- 日立が2026年6月17日、OpenAIとの連携を本格化すると発表しました
- OpenAIのAIエージェント「Codex」で、古い基幹システムの刷新を進めます
- 日立が国内で支える基幹システムは、約1万5000にものぼります
- サイバー防衛の分野でもOpenAIの専用AIを活用します
- 「2025年の崖」と呼ばれる日本企業の大問題への、ひとつの答えになりそうです
あなたの会社で使っている業務システム、実は20年以上も前に作られたものではありませんか。日本企業の多くが、この「古いシステム」に頭を悩ませています。そんな中、日立がOpenAIと手を組み、最新AIで一気に解決しようとしています。何が変わるのか、やさしく解説します。
日立とOpenAIが連携を本格化、何を発表した?
2026年6月17日、日立製作所がOpenAIとの連携を本格化すると発表しました。
OpenAIは、ChatGPTを作った会社です。今回はそのAI技術を、企業の大きなシステム作りに本格的に使っていきます。
目的は、古くなった企業の基幹システムを新しく作り直すことです。これを「モダナイゼーション(システムの近代化)」と呼びます。
もうひとつの柱が、サイバー攻撃からシステムを守る「サイバー防衛」です。こちらにもOpenAIのAIを使います。
実はこの2社、急に組んだわけではありません。2025年10月には、世界規模のAIデータセンター拡大をめぐる覚書(MoU=協力の約束)をすでに結んでいました。今回はそれをさらに一歩進めた形です。
主役は「Codex」、古いコードを読み解くAIエージェント
今回の主役は、OpenAIのAIエージェント「Codex(コーデックス)」です。
AIエージェントとは、人間の指示を受けて自分で考えて作業を進めるAIのことです。Codexは、その中でもプログラム作りが得意な専門家タイプです。
「中身がわからないシステム」を見える化する
古いシステムには、ある困った特徴があります。何十年も改修を重ねた結果、もう中身が誰にもわからなくなっているのです。
これを業界では「ブラックボックス化」と呼びます。箱の中で何が起きているか、外から見えない状態です。
そこでCodexの出番です。Codexは、入り組んだ古いプログラムのコードを読み解きます。そして「このシステムは結局、何をするためのものか」という設計の意図を、目に見える形にしてくれます。
移行テストまでをひとつの流れに
日立がめざすのは、もっと先です。
古いコードの解読から、新しいシステムへの作り替え、そして正しく動くかどうかの移行テストまで。この一連の流れ全体を、AIを使ったやり方で確立しようとしています。
ある銀行の勘定系システムを想像してみてください。20年前の担当者はもう退職し、仕様書も残っていません。動いてはいるものの、誰も手を入れられない。そんなシステムにCodexが入り、中身を読み解いて新システムへの地図を描く。これが今回めざす世界です。
日立とOpenAIのエンジニアが二人三脚で動く
連携を支えるのが「FDE(Forward Deployed Engineers)」という仕組みです。
FDEとは、お客さまの現場に深く入り込んで一緒に開発を進めるエンジニアのことです。今回は日立とOpenAIの両社のFDEが連携して動きます。
OpenAIが持つCodexの解析力。日立が長年つちかってきたシステム開発のノウハウ。この2つを組み合わせる狙いです。
社内の体制も整えています。日立のモダナイゼーション事業を束ねる「Modernization CoE」が中核となります。CoEとは「専門家を集めた中核チーム」という意味です。
このAI活用の手法は、日立のサービス基盤「モダナイゼーション powered by Lumada(ルマーダ)」に組み込まれます。そして金融機関をはじめ、幅広い産業のお客さまに順次提供される予定です。
サイバー防衛にもOpenAIのAIを活用
今回の発表には、もうひとつ重要な柱があります。サイバーセキュリティです。
日立は、OpenAIの「Trusted Access for Cyber(TAC)」というプログラムの活用を検討しています。
これはシステムの弱点(脆弱性)を見つけ、直し、本当に直ったかを確かめるという一連の作業をAIで支える仕組みです。脆弱性とは、攻撃者に狙われやすいセキュリティ上の穴のことです。
古いシステムは、このセキュリティの穴が放置されがちです。だからこそ、刷新と同時に守りを固める意味は大きいのです。日立側ではセキュリティ専門組織「Cyber CoE」がこの取り組みを担います。
背景にある「2025年の崖」という日本の大問題
なぜ今、これほど大がかりな取り組みが必要なのでしょうか。背景には「2025年の崖」という言葉があります。
これは経済産業省が2018年の「DXレポート」で警告した課題です。
