- LinkedInが2026年7月30日、投稿を「AIスロップっぽい」と通報できるボタンを追加した
- 背景には、長文投稿の41%が完全にAI生成だったという調査結果がある
- 通報ボタンのほかに、判別アルゴリズム・本人への警告・AI執筆機能の廃止も進む
- AI投稿はエンゲージメントが平均45%低いというデータも出た
- 日本国内でも利用者500万人を超え、投稿の書き方を見直す時期に来ている
SNSを開いて、きれいに整っているのに中身が薄い投稿が並んでいて、うんざりしたことはありませんか。世界13億人が使うビジネスSNSのLinkedInが、ついにその不満に正面から向き合いました。押すだけで「これはAIっぽい」と伝えられるボタンが登場したのです。何が起きたのか、そして私たちの投稿にどう影響するのかを整理します。
LinkedInに「AIスロップっぽい」ボタンが登場
2026年7月30日、LinkedInが新しい通報ボタンを静かに追加しました。
名前は「Seems like AI slop(AIスロップっぽい)」。投稿の右上にある「…」メニューを開くと現れます。
AIスロップとは、生成AIで大量に作られた中身の薄いコンテンツのことです。英語の「slop」は家畜のエサや残飯を指す言葉で、かなり手厳しい呼び方といえます。
注目されたのは、この直球すぎる名前です。「AIで生成された可能性があります」といった控えめな言い回しではなく、プラットフォーム自身が「スロップ」と呼び切りました。
ボタンを押すと「教えてくれてありがとう。あなたのフィードバックがフィードの改善に役立ちます」というメッセージが表示されます。この機能は米メディアの404 Mediaが最初に発見しました。
最高製品責任者のコメント
LinkedInの最高製品責任者ハリ・スリニヴァサン氏は、「AIスロップは私たち全員にとって最優先事項です」と述べています。
そのうえで「人々は本物の人とつながり、本物の視点や専門知識を共有するためにLinkedInに来ている」と説明しました。
さらに興味深いのが、AI検出ツールの判定よりも人間からのフィードバックのほうが重要だという発言です。機械が機械を見抜く精度には限界がある、という現場の実感がにじみます。
長文投稿の41%がAI生成だった——Pangram調査
この動きの引き金になったのが、AI検出ツールを手がけるPangram Labsの調査です。
同社はChrome拡張機能を使い、2か月かけて約100万件の投稿を分析しました。対象はLinkedIn、X、Reddit、Substack、Mediumの5つです。
結果は衝撃的でした。LinkedInの長文投稿(250語以上)のうち、41%が完全にAIで書かれていたのです。
他のSNSより突出して多い
Xでは25%が完全AI生成、さらに23%がAIの手を借りた投稿でした。RedditとSubstackの長文はどちらも10%前後で、LinkedInの4分の1程度にとどまります。
もっと極端な数字もあります。検出されたAI生成コンテンツ全体のうち、62%がLinkedIn由来でした。スキャンした投稿全体に占めるLinkedInの割合は3分の1しかないのにです。
ビジネスSNSという場所柄、「思想的リーダー」として見られたい人が多いことが影響していると見られます。転職活動中の会社員が、月曜の朝に業界ニュースへの所感を投稿する。その下書きをAIに任せる——そんな光景が何十万件も重なった結果です。
AI投稿は「読まれていない」
もうひとつ重要なのが反応の差です。AIで書かれた投稿は、人間が書いた投稿に比べてエンゲージメントが平均45%低いという結果が出ました。
ただし例外もあります。「リーダーシップ・インスピレーション」系のカテゴリだけは、AI投稿のほうが人間より75%も高い反応を得ていました。定型的な内容ほど、AIとの差が出にくいということかもしれません。
通報ボタンだけじゃない、LinkedInの4つの手
今回発表された対策は、実はボタン1つではありません。
1つ目は判別アルゴリズムです。新しい分類器を導入し、AIスロップや低品質な投稿を自動で見分けます。該当した投稿は、つながりのない相手へのおすすめ表示が減らされます。
2つ目は本人への通知。アナリティクス(投稿の反応を見る画面)で、「AIを使いすぎて不誠実に見えるかもしれません」と本人だけにこっそり伝える機能を試験導入しています。公開の場で恥をかかせない配慮です。
3つ目はAI執筆機能の廃止。LinkedInは自前で提供していた「投稿を強化する」というAI文章生成機能をやめ、誤字脱字を直す校正ツールに置き換えます。書き手の声色を変えない範囲にとどめる方針です。
4つ目は自動コメント対策。毎日数十万件の自動コメント投稿を遮断しており、直近数か月では数百万件の自動化の試みをブロックしたといいます。
加えて、プロフィールの本人確認ツールの対象を広げ、企業ページ側でコメントを非表示にする選択肢も追加されました。
6.4兆円を投じた会社の皮肉
ただし、この施策には指摘せずにいられない矛盾があります。
LinkedInの親会社であるMicrosoftは、2026年度第4四半期だけで約410億ドル(約6.4兆円、1ドル155円換算)の設備投資を計上しました。その大半はAI向けのデータセンターです。
AI普及に世界最大級の投資をしている会社が、自社のSNSでは「AIっぽい投稿」を通報させる。海外メディアからは、この構図への皮肉が相次ぎました。
他のSNSはどう戦っているか
AIスロップとの戦いはLinkedInだけの話ではありません。各社の対応を比べてみます。
- YouTube:ニール・モーハンCEOが低品質AIコンテンツへの対応強化を表明。AIスロップと判定された動画はおすすめに出にくくなり、実写と見分けがつかないAI生成にはラベル表示が求められます
