- Perplexityの回答に付いた引用7534件を調べたところ、59.8%がアクセス上位10万サイトの圏外だった
- わずか3つのサイトが「おすすめソフト」ページを合計21万5128件も量産していた
- Wikipediaの引用は7534件中たった3件、redditは261件で全体2位という逆転が起きている
- 3サイトは同じテンプレート・同じネームサーバーで、人間ではなくAIに読ませる前提で作られていた
- ChatGPT・Gemini・Perplexityで引用の癖は大きく違い、日本の企業も無関係ではいられない
AIに「おすすめのツールを教えて」と聞いて、返ってきた答えをそのまま信じたことはありませんか。
その答えの根拠になっている引用元を、7534件まとめて調べた報告が公開されました。中身は、多くの人の想像とかなり違います。
760回質問して、7534件の引用を集めた調査
調査をしたのはTrellner Researchという調査チームです。2026年9月2日にレポートを公開し、9月3日にGIGAZINEが報じました。
方法はシンプルです。Perplexityの検索特化モデル「Sonar」と「Sonar Pro」に、380種類のソフトウェアカテゴリーについて質問しました。
各モデルに1カテゴリー1回ずつ、合計760回の問い合わせを実施。集まったのは3800件の「おすすめ枠」、1807種類の製品、そして7534件の引用URLでした。
引用元のドメイン(サイトのアドレス)は2055種類。この2055サイトが、いまAIの「おすすめ」を支えている土台ということになります。
ちなみにこのチームは、分析用のスクリプトとデータ一式をCC BY 4.0(出典を書けば自由に使えるライセンス)で公開しています。誰でも再検証できる形になっているのが、この調査の強みです。
引用の59.8%は「上位10万サイト」の外側だった
いちばん驚く数字がこれです。
引用元をTranco(世界のサイトのアクセス規模ランキング)と照らし合わせると、59.8%が上位10万位より下でした。さらに23.4%は上位100万位にも入っていません。
引用されたサイトのTranco順位の中央値は71,611位。つまり「聞いたことがある大手サイト」ではなく、名前も知らないサイトが答えの土台になっているわけです。
引用は特定サイトに集中していない
「じゃあ一部の巨大サイトが独占しているのでは」と思うかもしれません。しかし引用数トップ10のドメインを足しても、全体のわずか17.3%にとどまりました。
個別に見ると、1位はレビューサイトのg2.comで291件。2位はreddit.comの261件です。
3位は製品デモ作成サービスのguideflow.comで194件。4位が調査会社のgartner.comで158件でした。
大手調査会社より、デモ作成ツールの自社サイトのほうが多く引用されている。この順位そのものが、いまのAI検索の性格をよく表しています。
そして極めつけがWikipediaです。7534件の引用のうち、Wikipediaはたったの3件しかありませんでした。
21万5128ページを量産していた3つのサイト
調査チームが引用元を追っていくと、妙な共通点を持つ3サイトが浮かび上がりました。
worldmetrics.org、gitnux.org、wifitalents.comの3つです。
この3サイトのサイトマップ(サイト内のページ一覧)を数えると、「best/○○-software」形式の購入ガイドページが合計21万5128件ありました。
世の中に、真面目にレビューする価値のあるソフトのカテゴリーが21万個もあるとは考えにくい数字です。
機械生成の痕跡がそのまま残っていた
3サイトは同じCloudflareのネームサーバーを使い、ページのテンプレートも同一でした。ドメインの登録はいずれもNameCheap経由で、時期は2023年12月から2024年5月に集中しています。
決定的なのは、記事の署名欄に展開されなかったテンプレート変数がそのまま残っていたことです。2サイトには「Within the next 26 days」、もう1サイトには「Within the next 40 days」という文字列が表示されていました。
さらにworldmetrics.orgとgitnux.orgは、HTMLのタイトルが「<ブランド名> — Facts & Grounding Page」という形式でした。
Groundingとは、AIが回答の根拠にする情報のことです。つまりこのページは、タイトルの時点で読み手として人間ではなくAIを名指ししているわけです。
なぜ「AIに読ませるためのページ」が成立するのか
従来の検索対策では、最後に人間のクリックが必要でした。中身がスカスカなら読者は数秒で離脱し、順位も落ちます。
ところがAI検索では、そのページを人間が開く必要がありません。AIが読んで要約し、回答の根拠として1行引用すれば、それで目的は達成されてしまいます。
しかも狙われているのはニッチな領域です。「動物病院向け予約管理ソフト」のような細かいカテゴリーには、そもそも人間が書いた比較記事がほとんど存在しません。
その空白を機械生成のページで先に埋めておけば、AIは他に選択肢がないまま、そのページを引用します。
身近な場面で考えてみます。従業員30人の会社で情シスを1人で回している担当者が、勤怠管理ソフトを選ぶとします。比較サイトを何時間も見る余裕はないので、AIに「中小企業向けの勤怠管理ソフトを5つ教えて」と聞く。
返ってきたリストの根拠が、実際には誰も使っていない自動生成ページだったとしても、担当者にはそれを見分ける手段がありません。
家計簿アプリを探している個人でも、状況は同じです。「無料で使える家計簿アプリのおすすめは?」という質問に返る3つの名前が、どういう根拠で選ばれたのかは表示されません。
ただし「推薦が歪んだ」とまでは言い切れない
ここは正確に押さえておきたい点です。
Trellnerのレポートは、これらのページによっておすすめの結果が実際に変わったかどうかは検証していません。あくまで「根拠として何が使われているか」の構成を測った調査です。
