ製品です。

やっていることはシンプルです。ソフトウェアの「脆弱性(ぜいじゃくせい:攻撃者に狙われる弱点や欠陥)」をAIが自動で見つけて、修正案まで出してくれます。

これまで脆弱性さがしは、専門のエンジニアが手作業でコードを1行ずつ読む地道な仕事でした。人手も時間もかかります。

そこをAIに任せてしまおう、というのがこのツールの狙いです。

報道によると、提供開始は「今月中(2026年7月)にも」とされています。Microsoftのセキュリティ部門は、2026年2月にトップへ就任したHayete Gallot氏が主導していると伝えられています。

仕組みのカギは「モデルルーター」

Project Perceptionの一番の特徴が、この「モデルルーター」という考え方です。

普通のAIツールは、1つのAIモデルだけを使います。でもProject Perceptionは違います。

Microsoft・OpenAI・Anthropicという3社のAIモデルを、場面ごとに使い分けます。

モデルルーターは、いわば優秀な配車係のようなものです。仕事の中身を見て、一番得意なAIに担当を割り振ります。

たとえば、こんな役割分担が想定されています。

  • ソースコードの読み込みが得意なAI → コードの精査を担当
  • おかしな動きを見抜くのが得意なAI → 異常検知を担当
  • 直し方の提案が得意なAI → 修正案づくりを担当

1社のAIにすべてを任せるより、それぞれの得意分野を組み合わせたほうが、精度も効率も上がるという発想です。

最大の武器は「低コスト」

Project Perceptionが勝負を挑む相手が、AnthropicのAIセキュリティ「Mythos(ミトス)」です。

Mythosは2026年4月に登場し、業界に衝撃を与えました。OpenBSDに27年間も潜んでいたバグを見つけたり、主要ソフトから1万件を超える深刻な脆弱性を発見したりと、実力は本物です。

ただし、Mythosには大きな弱点があります。とにかく費用が高いのです。

Mythosの利用料金は、100万トークンあたり入力25ドル・出力125ドルとされています。実際にソフトを調べると、あっという間に費用がふくらみます。

  • 動画ソフト「FFmpeg」の調査 → 数百回の実行で約1万ドル(約150万円)
  • 「OpenBSD」の調査 → 1,000回の実行で2万ドル弱(約300万円弱)

報道では、MythosのAPI費用は「Opusより100%高く、GPTより82%高い」とも言われています。かんたんに言えば、他のAIの倍近い値段ということです。

Project Perceptionは、ここを突きます。同じような脆弱性さがしを、Mythosよりずっと安く実現することを最大の売りにしているのです。

すでにWindows 11で動いている?

実はこのツール、もう水面下で働いているかもしれません。

Microsoftは毎月「パッチ火曜日(Patch Tuesday)」に、Windowsの不具合をまとめて修正しています。

最近のパッチ火曜日では、約570件もの脆弱性がAIによって発見・修正されたと報じられました。

このとき使われたAIを、Microsoftは社内で「MDASH」と呼んでいるとされます。そしてこのMDASHが、Project Perceptionと関係している可能性が指摘されています。

もし本当なら、私たちが毎月受け取るWindowsアップデートの安全性が、AIによって静かに底上げされていることになります。

競合サービスとの比較

2026年は「AIで脆弱性をさがす」競争が一気に加速した年です。主なプレイヤーを整理します。

  • Anthropic「Mythos」:発見能力は最強クラス。ただし費用が非常に高い。27年前のバグや1万件超の欠陥を発見。
  • Google「Big Sleep」:DeepMindとProject Zeroが開発。実際に悪用直前のゼロデイ(未知の脆弱性)を発見した実績あり。
  • XBOW:自律型AIが脆弱性報告サイトHackerOneで世界1位に。2026年3月に1.2億ドル(約180億円)を調達。
  • Microsoft「Project Perception」:複数モデルの使い分けと低コストが武器。今回の主役。

発見力ではMythosが先行しています。それに対しMicrosoftは「安さ」と「使いやすさ」で追いかける構図です。

ちなみにAnthropicは「Project Glasswing」という取り組みも進めており、Apple・Microsoft・Google・Amazonなど約50社が参加しています。ライバル同士が協力する場面もある、複雑な業界模様になっています。

日本の企業・ユーザーへの影響

「海外のセキュリティ製品の話でしょ?」と思ったかもしれません。でも、日本にも深く関わってきます。

日本の多くの企業は、WindowsやAzure、Microsoft 365を業務の土台に使っています。Project Perceptionの成果は、こうした製品の安全性向上に直結します。

ある地方の中小企業のシステム担当者を想像してみてください。セキュリティ専門の社員はいません。1人で何十台ものパソコンとサーバーを守っています。

これまで脆弱性対策は、高価な外部サービスに頼るか、手が回らず放置するかの二択でした。もしMicrosoftが安価なAIセキュリティを標準機能として組み込めば、予算の少ない会社でも本格的な対策が手に届くようになります。

日本では2026年に入り、AIエージェントのセキュリティ事故も相次いで話題になりました。守る側のAIが安く強くなることは、こうした不安への大きな備えになります。

よくある質問(FAQ)

Q1. Project Perceptionはもう使えますか?

A. まだ正式発表前です。報道では2026年7月中にも登場するとされていますが、Microsoftからの公式な詳細発表を待つ段階です。

Q2. なぜMythosより安くできるのですか?

A. 高価なAIをすべての作業に使うのではなく、モデルルーターで安いAIと高いAIを使い分けるからです。得意な仕事だけを高性能AIに任せることで、無駄な費用をおさえます。

Q3. AIが勝手に修正して、逆に不具合が出ませんか?

A. 現時点では、AIが修正案を出し、最終的に人が確認する運用が一般的です。完全な自動修正には、人によるチェックが引き続き重要と言われています。

Q4. 個人ユーザーにも関係ありますか?

A. あります。Windowsの毎月のアップデートがより安全になれば、特別な操作をしなくても、私たちのパソコンの安全性が高まります。

Q5. MythosとProject Perceptionはどちらが優れていますか?

A. 目的しだいです。発見力を最優先ならMythos、費用対効果を重視するならProject Perceptionが有力です。今後の実力次第で評価は変わります。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • Microsoftが新AIセキュリティ「Project Perception」を準備中。2026年7月中にも登場の可能性
  • 自社・OpenAI・Anthropicのモデルを使い分ける「モデルルーター」方式が特徴
  • 最大の武器は低コスト。高性能だが高額なAnthropic「Mythos」に対抗する
  • すでにWindows 11のパッチ(約570件修正)に関わっている可能性も
  • 日本企業のセキュリティ対策の費用を下げる、新しい選択肢になりそう

まずはご自身のWindowsやアプリを最新の状態に保ち、こうしたAIセキュリティの進化に注目していきましょう。

参考文献

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