ノーベル賞ジャンパー氏がAnthropicへ移籍

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • ノーベル化学賞のジョン・ジャンパー氏が、約9年いたGoogle DeepMindを離れAnthropicへ移籍します
  • ジャンパー氏は、たんぱく質の形を当てるAI「AlphaFold(アルファフォールド)」を作った人です
  • 移籍の発表は2026年6月19日。引き継ぎのため2026年末まではDeepMindに残ります
  • Anthropicは「AIで生命科学を10倍速くする」ことを目指し、研究施設や生物学者を集めています
  • この数日で他にも大物がGoogleを去り、AI業界の「人材の取り合い」が激しくなっています

AIの世界で、いま大きなニュースが続いています。ノーベル賞をとった超一流の科学者が、Googleを離れて別の会社へ移ることになりました。お金だけでは説明できない「人の動き」の裏には、何があるのでしょうか。この記事を読むと、移籍の中身と、それがなぜ大事件なのかがやさしくわかります。

ジョン・ジャンパー氏とはどんな人?

ジョン・ジャンパー氏は、AIを使った科学研究の世界でいちばん有名な人の一人です。

2024年にノーベル化学賞を受賞しました。受賞の理由は「AlphaFold(アルファフォールド)」というAIを作ったことです。

AlphaFoldは、たんぱく質(私たちの体を作る部品のようなもの)が、どんな立体の形になるかをAIで予測する仕組みです。

この「形」がわかると、新しい薬を作る研究などがぐっと速く進みます。だから世界中の研究者がAlphaFoldを使っています。

半年でリーダーに抜てきされた実力

ジャンパー氏がGoogle DeepMindに入ったのは2017年です。

おどろくことに、入社してわずか半年でAlphaFoldの開発チームのリーダーに選ばれました。それだけ実力が高かったのです。

AlphaFoldはこれまでに200万以上のたんぱく質の構造を予測してきました。世界中の生命科学の進歩を、文字どおり支えてきた成果です。

何が起きたのか:移籍の発表

2026年6月19日、ジャンパー氏は自身のX(旧Twitter)で移籍を発表しました。

約9年間いたGoogle DeepMindを離れ、AIスタートアップのAnthropic(アンソロピック)へ移ります。AnthropicはAIアシスタント「Claude(クロード)」を作っている会社です。

発表のなかでジャンパー氏は、DeepMindのトップであるデミス・ハサビス氏や開発チームへの感謝を述べました。「特別な場所だった」とふり返っています。

すぐには移らず、年末まで引き継ぎ

ジャンパー氏はすぐに会社を去るわけではありません。

仕事をきちんと引き継ぐため、2026年末まではDeepMindに残ると説明しています。少し休んでエネルギーを充電してから、Anthropicでの仕事を始めるそうです。

Anthropicでどんな役職につくのか、何を担当するのかは、まだ公表されていません。

なぜAnthropicへ? 生命科学への大きな賭け

「Claudeを作る会社に、なぜたんぱく質の専門家が?」と思った人もいるかもしれません。

実は、Anthropicは2026年に入ってから、ひそかに「AIで科学を進める」ための準備を進めてきました。

具体的には、実験ができる研究室(ウェットラボ)を開き、生物学の研究に使えるAIを開発し、生物学者の採用を本格化させています。

「R&Dを10倍速くする」という目標

Anthropicは創業から約5年で、年間売上が300億ドル規模に達したとされる急成長企業です。

その会社が「生物学こそAIを活かす一番大事な分野だ」と判断しました。

目標はとても大きいです。生命科学の研究開発(R&D)にかかる時間を10分の1に縮めること。新薬の発見などを一気に速めようとしているのです。

2026年2月には、米国の有名研究機関であるアレン研究所やハワード・ヒューズ医学研究所との連携も発表しています。こうした流れの中で、AlphaFoldを生んだジャンパー氏は「最高の補強」と言える存在です。

背景にあるGoogleの「人材流出」

今回の移籍は、一人の引っ越し話では終わりません。Googleから優秀な人がどんどん出ていく、大きな流れの一部だからです。

実はジャンパー氏の発表の前日、Geminiの開発を率いたノーム・シャジア氏がOpenAIへ移るとも報じられました。48時間のあいだに、Googleは二人の大物を失ったことになります。

