- AnthropicがClaudeの「価値観(答え方のクセ)」を大規模に調査しました
- 約31万件の会話を分析し、AIの性格を4つのものさしで整理しています
- 同じClaudeでも、モデルの種類によって性格がハッキリ違いました
- 使う言語でも答え方が変わり、日本語は「偏りが小さめ」でした
- AIの「見えない性格」を測る動きは、企業のAI選びにも関係します
いつも使っているAIに、なんとなく「性格」を感じたことはありませんか。
やさしく励ましてくれるAIもあれば、ズバッと指摘してくるAIもあります。
その「性格の違い」を、Anthropic(アンソロピック)が約31万件の会話で数値化しました。しかも、使う言語で答え方が変わることまでわかったのです。この記事を読むと、その調査の中身と、私たちへの影響がわかります。
そもそも何が発表されたの?
Anthropicは、自社のAI「Claude(クロード)」の価値観を調べた研究を公開しました。発表は2026年7月です。
分析した会話は、309,815件にのぼります。2026年5月の2週間に集めた、20の言語のやりとりが対象です。
調べたのは3つのモデルです。Sonnet 4.6、Opus 4.6、Opus 4.7の3種類を比べました。
ここでの「価値観」とは、AIが答えるときに大切にしているクセのことです。たとえば「まず励ますか」「まず正確さを優先するか」といった方針の違いを指します。
この研究は、以前あった「Values in the Wild」という調査の続きにあたります。前回は約70万件の会話から始め、AIが持つ価値観を分類していました。
AIの「性格」を測る4つのものさし
Anthropicは、たくさんの価値観を4つの対立軸に整理しました。1つの軸には、正反対の2つの方向があります。
①尊重 vs 慎重です。ユーザーの好みに合わせるか、それとも責任を持って慎重に導くか、という違いです。
②温かさ vs 厳格さです。前向きに励ますか、それとも正確さや透明性を優先するか、という違いです。
③深さ vs 簡潔さです。ニュアンスや批判的な視点を大事にするか、それとも短くまとめるか、という違いです。
④素直さ vs 実行です。正直さを見せるか、それとも結果を出すことを優先するか、という違いです。
ちなみに、この4つのものさしで説明できるのは、価値観のばらつきの約15%だけでした。残りは会話の内容や相手によって変わるため、AIの性格は思ったより「状況しだい」だとわかります。
モデルごとに性格がハッキリ違った
同じClaudeでも、モデルによって性格の出方が違いました。3つのモデルを見てみます。
Sonnet 4.6は「温かい相談相手」タイプ
Sonnet 4.6は、尊重・温かさ・簡潔さが強く出ました。
ユーザーの考えを肯定し、ユーモアを交えて答える傾向があります。相手を否定せず、そっと安心させるような答え方です。
Opus 4.6は「要点を突く実務家」タイプ
Opus 4.6は、厳格さ・尊重・簡潔さが目立ちました。
ムダな前置きを省き、まっすぐ本題に入ります。話を広げすぎず、聞かれた範囲でキッチリ答えるタイプです。
Opus 4.7は「率直な参謀」タイプ
Opus 4.7は、慎重さと深さがとくに強く出ました。
まちがった前提には反論し、聞かれなくてもリスクを指摘します。自分の考えの理由を説明し、限界やミスも正直に認める傾向があります。
使う言語で答え方が変わる?日本語は「偏り小さめ」
おもしろいのは、同じAIでも言語によって答え方が変わった点です。
ヒンディー語やアラビア語では、温かい答えが多くなりました。ていねいな言葉や励ましが増える傾向です。
反対に、英語やロシア語では厳格な答えが多くなりました。前提を疑ったり、証拠を求めたりする場面が増えます。
細かく見ると、率直にミスを認めやすいのはオランダ語でした。結果を優先して実行に動きやすいのはインドネシア語です。
そして日本語は「偏りが小さめ」、つまり最もクセの少ない、中立的な答え方でした。
Anthropicが挙げた例を想像してみてください。同じ事業計画を、ヒンディー語で相談した人とロシア語で相談した人がいます。2人は、同じAIから少し違う印象の答えを受け取るかもしれないのです。
なぜこの調査が重要なの?他社との違い
