GoogleがA24に121億円出資|AIで映画はどう変わる?

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • GoogleのAI部門「DeepMind」が、映画スタジオ「A24」に約121億円(7,500万ドル)を出資しました
  • お金だけの関係ではなく、AIの研究者が実際の映画制作現場に入り込むのが特徴です
  • 最初に作るのは、映像を自動生成するAIではなく「AI絵コンテ(ストーリーボード)」ツールです
  • 同じAI映画でも、LionsgateやNetflixとは狙いがまったく違います
  • 日本でも東宝や東映アニメがAI活用を進めており、映画づくりは大きな転換点にあります

「AIで映画を作る」と聞くと、少し身構えてしまう人も多いのではないでしょうか。ボタン一つで映像が出てくる、あの不気味な感じを想像するかもしれません。ところが今回のGoogleとA24の提携は、そのイメージとは正反対です。約121億円をかけて、AIが「映画監督の相棒」になろうとしています。この記事を読めば、その狙いと、私たちの映画体験がどう変わるのかがわかります。

Googleが映画スタジオA24に121億円を出資

2026年6月22日、大きなニュースが飛び込んできました。

GoogleのAI研究部門「Google DeepMind(グーグル・ディープマインド)」が、映画スタジオ「A24」に出資すると発表したのです。

金額は約7,500万ドル(日本円で約121億円)です。

A24は、映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』や『ミッドサマー』で知られる、こだわりの強い映画会社です。芸術性を大切にすることで、世界中に熱心なファンがいます。

今回の出資は、Google DeepMindにとって「映画スタジオへの初めての出資」でした。テック企業が映画づくりの内側に入る、象徴的な出来事です。

ちなみに、この契約は数年にわたる長期のものです。ただしGoogleは、A24が持つ過去の映画作品やデータを自由に使えるわけではありません。あくまで「一緒に新しい道具を作る」ための提携です。

何を作る?「AI絵コンテ」という発想

この提携で最初に作られるのは、意外なものです。

それは、文章から映像を丸ごと生み出すAIではありません。「AI絵コンテ(ストーリーボード)」を作るツールです。

絵コンテとは、撮影の前に「どんな画面にするか」をラフな絵で描いた設計図のことです。監督やスタッフが完成イメージを共有するために使います。

このツールがあれば、撮影を始める前に、AIが場面のイメージをすばやく描いてくれます。

すると、実際に高いお金をかけて撮影する前に、「この構図は違うな」「この流れはうまくいかないな」といった問題に気づけます。

A24の技術部門「A24 Labs」を率いるスコット・ベルスキー氏は、こう語っています。他社のAIは「映画を安く、速く作る道具」として売り込まれてきた、と。

そのうえで、今回のツールは「みんなが不安に感じる、あの指示を入れて作るタイプのAIとは似ても似つかないものになる」と強調しました。作り手を助けるための道具、という位置づけです。

なぜA24なのか|「安く速く」ではない狙い

Googleはなぜ、大作を量産する大手ではなく、こだわり派のA24を選んだのでしょうか。

専門メディアの分析によると、Googleの狙いは「映画を買うこと」ではありません。「映画の作り方そのものを学ぶこと」にあります。

優れた映画スタジオが、どんな順番で、どんな判断をして作品を仕上げるのか。その現場のノウハウは、お金を払って権利を買うだけでは手に入りません。

だからこそ、DeepMindの研究者がA24の制作現場に入り込みます。作り手が本当にほしい道具を、隣で一緒に作っていくのです。

身近な例で考えてみましょう。料理のレシピ本を買っても、一流シェフの手つきや味の決め方まではわかりません。厨房に入って隣で見て、初めて本物の技術が伝わります。今回の提携は、まさにそのアプローチです。

この現場のノウハウが、数年かけて積み重なっていきます。将来、DeepMindのAIツールが映画業界の標準的なインフラになるかもしれない、と見られています。

他社との違い|LionsgateやNetflixのAI戦略と比較

「AIと映画スタジオの提携」は、実はA24が初めてではありません。

ここ数年、大手スタジオが次々とAI企業と手を組んでいます。ただし、その狙いは会社ごとにかなり違います。

Lionsgate(ライオンズゲート)は、AI動画の会社「Runway」に出資しました。『ジョン・ウィック』などの自社作品を使い、AIで短編シリーズを直接作ろうとしています。つまり「コンテンツをAIで生み出す」路線です。ただ、この計画は権利の扱いなどで難航しているとも報じられています。

