GPT-5.6が3兄弟に|AWSで料金5倍差の選び方

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

taolis.net X note Voicy YouTube
  • GPT-5.6は「Sol・Terra・Luna」の3つに分かれた、OpenAIの新しいAIファミリーです
  • 2026年7月13日から、AWSのAI基盤「Amazon Bedrock」で正式に使えるようになりました
  • 料金は出力で最大5倍の差。用途によってモデルを選ぶ時代になりました
  • コーディングAIのベンチマークで、最上位のSolが世界最高水準を記録しました
  • ただし今は米国リージョンのみ。日本リージョンにはまだ対応していません

AIのモデルが増えすぎて、どれを使えばいいのか迷ったことはありませんか?

OpenAIの最新モデル「GPT-5.6」は、あえて3つに分かれて登場しました。しかも2026年7月13日からは、AWS(アマゾンのクラウド)上でも使えるようになっています。

この記事を読めば、Sol・Terra・Lunaの違いと、あなたの用途に合う1つがはっきり分かります。

GPT-5.6の「3兄弟」って何?

OpenAIは2026年7月9日、新しいAIモデル「GPT-5.6」を発表しました。

これまでと違うのは、1つのモデルではなく3つのグレードに分かれている点です。

名前の付け方にもルールがあります。「5.6」は世代を表し、「Sol・Terra・Luna」はそれぞれのグレードを表します。3つは今後、別々に進化していきます。

面白いのは、その名前です。Solは太陽、Terraは地球、Lunaは月という意味です。

  • Sol(ソル=太陽):いちばん賢い最上位モデル。難しい作業や自律的なプログラミングが得意です
  • Terra(テラ=地球):性能と値段のバランス型。毎日の実務向けです
  • Luna(ルナ=月):いちばん速くて安いモデル。大量の処理に向いています

3つとも、共通の基本スペックを持っています。一度に読み込める文章の量(コンテキストウィンドウ)は約105万トークン、出力は最大12.8万トークンです。

ちなみにトークンとは、AIが文章を扱うときの最小単位のことです。日本語ならおよそ1文字が1〜2トークンにあたります。

料金は最大5倍差|どのモデルを選べばいい?

3つのモデルは、値段が大きく違います。

100万トークンあたりの料金(入力/出力)は、次のとおりです。

  • Sol:入力5ドル/出力30ドル(およそ750円/4,500円)
  • Terra:入力2.5ドル/出力15ドル(およそ375円/2,250円)
  • Luna:入力1ドル/出力6ドル(およそ150円/900円)

出力で比べると、SolとLunaでは5倍の差があります。だからこそ、用途に合わせて選ぶことが大切です。

Sol:難しい仕事をまかせたいとき

Solは、複雑な考えごとや長い作業を得意とします。

あるスタートアップのエンジニアが、自分でコードを書いて修正まで進める「AIエージェント」を作るとします。こうした自律型の開発には、いちばん賢いSolが向いています。

生物学やサイバーセキュリティのような、専門性の高い分析にも使われます。

Terra:毎日の実務にちょうどいい

Terraは、性能と値段のバランスが取れたモデルです。

OpenAIによると、Terraは1つ前の「GPT-5.5」と同じくらいの性能を、半分のコストで出せるといいます。

社内の問い合わせ対応や、日々流れる本番の処理には、このTerraがちょうどよい選択になります。

Luna:大量にさばきたいとき

Lunaは、いちばん速くて安いモデルです。

たとえば中小企業の担当者が、お客様からの問い合わせに答えるチャットボットを大量に動かすとします。1日に何万回も応答するような場面では、コストを抑えられるLunaが力を発揮します。

文章の要約や分類のような、軽くて数の多い作業にもぴったりです。

Amazon Bedrockで使えるって、どういうこと?

