元Google CEOが卒業式で総ブーイング|AI発言に反発

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 元Google CEOのエリック・シュミット氏が、米アリゾナ大学の卒業式でAIについて語った直後、会場からブーイングを浴びました
  • 反発の理由は「AIによる雇用不安」「性的暴行をめぐる訴訟」「名誉学位への抗議」の3つが重なったものです
  • 米国では新卒IT系の失業率が7%前後に上昇し、卒業生の89%が「AIに仕事を奪われる」と不安を感じています
  • 同じ時期に別の大学でも「AIは次の産業革命」と述べた登壇者がブーイングされ、社会的反発が広がっています
  • 日本でも新卒採用や事務職の自動化が進みつつあり、若者の不安は人ごとではありません

「未来はもう決まっている。機械がやってくる。仕事は消える」。こう語った元Google CEOに、卒業式の会場は拍手ではなくブーイングで応えました。なぜ学生たちはAIの話にここまで怒ったのでしょうか。事件の経緯と、その背景にある「AIと仕事」のリアルな数字を、やさしく整理します。

卒業式で何が起きたのか

2026年5月15日(現地時間)、米アリゾナ大学(University of Arizona)の第162回卒業式が開かれました。

卒業生はおよそ1万人。その晴れの舞台で祝辞を述べる登壇者として招かれたのが、元Google CEOのエリック・シュミット氏です。

ところが、シュミット氏がAI(人間のように考えて作業する人工知能)について話し始めると、会場からブーイングが起こりました。

その声は一度ではおさまらず、スピーチが終わるまで断続的に続いたと報じられています。

ブーイングを受けたエリック・シュミット氏とは

シュミット氏は2001年から2011年までGoogleのCEOを務めた人物です。

その後も会長などを歴任し、米国のテクノロジー業界を代表する大物として知られています。

AI推進派の象徴的な存在でもあり、政府への政策提言にも深く関わってきました。

学生が反発した3つの理由

今回のブーイングは、ひとつの原因ではありません。次の3つが重なっていました。

  • AIへの不安:仕事が奪われることへの強い危機感
  • 訴訟問題:元交際相手から性的暴行などを訴えられている問題(2025年11月提訴)
  • 名誉学位への抗議:大学が彼に名誉学位を授与することへの反対署名が1,260筆以上集まっていた

学生団体は式の前から「登壇に反対」と声を上げ、観客にブーイングを呼びかけていたとも伝えられています。

シュミット氏は何を語ったのか

では、シュミット氏は実際にどんな話をしたのでしょうか。

彼はこう語りかけました。「君たちの世代には恐れがある。未来はもう書かれていて、機械がやってきて、仕事は蒸発し、気候は壊れ、政治は分断し、自分が作ったわけでもない混乱を引き継ぐのだ、と」。

そのうえで「その恐れは合理的だ」と認めました。

決して「心配いらない」と突き放したわけではありません。

むしろ「だからこそ、AIを恐れるのではなく、君たち自身がAIを形づくってほしい」と訴えたのです。

締めくくりはこうでした。「問題はAIが世界を形づくるかどうかではない。それは確実に起こる。問題は、君たちがそのAIを形づくれるかどうかだ」。

励ましのつもりの言葉でした。それでも、会場の空気は変わりませんでした。

なぜ学生はそこまで怒ったのか

ここで気になるのが、「励ましの言葉になぜブーイング?」という点です。

背景には、新卒世代が直面する就職市場の厳しい現実があります。数字で見てみましょう。

  • 米国の新卒向け求人は、2023年1月からおよそ35%減少
  • コンピューターサイエンス専攻の新卒(22〜27歳)の失業率は約7.0%、コンピューター工学は約7.8%
  • 2026年の卒業生の89%が「AIにエントリー職を奪われる」と不安(前年は64%)
  • 卒業生の67%が「給料が低くても安定した仕事を選ぶ」と回答

