KADOKAWAが小説AI|作品は学習に使わず

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • KADOKAWAとはてなが2026年7月30日、AI小説エディタ「RIKU(リク)」を共同開発すると発表
  • コンセプトは「書くのは人、支えるのはAI」。本文を代筆するツールではない
  • RIKUで書いた作品はAIの学習に使われないと明記された
  • クローズドβテストの参加者を募集中。18歳以上、応募は8月17日23時59分まで
  • なろうやカクヨムのAI開示ルールが厳しくなるなか、「安心して使えるAI」の争いが始まった

AIに小説を書かせるのは怖い。でも設定づくりや校正は手伝ってほしい。そんなふうに感じたことはありませんか。国内最大級の出版社KADOKAWAが、まさにその線引きに答える新サービスを出しました。応募締切は8月17日です。

KADOKAWAとはてなが「RIKU」を発表

2026年7月30日、KADOKAWAと株式会社はてなが新サービス「RIKU(リク)」を共同発表しました。

RIKUは、AIを組み込んだ「次世代小説エディタ」です。小説を書く人のための執筆ツール、と考えるとわかりやすいです。

公式サイトのURLは riku.ink。同日からクローズドβテスト(限られた人だけが試せる先行テスト)の参加者募集が始まりました。

掲げられたテーマは「物語を書くのは、あなた。その隣に相棒を。」です。週刊アスキーはこれを「書くのは人、支えるのはAI」と表現しました。

2016年から10年続くタッグ

この2社の組み合わせは、実は今回が初めてではありません。

KADOKAWAとはてなは2016年に小説投稿サイト「カクヨム」を共同開発しています。2024年3月13日にはサブスク型の「カクヨムネクスト」もリリースしました。

カクヨムの規模は大きく育ちました。2026年6月時点で月間約8億PV、月間ユーザー数は約570万人。定期的に作品を投稿する作家は2万人を超えます。

この10年でカクヨム発の商業化書籍は3500点以上。つまりRIKUは、ぽっと出の新サービスではありません。10年分の投稿サイト運営と編集ノウハウの上に乗った企画です。

RIKUは具体的に何をしてくれるのか

発表資料によると、RIKUの支援は大きく4つの場面に分かれます。

1. 着想を広げる・設定をつくる

頭の中にある漠然としたアイデアを、AIとの対話で形にしていく機能です。

ストーリーの方向性、キャラクター、世界観といった設定づくりをサポートします。

ある人が「記憶を売買できる街の話を書きたい」とだけ思いついたとします。そこからAIと話しながら、記憶を売る動機は何か、街の経済はどう回るのか、主人公は買う側か売る側かを詰めていく。そういう使い方が想定されています。

2. 執筆中の参照資料になる

長編を書いていると、自分で決めた設定を忘れます。第3話で「主人公の妹は14歳」と書いたのに、第20話で16歳になっている。よくある事故です。

RIKUは執筆中に設定を参照できる資料として機能します。書きながら手元で自分の世界観を確認できる仕組みです。

3. 手が止まったときの相談相手

展開に詰まったとき、AIに相談できます。

公式の説明では、RIKUの役割は「話を聞く」「考えを整理する」「掘り下げる」「伴走する」の4つ。答えを出すのではなく、書き手の思考を整理する方向に振られています。

これは編集者との打ち合わせに近い体験です。編集者は原稿を書いてくれませんが、「その主人公、なぜそこで怒るんですか?」と聞いてくれます。その問いで作者の中の答えがほどける。RIKUが狙っているのはその役回りです。

4. 「最初の読者」として校正・レビュー

書き上げた後の支援もあります。

校正・校閲、レビュー、感想の提供です。誤字脱字のチェックだけでなく、「最初の読者」としての反応を返してくれます。

ネット小説を書いている人なら、投稿ボタンを押すまで誰にも読んでもらえない孤独を知っているはずです。反応がゼロのまま20話書き続けるのはつらい。その空白を埋める機能と言えます。

「学習に使わない」がいちばん重い一文

今回の発表でもっとも創作者に響いたのは、機能ではなくこの一文かもしれません。

「RIKUを使って書いた作品はAIの学習に使われることはありません」。KADOKAWAとはてなは、これを公式に明記しました。

なぜこれが重要なのか。ここ数年、創作者の間ではAIへの不信が根強く残ってきたからです。

自分が何年もかけて磨いた文体を、無断でAIに学習され、似た文章が量産される。その恐怖が、AIツールそのものを遠ざける理由になっていました。

実際、日本漫画家協会が「自作をAIに学習されない契約文」について見解を出すなど、業界全体で学習利用は争点になっています。

ちなみにRIKUは、入力データをAI学習に使わない方針を明示することで、この不信の入口を先に塞ぎにいった形です。機能競争ではなく信頼競争で勝負している、と読めます。

βテストの参加条件と締切

今回の発表は、誰でもすぐ使えるという話ではありません。参加者を選んで試すクローズドβです。

  • 対象:18歳以上で、小説を書いている人・書いてみたい人
  • 応募締切:2026年8月17日 23時59分
  • 応募方法:KADOKAWA公式サイトのフォーム(Googleアカウントが必要)
  • 対応環境:Windows、Mac、スマートフォン、タブレット
  • 選考:応募多数の場合は順番待ちリスト方式

注目したいのはスマホ・タブレット対応が明記されている点です。通勤中にスマホで書くweb小説作家は多いので、そこを外していません。

一方で、まだ公表されていない情報もあります。料金と正式リリース時期は未定です。無料なのか、月額いくらなのかは現時点でわかりません。

公式Xアカウントは@KADOKAWA_RIKU。続報はここで出ると見られます。

既存の小説AIと何が違うのか

日本語で小説を書けるAIツールは、RIKUが初めてではありません。むしろ激戦区です。主なものを整理します。

AIのべりすと(国産)

