ベゾスが400億円出資|AIで新材料を生むCuspAIとは

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • ジェフ・ベゾス氏が、生成AIで新材料を設計する英国スタートアップ「CuspAI(カスプエーアイ)」に出資します
  • 調達額は約400億円規模(4億ドル)で、企業価値は約4,000億円(26億ドル)に達します
  • CuspAIは「ほしい性能」を入力すると、AIがそれに合う材料の化学組成を提案してくれる会社です
  • 狙いはCO2回収・高性能電池・半導体など、地球規模の課題を解く新材料の発見です
  • 日本でも旭化成やNIMSが「マテリアルズインフォマティクス」で先行しており、世界の競争が一気に過熱しています

「新しい材料を見つけるのに、なぜ何十年もかかるのだろう?」と思ったことはありませんか。実は今、その常識がAIで崩れようとしています。アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が、わずか2年前にできたばかりの英国スタートアップに数百億円を投じると報じられました。この記事を読むと、AIが材料開発をどう変えるのか、そして日本にどう関係するのかがわかります。

何が起きたのか:ベゾス氏が400億円を投じる

2026年6月、大きなニュースが世界をかけめぐりました。

アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が、英国ケンブリッジのスタートアップ「CuspAI(カスプエーアイ)」への出資を決めたのです。

報道によると、今回の資金調達は約4億ドル(約400億円)規模です。

この調達によって、CuspAIの企業価値は約26億ドル(約4,000億円)に達するとされています。

ちなみにCuspAIは、2025年9月時点では企業価値が約5.2億ドルでした。わずか9か月で価値が4倍以上にふくらんだ計算です。

出資にはベゾス氏の投資会社「Bezos Expeditions」だけでなく、シリコンバレーの名門VC「クライナー・パーキンス」も加わっています。

なお、契約の合意書(タームシート)は署名済みですが、取引はまだ完全には成立していない段階だと報じられています。

CuspAIとは?「ほしい材料」をAIが設計する会社

CuspAIは、2024年に設立されたばかりの会社です。

やっていることをひとことで言うと、生成AIを使って、世の中にまだ存在しない新しい材料を設計することです。

仕組みは「材料の検索エンジン」

CuspAIのプラットフォームは、材料版の検索エンジンのようなものです。

使う人は「こういう性能がほしい」と入力します。

すると、AIがその性能を実現するための化学組成(材料を作る成分の組み合わせ)を生成してくれます。

さらに、生成AIと分子レベルの物理シミュレーションを組み合わせて、その材料が本当に使えるかを検証します。

これにより、従来は数十年かかっていた材料開発を「数か月」に短縮できるといいます。

創業者とアドバイザーが超豪華

創業者の一人は、量子コンピュータのユニコーン企業を育てたチャド・エドワーズ氏です。

もう一人は、AI研究の第一人者であるマックス・ウェリング教授です。マイクロソフトの主席研究員やクアルコムの技術担当VPを務めた人物です。

さらにアドバイザーには、ノーベル賞も受賞した「AIのゴッドファーザー」ジェフリー・ヒントン氏や、Metaで活躍したヤン・ルカン氏が名を連ねています。

まさに、AIと科学のスター選手が集まった会社なのです。

何のための材料?CO2回収から半導体まで

CuspAIが最初に狙うのは、CO2(二酸化炭素)を回収する材料です。

空気中のCO2を効率よくつかまえる「多孔質材料(スポンジのように穴の多い材料)」を、安く大量に作れるようにすることを目指しています。

地球温暖化対策として、CO2回収はとても注目されている分野です。

ただ、応用先はそれだけではありません。

  • より高性能な電池:電気自動車やスマホの電池をもっと長持ちさせる材料
  • 強力な半導体:AIの計算を支えるチップの性能を上げる材料
  • 「永遠の化学物質」の分解:環境に残り続けて健康被害が心配されるPFASなどを分解する分子

