- JetBrainsが新しいコード生成AI「Mellum2」を無料公開した
- 12B(120億)パラメータのうち、毎回2.5Bだけ動く省エネ設計
- 同じくらいの大きさのAIより2倍以上速く動く
- 自分のパソコンやサーバーの中だけで完結して使える
- Claude CodeやGitHub Copilotとは役割がまったく違う
「AIにコードを書かせたいけど、社外にデータを送るのが怖い」と思ったことはありませんか。多くのコード支援AIは、裏で外部のサーバーに通信しています。そんな中、開発ツール大手のJetBrainsが、自分の手元だけで動かせる無料のコードAI「Mellum2」を公開しました。この記事を読むと、Mellum2が何者で、なぜ注目されているのかがわかります。
Mellum2とは?JetBrainsが公開した新しいコードAI
Mellum2(メラム・ツー)は、JetBrainsが2026年6月1日に公開したコード生成AIです。
JetBrainsは「IntelliJ IDEA」や「PyCharm」といった開発ソフト(プログラマーがコードを書く道具)を作っている会社です。世界中のエンジニアが使っています。
そのJetBrainsが、自社のAIを誰でも無料で使えるかたちで公開しました。
ライセンスは「Apache 2.0」です。これは商用利用もOKという、とてもゆるやかな約束ごとです。AIの中身(重みデータ)も丸ごと公開されています。
公開場所は、AIの共有サイト「Hugging Face(ハギングフェイス)」です。誰でもダウンロードできます。
12B MoEって何がすごいの?仕組みをやさしく解説
Mellum2の説明には「12B MoE」という言葉が出てきます。少しむずかしいので、順番にほどいていきます。
「12B」はAIの大きさ
「12B」は、パラメータ(AIの頭の中にある調整つまみ)が120億個あるという意味です。
つまみが多いほど、AIは賢くなりやすいです。でも、その分だけ動かすのに大きな計算パワーが必要になります。
「MoE」は必要な専門家だけを呼ぶ仕組み
MoEは「Mixture of Experts(専門家の集まり)」の略です。
Mellum2の中には、64人の小さな専門家AIがいます。質問が来るたびに、その中から最適な8人だけを呼び出して働かせます。
会社にたくさん社員がいても、ひとつの仕事に全員が群がるのは無駄ですよね。担当者だけが動けば十分です。MoEはそれと同じ考え方です。
結果として、120億個のつまみを持ちながら、実際に動くのは毎回2.5B(25億)個だけで済みます。
だから賢さを保ったまま、とても速く動きます。JetBrainsによると、同じくらいの大きさのAIと比べて2倍以上速いそうです。
初代Mellumから何が変わった?
実はMellumには初代がありました。違いを知ると、進化のポイントが見えてきます。
初代Mellumは4B(40億)パラメータの小さなモデルでした。2024年末にJetBrainsの開発ソフト向けに登場し、2025年4月にオープンソース化されています。
初代の役割は「コード補完」だけでした。あなたが書いている途中のコードの続きを予測する、という1つの仕事に特化していたのです。
一方、Mellum2はコードを一から書いたり、直したり、外部の道具を呼び出したりできる本格的なアシスタントに進化しました。
さらに「Thinking(考える)」という種類のモデルもあります。これは答えを出す前に、頭の中で順番に考えた過程を見せてくれます。複雑なバグ探しに向いています。
Mellum2は全部で6種類が同時に公開されました。用途に合わせて選べます。
なぜ「無料公開」したのか — 脇役に徹する戦略
賢いAIをなぜタダで配るのでしょうか。ここにJetBrainsの考えがあります。
JetBrainsはMellum2を「フォーカルモデル」と呼んでいます。主役ではなく、システムの中で高速に動く専門の脇役、という位置づけです。
たとえば、こんな場面で活躍します。
- ルーティング:来た質問を読んで、どの大きなAIに渡すべきかを瞬時に振り分ける
- 下調べ:大量の資料から必要な部分だけをサッと要約する
- サブ作業:AIエージェントが行う、繰り返しの細かい確認作業を肩代わりする
こうした「数が多くて、速さが命」の仕事を、安く高速にこなすのがMellum2の役目です。
JetBrainsは「未来は1つの万能AIではなく、複数のAIが連携するシステムにある」と考えています。だから縁の下の力持ちを無料で広めたいのです。
Claude Code・GitHub Copilotとの違いを比較
「結局、Claude CodeやCopilotと何が違うの?」と気になりますよね。役割がまったく違います。