日本語の文章生成に特化した国産サービスです。無料プランを公式に用意している点が大きく、まず試しやすいのが強みです。

特徴は「続きを書いてくれる」補完型であること。書きかけの文章の先をAIが提案します。RIKUとは思想が真逆に近いです。

NovelAI(海外)

物語生成と画像生成をセットで提供する海外サービスです。料金は月額10ドル(Tablet)/15ドル(Scroll)/25ドル(Opus)の3プラン。無料トライアルは画像30枚・テキスト50回の枠があります。

Sudowrite(海外)

英語圏のプロ作家に人気のツールです。AIキャンバスで物語を視覚的に組み立てられます。ただし日本語の長編では文体に違和感が残りやすいと指摘されています。有料プランのみです。

RIKUの立ち位置

ここまで並べると、RIKUの独自性が見えてきます。

既存ツールの多くは「AIが本文を出す」方向に進化してきました。対してRIKUは、本文生成をあえて主役に置いていません。

そのかわり、編集者の知見という他社にない資産を投入しています。KADOKAWAの編集者が長年かけて積み上げたプロット整理やキャラクター設計のノウハウ。これをAIに落とし込むのがRIKUの中核です。

つまり競合は「AI執筆ツール」ではなく、「担当編集がつかない状態」そのものだと言えます。プロにしか付かない編集者を、書きたい人全員に配ろうという発想です。

日本の創作現場はどう変わるのか

RIKUの登場は、投稿サイト側のルール変更とセットで見ると意味がはっきりします。

なろう・カクヨムのAI開示ルールが厳格化

「小説家になろう」は2026年6月9日以降の新規投稿でAI利用状況の設定を必須化しました。連載中の作品も2026年9月1日までに設定が必要です。

全文をAIで生成した作品の投稿は禁止。違反すると警告、作品の非公開化、アカウント停止の対象になります。書籍化の際に虚偽申告が発覚すれば、賠償リスクを負う可能性も指摘されています。

カクヨムも2026年5月27日にガイドラインを更新し、「AI本文利用」(本文の目安50%以上がAI生成)「AI本文一部利用」(目安50%未満)などのタグ付けを推奨しています。

「使ってもタグが軽い」領域が価値を持つ

この流れが何を意味するか。AIの使い方によって、投稿時の扱いが変わる時代になったということです。

本文をAIに書かせれば重いタグがつきます。一方、アイデア整理や校正に使うだけなら扱いは軽くなります。

RIKUが本文生成を前面に出さないのは、この構造をよく理解した設計に見えます。投稿サイトのルールと衝突しないAIという立ち位置です。

書き手のすそ野が広がる可能性

ここに具体的な影響が出そうです。

たとえば、平日は会社員として働きながら夜だけ小説を書く人。設定資料を作る時間がなくて、第1話で力尽きるケースは珍しくありません。設定づくりの相談相手がいれば、そこを越えられるかもしれません。

あるいは、20年ぶりに小説を書き直したいと思った人。現代のweb小説の作法がわからず、何から手をつけるべきか迷います。構成の相談ができるツールは、その最初の一歩を軽くします。

カクヨムには月570万人が訪れる一方、定期的に投稿する作家は2万人ほど。「読む人」と「書く人」の間にある大きな段差を埋められるかが、RIKUの本当の勝負どころです。

よくある質問(FAQ)

Q. RIKUは今すぐ使えますか?

いいえ。現時点ではクローズドβテストの段階で、応募して選ばれた人だけが使えます。応募締切は2026年8月17日23時59分です。正式リリースの時期は公表されていません。

Q. 料金はいくらですか?

まだ発表されていません。βテストの参加費や正式版の価格について、KADOKAWA・はてなともに公表していない状況です。続報は公式X(@KADOKAWA_RIKU)で出ると見られます。

Q. RIKUで書いた作品は自分のものですか?AIに学習されませんか?

両社は「RIKUを使って書いた作品はAIの学習に使われることはありません」と明記しています。ユーザーがサービス上で作成・入力した作品を学習に利用しない方針です。ただし細かい規約はβテスト時に確認することをおすすめします。

Q. RIKUを使った作品は、なろうやカクヨムに投稿できますか?

投稿自体は可能と考えられますが、AI利用状況の申告は必要です。なろうは2026年6月9日以降、投稿時のAI利用設定が必須になっています。カクヨムも用途に応じたタグ付けを推奨しています。校正やアイデア整理での利用でも、各サイトのルールを確認して正しく申告してください。

Q. AIが小説を代筆してくれるツールですか?

違います。RIKUは本文の自動生成ツールではありません。アイデアの整理、設定の構築、校正・校閲が中心です。「物語を書くのは、あなた」というテーマがそのまま設計思想になっています。

まとめ

  • KADOKAWAとはてなが2026年7月30日、AI小説エディタ「RIKU」を共同発表した
  • コンセプトは「書くのは人、支えるのはAI」。本文代筆ではなく発想整理・設定構築・校正が中心
  • 入力した作品はAI学習に使わないと明記。創作者の最大の不安に先回りした形
  • クローズドβは18歳以上が対象、応募は2026年8月17日23時59分まで。料金と正式リリース時期は未定
  • なろう(6月9日から必須化)やカクヨム(5月27日改定)のAI開示ルールと衝突しにくい設計になっている
  • 10年で商業化3500点超のカクヨム運営で培った編集ノウハウが最大の武器

小説を書きたい気持ちがあるなら、まずは8月17日の締切までにβテストへ応募してみてください。

参考文献