最大12兆円の経済損失という試算
レポートが鳴らした警鐘は、かなり深刻なものでした。
古いシステムを放置すると、2025年以降に最大で年12兆円もの経済損失が起きると試算されたのです。日本の国際競争力そのものが揺らぐ、という指摘でした。
その根拠のひとつが、システムの古さです。21年以上も動き続けている基幹システムが、2025年には全体の約6割を占めると見込まれていました。
古い言語を扱える人が足りない
もうひとつの深刻な問題が、人材不足です。
2025年には、IT人材が約43万人も不足すると予想されていました。特に「COBOL(コボル)」のような古いプログラミング言語を扱える技術者の減少が深刻です。
つくった人が引退し、直せる人もいない。だからシステムがブラックボックス化する。AIで中身を読み解く今回の取り組みは、この悪循環に切り込むものなのです。
他のSIerやコンサルとの違いは?OpenAIの世界戦略
実は、OpenAIが大企業向けにCodexを広げているのは日立だけではありません。世界中の大手企業と次々に手を組んでいます。
世界の大手7社がすでにパートナーに
OpenAIは2026年、Codexを企業に届けるためのパートナーを選びました。
顔ぶれは、アクセンチュア、キャップジェミニ、CGI、コグニザント、インフォシス、PwC、TCSなど。世界を代表するコンサルやシステム会社が並びます。
さらにOpenAIは「OpenAI Partner Network」という公式プログラムも始めました。1億5000万ドルを投じ、2026年末までに30万人の認定コンサルタントを育てる計画です。
日立ならではの強みはどこにある?
では、日立の立ち位置はどう違うのでしょうか。
世界の大手が「Codexをどう広く使ってもらうか」を競う中で、日立の武器は日本の基幹システムを支えてきた圧倒的な実績です。
金融機関の勘定系や社会インフラなど、止まると困るシステムを長年運用してきました。その現場感とCodexを組み合わせる点が、海外勢との違いになりそうです。
日本のユーザーや企業にどう関係する?
「大企業の話でしょう」と思うかもしれません。でも、私たちの生活にも関わってきます。
金融機関の勘定系システムが新しくなれば、新サービスが生まれやすくなります。銀行アプリの使い勝手が良くなる、といった形であなたに届くかもしれません。
中小企業にとっても無関係ではありません。今回の手法が広がれば、これまで高額だったシステム刷新が、もっと手の届く価格になる可能性があります。
そして、IT業界で働く人にとっては大きな転機です。AIが古いコードを読む時代に、エンジニアの役割は「書く人」から「AIを使いこなす人」へと変わっていきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. Codexを使うと、エンジニアの仕事はなくなりますか?
すぐになくなるわけではありません。AIが古いコードの解読を助けても、最終的な判断や設計は人が行います。むしろAIを使いこなせる人の価値が高まると考えられます。
Q2. 私が使っている銀行アプリにも影響しますか?
間接的に影響する可能性があります。銀行の裏側のシステムが新しくなれば、新サービスやアプリの改善につながりやすくなります。すぐに変わるわけではありませんが、長い目で見ればプラスです。
Q3. 中小企業でもこの仕組みを使えますか?
今回はまず金融機関など大きな顧客向けです。ただ、手法が確立して広がれば、将来的に中小企業向けのサービスにつながる可能性があります。
Q4. 「2025年の崖」はもう過ぎたのに、なぜ今なのですか?
2025年は警告された「節目の年」であって、問題が消えたわけではありません。古いシステムは今も多く残っており、課題はむしろ続いています。AIという新しい解決策が出てきた今こそ、取り組む好機なのです。
Q5. OpenAIと組んだ日立だけが有利になるのですか?
OpenAIは世界の大手企業とも連携しています。日立の強みは、日本の基幹システムを支えてきた実績です。海外勢とは違う土俵で力を発揮すると見られます。
まとめ
- 日立は2026年6月17日、OpenAIとの連携を本格化すると発表しました
- AIエージェント「Codex」で、ブラックボックス化した古い基幹システムを刷新します
- 両社のエンジニア(FDE)が二人三脚で開発を進めます
- 「Trusted Access for Cyber」でサイバー防衛も強化します
- 背景には、最大12兆円の損失が懸念された「2025年の崖」問題があります
- 日立の強みは、日本の基幹システムを支えてきた長年の実績です
古いシステムに悩むのは、あなたの会社だけではありません。まずは自社の業務システムが「いつ作られたものか」を一度確認してみることが、最初の一歩になりそうです。