Claude CodeやGitHub Copilotは、とても賢い主役級のAIです。複雑な指示を理解し、コード全体を書き換えてくれます。
ただし、これらは裏でAnthropicやOpenAIのサーバーに通信しています。あなたのコードが一度、外の会社に送られるのです。
Mellum2は、ここが決定的に違います。中身がすべて公開されているので、自分の会社のサーバーの中だけで完結して動かせます。外部に一切データを送りません。
| 項目 | Mellum2 | Claude Code / Copilot |
|---|---|---|
| 役割 | 脇役(高速な部品) | 主役(賢い相棒) |
| 料金 | 無料(自前の電気代のみ) | 月額10〜20ドル前後 |
| データの送り先 | 外に出ない | 外部サーバーに送る |
| 得意なこと | 速さ・大量処理 | 深い思考・複雑な作業 |
つまり、両者はライバルというより、組み合わせて使うものです。賢い主役の手足として、Mellum2が裏で速く働くイメージです。
日本のエンジニア・企業にとっての意味
このニュースは、日本の現場にも大きく関わります。
日本では、金融や医療、官公庁など「データを社外に出せない」業界がたくさんあります。これまでAIコード支援を使いにくかった分野です。
Mellum2なら、自社内に閉じて動かせます。情報漏えいの心配が減り、こうした業界でもAI活用が進みやすくなります。
ある製造業の社内システム担当者を想像してみてください。これまで「コードを外部AIに見せるのは禁止」と言われ、手作業を続けていたかもしれません。Mellum2なら、社内サーバーで安全に試せます。
また、Mellum2は無料です。たくさんのアクセスを処理してもAPIの利用料がかかりません。大規模なサービスを安く運用したい日本のスタートアップにも追い風です。
JetBrainsの開発ソフトは日本でも人気が高いです。普段使う道具の会社が出したAIという安心感も、導入のハードルを下げてくれます。
よくある質問(FAQ)
Q1. Mellum2は本当に無料で使えますか?
はい。Apache 2.0という公開ライセンスで、商用利用も無料です。ただし動かすためのパソコンやサーバーの費用は自分で用意します。
Q2. プログラミング初心者でも使えますか?
Mellum2は開発の部品として使う上級者向けの面が強いです。初心者がすぐ手軽に使うなら、まずはCopilotなどの完成されたサービスがおすすめです。
Q3. ChatGPTのように何でも答えてくれますか?
いいえ。Mellum2はコードに特化したAIです。雑談や一般知識より、コードを書く・直す・要約する作業が得意です。
Q4. 「6種類のモデル」はどう選べばいいですか?
続きを予測したいなら「Base」、指示に従わせたいなら「Instruct」、じっくり考えさせたいなら「Thinking」が目安です。用途に合わせて選びます。
Q5. なぜ初代より大きくなったのに速いのですか?
MoEという仕組みのおかげです。120億個すべてではなく、毎回必要な25億個だけを動かすため、賢さと速さを両立できています。
まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- JetBrainsが無料のコードAI「Mellum2」を公開した
- 12B MoE設計で、賢さを保ちつつ2倍以上速い
- 初代の「補完専用」から、本格的なアシスタントへ進化
- 自社サーバー内だけで動かせるのが最大の強み
- Claude CodeやCopilotとは役割が違い、組み合わせて使う
まずはHugging Faceの公開ページで、どんなモデルがあるかをのぞいてみるのが第一歩です。
参考文献
- Introducing Mellum2: A 12B Mixture-of-Experts Model by JetBrains(Hugging Face)
- Mellum2 Goes Open Source: A Fast Model for AI Workflows(JetBrains AI Blog)
- JetBrains open-sources Mellum2 to go where Claude Code can’t(The New Stack)
- JetBrains Releases Mellum2: A 12B MoE Model for Fast, Specialized Tasks(MarkTechPost)
- JetBrains open-sources Mellum 2, featuring 12B total parameters(Neowin)

