- 動画生成AI「LTX-2.5」が公開され、10秒の動画を最短6.8秒で作れるようになりました
- モデルの中身(重み)が配布され、自分のパソコンでも動かせます
- 年間売上1000万ドル(約16億円)以下の会社なら、商用利用も無料です
- 音声つき・複数カットの動画を、1回の指示でまとめて生成できます
- VRAM16GBのGPUで動くため、日本の個人クリエイターにも手が届きます
動画を1本作るのに、何十分も待たされた経験はありませんか。その常識がいま、静かに崩れようとしています。2026年8月、10秒の動画を6.8秒で生み出すAIが、しかも「無料で配る」形で登場しました。何が起きているのか、順を追って見ていきます。
LTX-2.5とは?10秒の動画が6.8秒で完成する
LTX-2.5は、イスラエルの企業Lightricks(ライトリックス)が公開した動画生成AIです。写真加工アプリ「Facetune」で知られる会社と言えば、ピンとくる人もいるかもしれません。
最大の話題は、その速さです。
10秒・720pの動画を、わずか6.8秒で生成します。これはNVIDIAの最新チップ「GB200」を2基使った場合の数字です。
つまり、動画の長さより生成時間のほうが短い。撮影した映像を再生し終わる前に、次の1本ができあがっている計算になります。
開発元は、この速度を「最も近い競合の非公開モデルより7.6倍速い」と説明しています。
もちろん、誰もがGB200を持っているわけではありません。Lightricksが運営するAPI(外部から呼び出せる窓口)を使う場合は、より高画質な1080pで23.7秒かかります。それでも、20秒台で1本というのは十分に速い部類です。
何がすごい?3つの技術的な進化
速さだけが注目点ではありません。中身にも、実務で効いてくる改良が入っています。
1. マルチショット対応でカットが破綻しない
これまでの動画生成AIには、地味だけれど深刻な弱点がありました。カットを切り替えると、登場人物の顔や服装が別人になってしまうのです。
LTX-2.5は「マルチショット」に正式対応しました。複数のカットをまたいでも、キャラクター・背景・声の一貫性を保ちます。
1つの指示から、カット割りのある短い映像をそのまま作れるということです。これまで人力でつなぎ合わせていた工程が、大きく省けます。
2. Gemma 4ベースの言語モデルで指示が通じる
LTX-2.5は、GoogleのオープンモデルGemma 4をベースにした独自のLLM(人間のような文章を理解できるAI)を内蔵しています。
役割は「通訳」です。ユーザーが書いた長くて複雑な文章を、映像を作る部分がわかる形に翻訳します。
「赤い傘をさした女性が横断歩道を渡り、その後ろを黒い犬が追いかける」——こうした登場人物が複数いる指示への追従性が上がりました。指示を単純に書き直す手間が減ります。
3. 16bit HDR出力と映像品質の底上げ
プロの現場で効いてくるのが16bitのHDR出力への対応です。HDRとは、明るい部分と暗い部分の差を豊かに表現する規格のこと。夕日の逆光やネオン街の映像で、白飛びや黒つぶれを抑えられます。
さらに「Diffusion Fidelity Rendering」という仕組みで、画面の中でも重要な部分に処理を集中させます。人物の顔や手など、視線が集まる場所の破綻を減らす狙いです。
実際、テクスチャー(質感)の崩れにくさで競合を上回るという評価も出ています。
加えて、旧版のLTX-2.3向けに作られたLoRA(追加学習で作る小さな個性データ)をそのまま流用できます。すでに自社キャラクターを学習させていた人は、資産を捨てずに移行できます。
「オープンウェイト」と年商16億円ルール
LTX-2.5がこれほど話題になった理由は、性能そのものより配り方にあります。
このモデルはオープンウェイトで公開されました。オープンウェイトとは、AIの「頭脳の中身にあたる数値データ」が誰でもダウンロードできる状態のことです。Hugging Face(AIモデルの共有サイト)や、画像生成でおなじみのComfyUIから、初日で使えるようになっています。
ライセンスの線引きも明快です。
年間経常収益が1000万ドル(約16億円)未満の組織は、商用利用も無料。それを超える大企業は、個別にライセンスを交渉します。
個人クリエイター、制作会社、スタートアップのほとんどはこの無料枠に収まります。ちなみにLTXシリーズは累計3300万ダウンロードを超えており、オープン系の動画モデルとしては最大級の利用規模です。
APIを使う場合は、生成した動画の秒数で課金されます。
- 720p:1秒あたり0.09ドル(約14円)
- 1080p:1秒あたり0.15ドル(約23円)
- 2K:1秒あたり0.19ドル(約29円)
- 4K:1秒あたり0.37ドル(約57円)
10秒の1080p動画なら約230円。自前のGPUを持っていなくても、試すだけなら数百円で済みます。
競合サービスとの比較
2026年の動画生成AIは、すでに選択肢が豊富です。Google Veo 3.1、Kling 3.0、Runway Gen-4.5、Seedance 2.0など、有力なサービスが並びます。
ではLTX-2.5はどこが違うのでしょうか。
決定的な差は「手元で動かせるかどうか」です。
Veo、Kling、Runwayはいずれもクラウド型で、モデル本体は非公開です。使うたびに事業者のサーバーへ映像の元となる情報を送ることになります。月額料金も継続的に発生します。Kling AIの有料プランは月6.99ドルからで、商用利用は上位プラン以上で解放されるという設計です。
