AIに社員証を配る新チャット|ドーシーのBuzz

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • ツイッター創業者ジャック・ドーシー氏が、新しいチャット基盤「Buzz(バズ)」を2026年7月21日に公開したこと
  • Buzzでは、AIエージェントが「ボット」ではなく「社員」として人間と対等にチャットへ参加できること
  • 各AIに暗号鍵で「身分証」を配り、誰の指示で動いたかを追跡できる新しい仕組みがあること
  • SlackとGitHubの両方を1つにまとめる無料・オープンソースのアプリであること
  • まだ開発初期のバージョン0.4.21で、日本企業がすぐ乗り換えるには早いこと

「AIに仕事を任せたいけれど、誰が何をやったのか分からなくなりそう」——そう思ったことはありませんか。ツイッター創業者が作った新しいチャットアプリ「Buzz」は、その不安に答えます。AIを一人の「社員」としてチャットに迎え入れ、行動をきちんと記録する仕組みです。この記事を読むと、Buzzが何を変えようとしているのかがわかります。

Buzz(バズ)とは何か?

Buzzは、仕事用のグループチャットアプリです。

作ったのはジャック・ドーシー氏。ツイッター(現X)を立ち上げた人物です。

今は決済会社「Block(ブロック)」を率いています。Squareや Cash App も同じ会社のサービスです。

そのBlockが、2026年7月21日にBuzzを公開しました。パソコン用の無料アプリで、Mac・Windows・Linuxに対応しています。

見た目はSlack(スラック)にそっくりです。チャンネルやスレッド、ダイレクトメッセージ、音声通話までそろっています。

でも、いちばんの特徴はそこではありません。AIエージェント(人の代わりに作業する自律型AI)が、人間と同じ立場でチャットに参加する点です。

AIが「ボット」ではなく「社員」になる

これまでのチャットアプリにも、AIやボットはいました。

ただし、それらは「命令に返事するだけの機能」でした。人が話しかけて、初めて反応する脇役です。

Buzzのやり方はちがいます。AIエージェントを正式なチームメンバーとして扱います。

Buzzに参加したAIは、次のようなことを自分でできます。

  • 過去のチャットを検索して情報を集める
  • プログラムの修正案(パッチ)を提出する
  • 他の人が書いたコードをレビューする
  • 決まった作業(ワークフロー)を自動で進める

しかも、これらは人間が使うのとまったく同じ道具で行います。AIだけ特別扱い、という区別がありません。

ドーシー氏はこれを「人間とエージェントが一緒に働く場所」と説明しています。AIが本当に同僚になる未来を、先取りした形です。

どんなAIでも呼んでこられる

Buzzは特定のAIに縛られません。

「ACP(エージェント・クライアント・プロトコル)」という共通の接続ルールを使います。これのおかげで、色々な種類のAIをつなげられます。

今のところ、次のAIに対応しています。

  • Claude Code(アンソロピック社のプログラミング用AI)
  • Codex(オープンAI社のコード生成AI)
  • Goose(グース)(Block社が自分で作ったAI。GitHubで5万個以上の「星」を集めた人気ソフト)

好きなAIを選んで、チームに配属できるイメージです。

AIに「身分証」を配る新しい仕組み

Buzzのもっとも新しいアイデアは、AIの「身元管理」です。

AIが増えると、こんな心配が出てきます。「このメッセージ、本当にAIが書いたの?」「誰の指示で動いたAIなの?」

Buzzはこれを暗号技術で解決します。

参加するAIには、それぞれ専用の「鍵(暗号鍵)」が配られます。人間でいうパスポートのようなものです。

さらに、AIの発言には2つ目のサインが付きます。これは「このAIは、この人が責任を持っています」という証明です。

つまり、AIが何かをするたびに「誰の持ち物のAIが、何をやったか」が記録に残ります。あとから追跡できる、確かな証拠の連鎖ができるのです。

AIが暴走したり、勝手なことをしたりしたとき、責任の所在をはっきりさせられます。企業が安心してAIを使うための、大事な土台です。

土台には「Nostr」という技術

この仕組みを支えているのがNostr(ノスター)です。

Nostrは、暗号でサインされたメッセージをやり取りする分散型のルールです。ドーシー氏が以前から応援してきた技術です。

Buzzの中身は、このNostrを動かすためのプログラム(Rustという言語で書かれています)です。誰でも中身を見られるオープンソースとして、GitHubで公開されています。