今回のニュースの中心は、この3つがAmazon Bedrockで正式に使えるようになったことです。

Amazon Bedrockとは、AWSが提供する生成AIの基盤サービスです。いろいろな会社のAIモデルを、AWS経由でまとめて使えるようにする仕組みです。

つまり、すでにAWSを使っている企業なら、新しく契約を増やさずにGPT-5.6を試せるということです。料金はOpenAIと直接契約したときと同じで、AWSの利用枠にそのまま算入されます。

うれしい機能もあります。同じ文脈を何度も繰り返して送るとき、その部分の料金が90%割引になる「プロンプトキャッシュ」に対応しています。

ただし注意点もあります。呼び出しには新しい「Responses API」だけが使え、従来の「Chat Completions API」には対応していません。

実際に試した検証記事では、Solの応答は約2.22秒だったと報告されています。速さも実用レベルです。

ライバルのClaudeやGeminiと比べてどうなの?

Amazon Bedrockには、もともとClaude(アンソロピック製)やGemini(グーグル製)も並んでいます。GPT-5.6は、そこに新しく加わった形です。

気になるのは実力の差です。プログラミングを自律的に進める力を測る「Terminal-Bench 2.1」というテストでは、次のような結果が出ています。

  • Sol Ultra(最大出力モード):91.9%
  • 通常のSol:88.8%
  • Claude Mythos 5:88.0%
  • GPT-5.5:88.0%

さらに、55の分野で長時間の作業をこなす「Agents’ Last Exam」では、Solが53.6点を記録しました。これはClaude Fable 5を13.1点も上回る数字です。

ただし、すべてで勝っているわけではありません。バグ修正の力を測る「SWE-Bench Pro」では、Fable 5が80%なのに対し、Solは64.6%にとどまりました。

つまり、モデルには得意・不得意があります。1つに決め打ちせず、作業の中身で選び分けるのが賢いやり方です。

日本のユーザーや企業にとって何が変わる?

ここで、日本の私たちにとって大事なポイントを整理します。

今回GPT-5.6が使えるのは、米国のリージョン(データセンターのある地域)だけです。Solはバージニア北部とオハイオ、TerraとLunaはそこにオレゴンが加わります。日本リージョンにはまだ対応していません

これは企業にとって、意外と重い問題です。機密データや個人情報を扱う業務では、日本国内で動くAIの方が安心だからです。

その点、Claudeは日本リージョンのBedrockで動かせます。だから、扱うデータが機密なら、いまはClaudeの方が導入のハードルが低いと言えます。

日本語そのものの性能はどうでしょうか。日本語のテスト「Nejumi Leaderboard 4」では、Gemini 3.1 Proが0.8430、Claude Opus 4.6が0.8394、GPT-5.2が0.8285と、大きな差はありません。

まとめると、日本の企業がすぐ本番で使うにはリージョン対応を待つ必要があります。ただし、検証や試作は今すぐ始められます。

よくある質問(FAQ)

Q. GPT-5.6は、前のGPT-5.5と何が違うの?

A. いちばんの違いは、3つのグレードに分かれたことです。最上位のSolは性能が上がり、中位のTerraはGPT-5.5相当の性能を半額で出せます。用途に合わせて選べるようになりました。

Q. 個人でも使えますか?

A. Amazon Bedrockは主に開発者や企業向けのサービスです。個人が手軽に使うなら、通常のChatGPTやOpenAIのAPIから触るのが分かりやすいでしょう。

Q. 日本語はちゃんと使えますか?

A. 使えます。日本語のベンチマークでも他社と僅差の実力です。ただし現状は米国リージョンでの利用となる点に注意してください。

Q. まずどのモデルから試すべき?

A. コストを抑えて感触をつかみたいなら、いちばん安いLunaがおすすめです。要約や分類など軽い作業で試し、物足りなければTerraやSolに上げていくとよいでしょう。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • GPT-5.6は「Sol・Terra・Luna」の3グレードに分かれた新ファミリーです
  • 2026年7月13日から、Amazon Bedrockで正式に使えるようになりました
  • 料金は出力で最大5倍差。用途でモデルを選ぶ時代です
  • コーディングAIのベンチでSolが世界最高水準を記録しました
  • ただし米国リージョンのみで、日本リージョンは今後の対応待ちです

まずは安いLunaで小さく試し、あなたの仕事に合うグレードを見つけることから始めてみてください。

参考文献