一方のLTX-2.5は、モデルを自分の環境に置けます。枚数無制限で回しても追加料金はゼロ。データを外に出さずに済むため、未公開の商品映像や社外秘の企画にも使えます。
なお2026年のトレンドとして、映像と音声を同時に生成する「ネイティブ音声対応」が急速に広がっています。Veo 3.1やSeedance 2.0が搭載しており、LTX-2.5も音声付き動画の生成に対応しています。この点では横並びです。
まとめると、画質の絶対値で選ぶならクラウド勢、コントロールとコストで選ぶならLTX-2.5、という構図になります。
日本のクリエイターと企業への影響
日本の現場にとって、いちばん重要な数字はここかもしれません。
VRAM16GBのGPUで動作します。VRAMとは、グラフィックボードが持つ専用メモリのことです。16GBという水準は、ゲーマー向けの高性能グラフィックボードで現実的に届く範囲にあります。数百万円のサーバーは要りません。
これは、日本の同人・インディー制作にとって小さくない変化です。
いま日本のクリエイティブ業界は逆風のなかにあります。デザイン業の倒産は2026年上半期で40件と、前年比2.7倍に急増しました。制作予算が絞られるなかで、固定費ゼロで回せる映像生成環境の意味は大きいはずです。
ただし、注意点もあります。
LTX-2.5の公式な情報や設定画面は基本的に英語です。日本語のプロンプトがどこまで正確に通るかは、実際に試して確かめる必要があります。また、無料枠の条件である「年商16億円未満」は自己申告に近い運用のため、法人で使う場合は契約条件を法務部門に確認しておくのが安全です。
具体的な活用シーン3つ
抽象的な話が続いたので、実際の使い方を想像してみましょう。
まず、地方の小さな旅館を考えます。宣伝用の映像を作りたいけれど、撮影クルーを呼ぶ予算はありません。従来なら諦めていた場面です。ここで、季節ごとの露天風呂のイメージ映像をLTX-2.5で生成すれば、春夏秋冬の4パターンを1日で用意できます。撮り直しの費用もかかりません。
次に、企業の研修担当者です。安全教育のビデオを作る必要がありますが、事故の再現シーンは実写では撮れません。危険だからです。生成AIなら、転倒や機械への巻き込まれといった場面を、誰も傷つけずに映像化できます。しかも社内の機密情報を外部サーバーに送らずに済みます。
最後に、個人のマンガ家です。自作のキャラクターをLoRAで学習させておき、宣伝用の10秒アニメを作ります。マルチショット対応なので、「引きの絵から顔のアップへ」といったカット割りも同じ人物のまま作れます。1本あたりの追加コストは電気代だけです。
よくある質問(FAQ)
Q1. LTX-2.5は本当に無料で使えますか?
年間経常収益が1000万ドル(約16億円)未満の組織であれば、商用利用を含めて無料とされています。個人や中小規模の事業者はほぼ該当します。それを超える企業は個別のライセンス交渉が必要です。
Q2. パソコンのスペックはどれくらい必要ですか?
VRAM16GBのGPUで動画生成が可能とされています。データセンター向けGPUからMacまで幅広い環境に対応しており、NVIDIAのRTXシリーズやDGX Sparkでの動作も想定されています。ただし6.8秒という速度はGB200を2基使った場合の数値なので、家庭用GPUではもっと時間がかかります。
Q3. 音声も一緒に作れますか?
作れます。LTX-2.5はテキスト・画像・動画の入力に対応し、音声付き動画の生成が可能です。マルチショットでは声の一貫性も保たれる設計になっています。
Q4. 生成した動画の著作権はどうなりますか?
ライセンス上、無料枠に該当する組織は商用利用が認められています。ただし生成物の権利関係は国ごとの法制度にも左右されます。日本で商用展開する場合は、既存作品と似すぎていないかの確認を含め、個別に判断するのが安全です。
Q5. これまでのLTXユーザーは移行できますか?
できます。LTX-2.3向けに作成したLoRAをそのまま流用できるため、学習済みの資産を作り直す必要はありません。
まとめ
- LTX-2.5は10秒・720pの動画を6.8秒で生成する動画生成AIです(GB200を2基使用時)
- オープンウェイトで公開され、Hugging FaceやComfyUIから初日で利用できます
- 年商1000万ドル(約16億円)未満なら商用利用も無料です
- マルチショット・16bit HDR・Gemma 4ベースのLLM内蔵が主な進化点です
- VRAM16GBで動くため、個人クリエイターにも現実的な選択肢になりました
- クラウド型のVeoやKlingとは「手元で動かせる」点で明確に差別化されています
まずはComfyUIかLTXのAPIで10秒の動画を1本作ってみて、自分の用途に耐える画質かどうかを確かめるところから始めてみてください。
参考文献
- GIGAZINE「動画生成AI『LTX-2.5』がオープンモデルとして公開」
- VentureBeat「LTX-2.5 can generate a 10-second AI video from an image in just 6.8 seconds」
- MarkTechPost「LTX-2.5 Launches as NVIDIA-Accelerated Open Weights World Model」
- LTX 公式「LTX-2.5: LTX’s Latest AI Open-Source Foundation Model」
- Hugging Face「LTX-2.5 by Lightricks」