Netflix(ネットフリックス)は、俳優ベン・アフレックが立ち上げた制作技術の会社「InterPositive」を買収しました。こちらは、映像を作るというより制作の裏方を助ける道具に力を入れています。

この3社を並べると、違いがはっきりします。

  • Lionsgate:AIで作品そのものを生成する(いちばん攻めた路線)
  • Netflix:制作ツールを買収して社内で活用する
  • A24:作り手を助ける道具を、AI企業と一緒にゼロから作る

A24の立ち位置は、いちばん慎重で作り手寄りだと言えます。映像を丸ごとAIに任せるのではなく、あくまで人間の判断を助ける道具にこだわっているからです。

ハリウッドの反応|期待と不安が入り混じる

この提携に、映画業界はどう反応したのでしょうか。

実は、A24のファンからは心配の声も上がっています。芸術性を大切にしてきたスタジオが、AIに手を出すことへの戸惑いです。

「作り手を大事にするA24らしくない」と感じる人がいるのも自然なことです。

背景には、ハリウッド全体に根強い「AIへの不安」があります。俳優や脚本家は、自分たちの仕事や権利が奪われることを心配してきました。過去には大規模なストライキも起きています。

AIの学習にどんなデータが使われるのか。著作権はどうなるのか。作り手の創造性は守られるのか。こうした疑問は、まだ完全には解消されていません。

だからこそA24は、「安く速く」ではなく「作り手を助ける」という言葉を、くり返し強調しているのです。この提携が業界の不安をやわらげるのか、それとも新たな火種になるのか。今後の動きが注目されます。

日本への影響|東宝や東映アニメのAI活用と比べると

「これはアメリカの話でしょう?」と思うかもしれません。ですが、日本の映像業界も同じ流れの中にいます。

たとえば東宝は、コンサル大手のアクセンチュアと組み、キャラクターグッズの監修にAIを使い始めました。人気作品『ハイキュー!!』では、マンガ全巻をAIに読み込ませています。Tシャツのセリフが「何巻の何ページに出てくるか」まで自動でチェックできるそうです。

東宝は2025年10月に社内へAI推進の専門部署を新設し、2026年1月にはさらに体制を強化しています。

アニメ業界も動いています。東映アニメーションは、絵コンテ・彩色・背景といった制作工程にAIを取り入れる実験を進めています。今回A24が作ろうとしている「AI絵コンテ」と、方向性がよく似ています。

つまり、A24とGoogleの提携は、遠い海外のニュースではありません。日本の映画やアニメの現場でも、同じ変化がすでに始まっているのです。

私たちが数年後に観る映画やアニメは、その裏側でAIが下支えしているのが当たり前になっているかもしれません。

よくある質問(FAQ)

Q1. GoogleはA24の映画をAIで勝手に作れるようになるの?

いいえ。今回の提携は「映画制作を助ける道具」を一緒に作るものです。GoogleがA24の過去作品やデータを自由に使えるわけではない、と発表されています。

Q2. AI絵コンテって、普通のAI動画生成と何が違うの?

AI動画生成は、完成した映像そのものを作ります。一方でAI絵コンテは、撮影前の「設計図(ラフ画)」を作る道具です。あくまで人間の監督が判断するための下書き、というイメージです。

Q3. なぜGoogleは大手ではなくA24を選んだの?

作品の権利がほしいのではなく、「映画の作り方のノウハウ」を学びたいからです。作り手を大切にするA24の現場に入り込むことで、本当に役立つ道具を開発できると考えています。

Q4. 日本の映画やアニメにも関係あるの?

大いにあります。東宝はグッズ監修にAIを、東映アニメは絵コンテや背景制作にAIを使い始めています。日本でも映像づくりのAI活用は着実に広がっています。

Q5. 俳優や脚本家の仕事は奪われないの?

A24は「作り手を助ける道具」だと強調しています。ただ、業界全体ではAIへの不安が根強く、著作権や雇用への影響はまだ議論の途中です。今後のルールづくりが重要になります。

まとめ

今回のニュースの要点を振り返ります。

  • Google DeepMindが映画スタジオA24に約121億円を出資(2026年6月22日発表)
  • DeepMindの研究者がA24の制作現場に入り、一緒に道具を開発する
  • 最初に作るのは映像生成AIではなく「AI絵コンテ」ツール
  • Lionsgate(作品生成)やNetflix(制作ツール)とは狙いが異なる
  • 日本でも東宝・東映アニメがAI活用を進めており、映画づくりは転換点にある

まずは次にA24の映画を観るとき、その裏側でどんな新しい技術が使われているのか、想像しながら楽しんでみてはいかがでしょうか。

参考文献

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