シャジア氏は、いまのAIの基礎になった「Transformer(トランスフォーマー)」という技術の論文を書いた一人でもあります。

なぜ人が出ていくのか

専門家のあいだでは、こんな見方があります。

「Googleは研究の論文を発表する文化が強い。一方でOpenAIやAnthropicは、製品をどんどん世に出す」。この違いが、人の動きに影響しているという指摘です。

Googleは2023年に、DeepMindとGoogle Brainという2つのチームを合体させました。巨大になった組織をまとめるのは難しく、人を引きとめるのが課題になっている、とも言われています。

Googleはお金で人を呼び戻すこともあります。2024年には、いったん辞めたシャジア氏を呼び戻すため約27億ドルを使ったと報じられました。それでも今回また去ろうとしているのです。

競合との比較:3社の戦い方の違い

同じ「AIのトップ企業」でも、力を入れる場所はそれぞれ違います。ざっくり整理してみましょう。

  • Google DeepMind:基礎研究に強く、AlphaFoldのような科学の成果を生んできた。製品化のスピードが課題と見られている。
  • Anthropic:AIの安全性を重視。Claudeを軸に、いまは生命科学・創薬という新しい大きな分野へ挑戦中。
  • OpenAI:ChatGPTで一気に普及。製品をすばやく出すのが得意で、Googleから人材を引き寄せている。

今回ジャンパー氏がAnthropicを選んだことは、「安全性を大事にしながら、科学で世の中を変えたい」という方向性に共感した結果とも読めます。

人材の取り合いは加速している

2026年5月には、AI研究で有名なアンドレイ・カルパシー氏もAnthropicに加わったと報じられました。

トップ級の研究者がどこに移るかで、各社の力関係が変わります。いまはまさに「人材の争奪戦」の真っ最中なのです。

日本市場への影響

「海外の会社の話でしょ?」と感じるかもしれません。でも、私たちにも関係があります。

まず、AnthropicのClaudeは日本でも使えます。日本語にも対応していて、仕事や勉強で使う人が増えています。そのClaudeを作る会社が、生命科学に本気で取り組む意味は小さくありません。

もしAnthropicのAIで創薬が速くなれば、日本の製薬会社や大学の研究にも、新しい道具として広がる可能性があります。

日本でもAI人材の不足が課題です。海外で起きている「優秀な人をどう集め、どう引きとめるか」という動きは、日本の企業にとっても大事なヒントになります。

たとえば、ある国内の研究チームが新しい薬の候補を探す場面を想像してみてください。たんぱく質の形を当てるAIが進化すれば、これまで数年かかった作業が、ぐっと短くなるかもしれません。

よくある質問(FAQ)

Q1. AlphaFoldはこれからも使えますか?

はい。AlphaFold自体はGoogle DeepMindの成果として残ります。ジャンパー氏が移っても、すでに公開されたデータや仕組みがすぐ消えるわけではありません。

Q2. ジャンパー氏はいつからAnthropicで働くのですか?

2026年末まではDeepMindで引き継ぎをします。その後、少し休んでからAnthropicでの仕事を始める予定とされています。

Q3. なぜたんぱく質の研究がそんなに大事なのですか?

たんぱく質の形がわかると、病気のしくみの理解や、新しい薬の開発が進みます。医療の未来に直結する分野だからです。

Q4. Anthropicは何を目指しているのですか?

AIの安全性を大事にしながら、生命科学の研究開発を10倍速くすることを目標にしています。創薬などへの活用を狙っています。

Q5. これでGoogleは弱くなるのですか?

すぐに弱くなるとは限りません。ただ、トップ級の人が続けて去ることは、研究の勢いや組織のあり方を見直すきっかけになると見られています。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • ノーベル賞のジョン・ジャンパー氏が、Google DeepMindを離れAnthropicへ移籍します
  • 発表は2026年6月19日。引き継ぎのため2026年末まではDeepMindに残ります
  • Anthropicは生命科学に本気で投資し、「R&Dを10倍速く」を目指しています
  • 前日にはGeminiの主要人物もOpenAIへ移り、Googleの人材流出が話題に
  • Claudeは日本でも使え、創薬AIの進化は日本の研究にも関わってきます

まずはニュースの続報をチェックしつつ、AnthropicのClaudeを実際に触ってみると、AI業界の今がよりリアルに感じられるはずです。

参考文献

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