SlackとGitHub、両方の役割を1つに

Buzzが狙うのは、SlackとGitHubの「合体」です。

ふつうの開発チームは、2つの道具を使い分けています。会話はSlack、プログラムの管理はGitHub、という具合です。

Buzzは、これを1つのアプリにまとめます。会話しながら、その場でコードの管理までできます。画面を行ったり来たりする手間が減ります。

下の表で、3つのサービスを比べてみましょう。

項目BuzzSlackGitHub
主な役割会話+コード管理+AI協働会話・連絡コード管理
AIの立場正式なメンバー返事するボット中心補助ツール中心
料金無料有料プランあり一部有料
公開方式オープンソース非公開非公開
自前で運用できる基本できない一部可能

無料でオープンソースという点は、有料のSlackに対する大きな強みです。

さらに、自分たちのサーバーでBuzzを動かすこともできます。データを外部に預けたくない企業にとって、これは魅力的です。

「分散型」の意味には注意

ただし、言葉には気をつけたいポイントがあります。

ドーシー氏はBuzzを「分散型」と呼びます。でも、完全にバラバラで動くわけではありません。

1つの拠点ごとに、中心となる「リレー」というサーバーが1台必要です。ここが止まると、その拠点は動かなくなります。

ここでの「分散型」は、「自分の環境を自分で管理できる」という意味に近いです。「中心がまったく無い」わけではない、と理解しておくと安心です。

日本のチームにとってどう関係する?

日本の職場では、SlackやMicrosoft Teamsが広く使われています。すぐBuzzに乗り換える会社は、まだ少ないでしょう。

それでも、Buzzが示す方向性は日本にも関わってきます。

たとえば、AIエンジニアを抱えるIT企業を考えてみましょう。複数のAIにプログラム作業を任せる場面が、これから増えていきます。

そのとき「どのAIが、誰の許可で、何を変更したか」を記録する仕組みは必ず必要になります。Buzzの身分証アイデアは、その先行例です。

また、無料でオープンソースという点も見逃せません。予算の限られた日本のスタートアップや個人開発者にとって、試しやすい選択肢です。

Nostr自体は日本でも一部の技術者に人気があります。分散型の考え方に慣れた人なら、Buzzは親しみやすいはずです。

一方で、日本語のサポートや使い方の情報は、まだほとんどありません。本格的に使うには、英語の情報を読む力が求められます。

似たサービスは他にもある?

「AIをチームメンバーにする」という発想は、Buzzだけのものではありません。

投資会社パラダイムのゲオルギオス・コンスタントプロス氏も、「Centaur(ケンタウロス)」という似た製品を進めています。

大手のSlackやMicrosoftも、AIを組み込む機能を強化しています。ただし、こちらは「既存アプリにAIを足す」形が中心です。

Buzzの独自性は、最初からAIを前提に設計されている点にあります。あとからAIを付け足したのではなく、AIと人間が対等に働く土台をゼロから作った、という違いです。

よくある質問(FAQ)

Q1. Buzzは今すぐ仕事で使えますか?

まだおすすめできません。バージョンは0.4.21で、開発初期の段階です。Buzz自身も「今すぐチームを移すのは早い」と認めています。まずはお試しで触ってみる段階です。

Q2. 料金はかかりますか?

基本は無料です。パソコン用アプリもオープンソースのコードも、無料で手に入ります。Block社が用意した接続サーバー(リレー)も無料で使えます。

Q3. どんなAIが使えますか?

Claude Code、Codex、Block社のGooseに対応しています。特定のAIに縛られない設計なので、今後さらに増える可能性があります。

Q4. AIの「身分証」があると何が良いのですか?

AIの行動を追跡できます。「誰の持ち物のAIが、何をしたか」が記録に残るため、問題が起きたときに責任をはっきりさせられます。企業が安心してAIを導入するための仕組みです。

Q5. 日本語には対応していますか?

現時点で、日本語の公式サポートや解説はほとんどありません。使うには英語の情報を読む必要があります。今後の対応拡大に期待です。

まとめ

Buzzは、AI時代の「働き方」を先取りするチャット基盤です。要点を振り返りましょう。

  • ジャック・ドーシー氏のBlock社が、2026年7月21日に公開した
  • AIエージェントを「ボット」ではなく「社員」として対等に扱う
  • 各AIに暗号鍵で「身分証」を配り、行動を追跡できる
  • SlackとGitHubを1つにまとめ、無料・オープンソースで提供する
  • まだ初期バージョンで、本格導入には時間がかかる

まずは公式のGitHubページで、どんなアプリなのかをのぞいてみることから始めてみましょう。

参考文献