つまりCuspAIは、地球規模の課題を「新しい材料の力」で解こうとしているのです。

身近な例で考えてみる

たとえば、ある電池メーカーの開発者を想像してみてください。

これまでは「この成分とあの成分を混ぜたらどうなるか」を、実験室で1つずつ試していました。1つの候補を試すのに数週間かかることもあります。

CuspAIのようなAIを使えば、まず画面上で何千もの候補を一気に評価できます。

そして「これは有望」というものだけを実験室で確かめればよくなります。

開発者の時間とコストが、大きく節約できるわけです。

競合・類似サービスとの違い

AIで材料を発見する取り組みは、CuspAIだけではありません。実は世界の巨大IT企業も参入しています。

グーグルとマイクロソフトの取り組み

グーグル・ディープマインドは「GNoME(ジノーム)」というAIを開発しました。

このAIは、なんと220万種類もの新しい結晶構造を発見しました。従来なら800年分の研究に相当するといわれています。

マイクロソフトも「MatterGen(マタージェン)」というAIを発表し、米国の国立研究所と組んで材料探索を進めています。

注目のスタートアップたち

スタートアップも続々と登場しています。

  • Periodic Labs:元OpenAI幹部とGNoME共同開発者が立ち上げた会社
  • XtalPi:自動実験ラボとAIを組み合わせる「フライホイール」型の会社

CuspAIの特徴は、こうした大手や他社の中でも「CO2回収」という社会課題に明確に的をしぼっている点です。

さらに、ヒントン氏やルカン氏といった世界最高峰のアドバイザー陣を抱えていることも、投資家からの期待を集める理由になっています。

ちなみに、AIによる材料発見の市場規模は2025年に約20億ドルでした。2034年には約179億ドルまで成長すると予測されています。年率28%という急成長です。

日本市場への影響:日本も「材料AI」で先行している

「海外の話でしょ?」と思うかもしれません。でも、日本はこの分野でむしろ先行しているのです。

日本では、AIで材料を開発する取り組みを「マテリアルズインフォマティクス(MI)」と呼びます。データとAIを使って材料開発を効率化する手法のことです。

旭化成やNIMSの実績

たとえば旭化成は、2018年からマテリアルズインフォマティクスに力を入れてきました。

その結果、従来は数年かかっていた材料開発を、半年で行うことに成功しています。

また、国の研究機関であるNIMS(物質・材料研究機構)も大きな役割を担っています。

NIMSは旭化成・三菱ケミカル・三井化学・住友化学と連携し、少ない実験回数で高い予測精度を出すAI技術を開発しました。

さらに最近では、複数の自律型AIが自分たちで連携して材料研究を進める仕組みにも取り組んでいます。

日本にとってのチャンスと課題

日本は素材産業がもともと強い国です。化学・電池・半導体材料で世界トップクラスのメーカーが多くあります。

つまり、AIと組み合わせれば大きな武器になります。

一方で、CuspAIのように数百億円を一気に集めるスタートアップは、日本ではまだ少ないのが現状です。

世界の資金とスピードにどう追いつくかが、これからの課題といえるでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. CuspAIはもう商品を売っているのですか?

まだ研究開発の段階が中心です。最初の狙いはCO2回収用の材料で、これから本格的に社会実装が進む見込みです。新しい材料が実際に製品になるまでには、もう少し時間がかかると考えられます。

Q2. なぜベゾス氏は材料スタートアップに出資するのですか?

ベゾス氏は気候変動対策に強い関心を持っており、過去にも環境関連に多額の資金を出しています。CO2回収などに使える新材料は、地球規模の課題解決と大きなビジネスの両方につながる可能性があるためだと考えられます。

Q3. AIが設計した材料は本当に安全なのですか?

AIはあくまで「候補」を提案する役割です。実際に使う前には、物理シミュレーションや実験で安全性や性能を検証します。人間のチェックを経て初めて実用化される流れは変わりません。

Q4. 日本企業はこの流れに乗れますか?

すでに旭化成やNIMSなどが先行しています。日本は素材産業が強いので、AIをうまく取り入れれば十分に戦えます。ただし、資金調達のスピードや規模では海外に差をつけられている面もあります。

まとめ

今回のニュースのポイントを振り返ります。

  • ジェフ・ベゾス氏が、生成AIで新材料を設計する英国CuspAIに約400億円を出資する
  • これによりCuspAIの企業価値は約4,000億円に達し、9か月で4倍以上に成長
  • CuspAIは「ほしい性能」を入力すると材料の組成を提案するAIを開発
  • 狙いはCO2回収・電池・半導体など地球規模の課題解決
  • 日本でも旭化成やNIMSがマテリアルズインフォマティクスで先行している

AIによる材料開発は、これから数年で一気に身近になりそうです。まずは「日本の素材メーカーがAIで何を生み出すか」に注目してみてください。

参考文献

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