- Substack:2026年7月21日、文章をスキャンしてAIがどの程度使われた可能性があるかを推定表示する機能を発表しました
- LinkedIn:ユーザーの通報と分類アルゴリズムを組み合わせる方式。自社のAI執筆機能まで引っ込めた点が他社と違います
大きく分けると2つの方向があります。AIで検出する道(YouTube・Substack)と、人間の目を信じる道(LinkedIn)です。
LinkedInが後者に寄ったのは、実名制のビジネスSNSという特性が効いています。匿名の荒らしが押すボタンではなく、キャリアを背負ったユーザーが押すボタンだから信用できる、という計算があるのでしょう。
なお欧州ではEU AI Act第50条で、AI生成コンテンツの透明性が求められる方向に進んでいます。各社の自主対応は、規制を先回りする動きでもあります。
日本のビジネスSNS利用者にとって何が変わるか
「海外の話でしょう」と思うかもしれません。ですが、影響は確実に日本にも及びます。
LinkedInの国内利用者は2026年に500万人を突破しました。かつて「日本では普及しない」と言われた時代は終わりつつあります。
採用担当者が候補者を探し、営業担当が見込み客に接触する場として定着してきました。つまり、投稿の見え方がそのまま仕事の成果に響く場所になったということです。
3つの現場で起きること
採用の現場を考えてみましょう。ある人材紹介会社の担当者が、毎朝AIで生成した業界コラムを5本投稿していたとします。今後はおすすめ表示が減り、届く相手が激減する可能性があります。
営業ではどうでしょうか。英語が不安でAIに全文を書かせていた日本企業の担当者の場合、丁寧すぎる文章がかえってAI判定を招くおそれがあります。
転職活動中の会社員も無関係ではありません。実績をアピールしようと投稿を重ねた結果、アナリティクス画面に警告が出れば、気づかないうちに評価を下げていたことになります。
日本語話者にとって悩ましいのは、AI検出の精度が英語ほど高くない点です。翻訳ツールを通した自然な日本語が誤判定される可能性は否定できません。
AIスロップ扱いされない投稿にするには
では、どう書けばいいのでしょうか。今回の発表から読み取れるポイントを整理します。
- 一次体験を必ず混ぜる:自分が実際に見たこと、失敗したこと、社内で交わした会話。AIが持っていない情報が入るだけで印象が変わります
- 整いすぎた構成を避ける:「3つのポイント」「結論から言うと」の連発はAIの典型パターンとして知られています
- AIは下書きでなく推敲に使う:LinkedIn自身が校正ツールへ舵を切ったのは、そこが健全な線引きだという判断です
- 数字と固有名詞を入れる:具体的であるほど、生成されたものではないと伝わります
大事なのは、AIを使うこと自体が問題視されているわけではない点です。スリニヴァサン氏も、投稿者は自信を持つためにAIを使っていると理解を示しています。問われているのは、そこにあなた自身の視点が残っているかという一点だけです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 通報されると投稿は削除されますか?
いいえ、削除されるわけではありません。通報はAIモデルの学習データとして使われ、判別アルゴリズムの改善に活用されます。悪質と判断された場合は、つながりのない相手へのおすすめ表示が減る形で影響が出ます。
Q2. 誤って通報されたらどうなりますか?
1件の通報ですぐ不利になる仕組みではないとされています。LinkedInは分類アルゴリズムと人間のフィードバックを組み合わせて判断する方針です。ただし現時点で、誤判定への異議申し立て手続きは公表されていません。
Q3. 日本語の投稿も対象ですか?
ボタン自体は全ユーザーに展開されるため、日本語投稿も通報の対象になります。ただし判別アルゴリズムの日本語精度がどの程度かは明らかにされていません。
Q4. AIで下書きを作るのはもうダメですか?
禁止されてはいません。LinkedInが問題視しているのは、書き手の視点が消えた量産型の投稿です。AIに骨組みを作らせ、自分の経験と数字で肉付けする使い方なら実害は考えにくいでしょう。
Q5. なぜLinkedInだけAI投稿が多いのですか?
実名で専門性を示す場という性質上、「立派に見える文章」への需要が高いためと考えられています。Pangram調査でも、リーダーシップ系の投稿でAI利用が目立つ傾向が出ています。
まとめ
- LinkedInが2026年7月30日、「AIスロップっぽい」通報ボタンを追加した
- 背景は長文投稿の41%が完全AI生成というPangram Labsの調査結果
- AI投稿はエンゲージメントが平均45%低く、読者にも見抜かれ始めている
- 通報ボタンに加え、判別アルゴリズム・本人への警告・AI執筆機能の廃止も実施
- YouTubeやSubstackも同時期に対策を進め、業界全体の流れになっている
- 国内利用者500万人超の日本でも、投稿の作り方を見直す必要がある
まずは自分の直近の投稿を1本読み返し、そこに自分にしか書けない一文があるか確かめてみてください。
参考文献
- LinkedInが「AIスロップっぽい」というボタンを導入 – GIGAZINE
- LinkedIn adds a button to report AI-generated ‘slop’ – TechCrunch
- LinkedIn Introduces a ‘Seems Like AI Slop’ Button – 404 Media
- A Study Tried to Quantify How Many LinkedIn Posts Are 100% AI – Gizmodo
- YouTubeからLinkedInまで、SNS各社はAI生成コンテンツにどのように対処しているのか – Business Insider Japan