それでも、根拠の質が測定可能な形で下がっていることは事実として示されました。
ChatGPT・Gemini・Perplexityで引用の癖は違う
今回の調査対象はPerplexityだけです。では他のAIも同じかというと、そうではありません。
国内外の調査を並べると、それぞれにはっきりした癖があります。
- Google AI Overviews:SNS・動画系の引用が23.3%と突出して高い
- ChatGPT:SNS・動画系は6.7%と低く、公的機関や学術などの権威型が15.3%と最も高い
- Perplexity:百科事典・辞書系が18.0%で最上位
日本国内の引用ドメインランキングでは、YouTubeが総合1位。以下はit-trend.jp、ITreview、BOXILといったBtoB比較メディアが並びます。
つまり1つのAIの答えだけを見て「これが世の中の評価だ」と判断するのは危険だということです。同じ質問をChatGPTとGeminiとPerplexityに投げると、根拠のタイプからして違います。
日本の企業・サイト運営者に何が起きるか
日本でのAI利用シェアを見ると、ChatGPTが47.5%で首位、Geminiが29.5%で続きます。今回調査されたPerplexityは3.6%と少数派です。
ただしPerplexityは、利用者の72.7%がほぼ毎日使うという高い定着率を持っています。数は少なくても、情報の質にこだわる層に刺さっているサービスです。
この構造は、日本のサイト運営者に2つの意味を持ちます。
1つはチャンスです。引用のトップ10で全体の17.3%しか占めないという分散ぶりは、裏を返せば大手でなくても引用されうるということ。ニッチな領域で一次情報を持つ中小企業や個人サイトにも、十分に入り込む余地があります。
もう1つはリスクです。BtoB企業のマーケティング担当者が自社サービス名をAIに聞いたとき、根拠として引かれているのが自社サイトではなく、素性のわからない自動生成ページかもしれません。
採用の場面でも同じことが起きます。応募を検討している人が企業名をAIに聞き、そこで返ってきた説明が古い情報や誤りだったら、候補者はそのまま離れていきます。
だからこそ、自社名や自社サービス名でAIに質問し、どのサイトが根拠として引かれているかを定期的に確認する作業が要ります。従来の検索順位チェックと同じ感覚で、月1回でも見ておく価値があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. AI検索の答えは信用しないほうがいいですか?
全否定する必要はありません。ただし、購入や契約のように後戻りしにくい判断では、AIが挙げた引用元リンクを実際に開いて中身を確認するのが安全です。
今回の調査でも、引用の6割は名前を聞いたことのないサイトでした。リンクを1つ開くだけで、信頼度はかなり判断できます。
Q2. Tranco順位とは何ですか?
世界中のサイトをアクセス規模の大きい順に並べたランキングです。複数のデータ元を組み合わせて作られており、研究用途でよく使われます。
上位10万位圏外というのは、ごく大まかに言えば「一般には知られていない規模のサイト」を意味します。
Q3. 自社サイトもAI向けページを量産すべきですか?
おすすめしません。今回のように調査で名指しされる事例が出はじめており、AI提供側の対策も進みます。
それよりも、自社しか持っていない一次情報(実際の導入事例、自社で取った数字、現場の運用ノウハウ)を書くほうが、結果的に長く引用されます。
Q4. GEOやLLMOという言葉をよく聞きますが、SEOとは別物ですか?
GEO(生成AI検索での最適化)やLLMO(大規模言語モデル向け最適化)は、SEOの完全な置き換えではありません。
情報の正確さ、構造化データの整備、他サイトからの言及といった基本は共通です。違うのは、クリックされることではなく引用されることがゴールになる点です。
Q5. この調査は誰でも検証できますか?
できます。Trellner Researchはデータセットと分析スクリプトをCC BY 4.0で公開しているため、同じ手順で追試が可能です。
まとめ
- Perplexityの引用7534件のうち、59.8%がTranco上位10万位圏外のサイトだった
- 引用トップ10でも全体の17.3%。特定の大手に集中しておらず、非常に分散している
- Wikipediaの引用は3件のみ。一方でredditが261件で2位に入っている
- worldmetrics.orgなど3サイトが、同一テンプレートで21万5128件の購入ガイドを量産していた
- ページのタイトルは「Facts & Grounding Page」。読み手として人間ではなくAIを想定していた
- ただし「推薦結果が実際に歪んだ」ことまでは検証されていない
- ChatGPT・Gemini・Perplexityで引用元の傾向は大きく異なる
まずは自社名やよく使うサービス名で、ChatGPTとPerplexityの両方に同じ質問を投げてみてください。返ってきた引用元を5つ開くだけで、AIがどんな土台の上で答えているかが実感できます。
参考文献
- Three sites made 215,128 “best software” pages for AI. Perplexity cites them – Trellner Research
- わずか3サイトが「おすすめソフト」ページを21万5128件生成、AI検索を支える情報源の59.8%は人気上位10万サイト外との調査結果 – GIGAZINE
- ChatGPTとGoogleの引用はどう違う? 主要AI5社の比較とAI検索対応【2026年最新】 – Web担当者Forum
- ChatGPTが利用率47.5%で首位獲得、Perplexityは毎日利用率72.7%で品質重視層に支持 – ECのミカタ系調査
- AI検索が引用するドメイン TOP 10【2026年最新版】 – Ahrefs