つまり学生にとってAIは、夢の技術である前に「自分の最初の仕事を奪うかもしれない相手」なのです。

たとえば、4年間プログラミングを学んできた学生を想像してみてください。

卒業を前に求人サイトを開くと、応募できる新人枠は数年前の3分の2に減っています。

面接では「その作業はAIで足りる」と言われ、内定の連絡はなかなか来ません。

そんな日々を過ごした直後の卒業式です。そこへ業界の大物が登場し、AIの話を始める。たとえ励ましでも、火に油を注ぐ形になってしまいました。

米ゴールドマン・サックスは、AIが米国で月あたり約1万6000人分の雇用を抑制しており、特にZ世代が打撃を受けていると指摘しています。

これは氷山の一角|広がる「AIへの反発」

実は、ブーイングを受けたのはシュミット氏だけではありません。

同じ5月、フロリダの大学の卒業式でも、登壇者が「AIは次の産業革命だ」と述べた瞬間、学生からブーイングが起きました。

世論調査の数字も、空気の変化をはっきり示しています。

  • 14〜29歳の若者でAIに「希望を感じる」と答えたのはわずか18%(ギャラップ調査)
  • 米国人の70%超が「AIの進化は速すぎる」と回答(エコノミスト/ユーガブ)
  • AIへの否定的な見方は3年前の34%から50%超へ上昇

AIを推進する側と、それを受け止める社会の間で、考え方が大きくずれてきています。両者の主張を整理すると、次のようになります。

論点AI推進派の主張反発する側の懸念
雇用新しい仕事が生まれる今ある入口の仕事が先に消える
スピード競争に勝つため急ぐべき社会の準備が追いつかない
主導権若者が形づくればよい決定権は一部の大企業にある

反発は気分の問題だけではありません。地域住民の反対で、2026年1〜3月にデータセンター(AIの計算を担う巨大施設)の建設中止が過去最多になったとも報じられています。

日本の学生・企業にとっての意味

これは遠い国の話でしょうか。残念ながら、そうとも言い切れません。

日本でも生成AIの利用が広がり、普及率は世界平均を超えたという調査があります。

事務作業や資料作成など、新人が任されてきた仕事ほど、AIに置き換えやすい領域です。

日本は新卒一括採用という独自の仕組みがあり、急な大量解雇は起きにくいといえます。

その一方で、企業が「新人を増やさずAIで回す」方向に進めば、採用の門は静かに狭まります。

就職活動を控える学生にとって、シュミット氏への反発は人ごとではない不安の表れだといえるでしょう。

大切なのは、恐れて立ち止まることではなく、AIを使いこなす側に回る準備を早めに始めることです。

よくある質問(FAQ)

Q1. ブーイングはAIの話だけが原因ですか?
いいえ。AIへの不安に加え、シュミット氏個人をめぐる訴訟や、名誉学位への反対署名も重なっていました。複数の不満が同時に噴き出した形です。

Q2. シュミット氏は学生を批判したのですか?
いいえ。むしろ「君たちの恐れは合理的だ」と認めたうえで、AIを自分たちで形づくってほしいと励ます内容でした。それでも反発を受けました。

Q3. なぜ新卒がAIの影響を強く受けるのですか?
AIは事務やプログラミングの基礎作業など、新人が担当してきた仕事を肩代わりしやすいためです。企業が「新人を増やさない」選択をしやすくなります。

Q4. 日本の学生も心配すべきですか?
過度に恐れる必要はありませんが、無関係でもありません。AIを学び、使いこなすスキルを身につけることが、これからの就職活動で強みになります。

Q5. AIへの反発は今後も続きますか?
世論調査では否定的な見方が増えており、当面は続くとみられます。企業にとって、AIへの社会の不信は無視できない経営リスクになりつつあります。

まとめ

  • 元Google CEOのシュミット氏が、アリゾナ大学の卒業式でAI発言中にブーイングを浴びた
  • 原因はAIへの雇用不安、訴訟問題、名誉学位への抗議の3つが重なったもの
  • 新卒IT系の失業率は約7%、卒業生の89%がAIによる失業を不安視している
  • 別の大学でも同様のブーイングが起き、AIへの社会的反発が広がっている
  • 日本でも事務職の自動化が進み、若者の不安は人ごとではない

まずは生成AIを実際に触り、「奪われる側」ではなく「使いこなす側」に回る一歩を踏み出してみましょう。

参考文献

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