これまでAIの性格は、訓練で「こう育てよう」と方向づけることはできました。しかし、実際にどう振る舞っているかを正確に観察するのは難しかったのです。
Anthropicはこう述べています。「Claudeは毎日、何百万もの会話で価値観を表現している。これまでそれは、訓練で形づくれても、確かめる方法がなかった」。今回の調査は、その「答え合わせ」にあたります。
似た動きは他社にもあります。OpenAIは「Model Spec」という設計図を公開し、モデルがルールをどれだけ守れたかを数値で測っています。GPT-5シリーズでは達成率が80%台まで上がったと報告されています。
ただしアプローチは少し違います。OpenAIが「理想の設計図と達成率」を示すのに対し、Anthropicは「実際の会話から性格を観察する」やり方をとりました。どちらもAIの中身を見えるようにする、透明化の取り組みだと言えます。
Anthropicは、AIの性格のクセを見つけて調整する「ペルソナ・ベクトル」などの研究も進めています。AIの性格を測り、必要なら直す。その土台づくりが本格化しています。
日本のユーザー・企業にとって何が変わる?
日本語が「偏り小さめ」だったことは、日本の私たちに関係する話です。
たとえば、日本語で悩みを相談する人を考えてみましょう。極端に甘やかされることも、冷たく突き放されることも少なく、比較的フラットな答えが返ってきやすいと考えられます。
企業にとっても見逃せません。海外拠点でAIを使う会社では、同じ質問でも国ごとに答えのトーンが変わる可能性があります。多言語でAIを導入するときは、言語ごとの答え方のクセを確認しておくと安心です。
モデル選びも実用的なヒントになります。やさしく寄り添う接客ならSonnet 4.6、リスクを厳しくチェックしたい業務ならOpus 4.7、というように、性格で使い分ける発想が持てます。
もちろん、Claudeは日本でも利用できます。用途に合わせて性格を選ぶ時代が、少しずつ現実になってきました。
この調査の限界も知っておこう
今回の研究には、まだ課題も残っています。Anthropic自身がそれを認めています。
1つ目は、価値観のラベル付けをClaude Sonnet 4.6自身が担当した点です。調べる側と調べられる側が同じ家系のため、完全に偏りを消せたとは言い切れません。
2つ目は、原因がわからないことです。言語による違いが、学習データの量のせいか、文化の違いか、設計の意図かは特定できていません。
3つ目は、この違いが「良いことなのか悪いことなのか」も、まだ判断できていない点です。結果は慎重に受け止める必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q. AIに本当に「性格」があるのですか?
人間のような心があるわけではありません。ただ、答え方には一定のクセがあり、それを性格のように測れることが今回わかりました。
Q. 日本語が「偏り小さめ」なのは良いことですか?
一概には言えません。中立的で使いやすいとも取れますが、Anthropicも「良し悪しはまだ判断できない」としています。
Q. モデルによって性格が違うと、どう困りますか?
同じ質問でも、返ってくる答えのトーンが変わります。用途に合わないモデルを選ぶと、期待とズレる可能性があります。
Q. この調査で私のチャット内容は見られたのですか?
Anthropicはプライバシーを守る分析ツールを使い、匿名化した会話を対象にしたと説明しています。個別の中身をそのまま読む方式ではありません。
Q. 他のAI会社も同じことをしていますか?
はい。OpenAIは「Model Spec」で理想の振る舞いと達成率を公開しています。各社がそれぞれの方法で透明化を進めています。
まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- Anthropicが約31万件の会話でClaudeの価値観を調査した
- AIの性格は「尊重・温かさ・深さ・素直さ」など4つの軸で整理された
- Sonnet 4.6は温かく、Opus 4.7は率直と、モデルで性格が違った
- 言語でも答え方が変わり、日本語は偏りが小さめだった
- 原因や良し悪しはまだ不明で、今後の研究課題として残っている
まずは、あなたが使うAIの「答え方のクセ」を意識して、用途に合うモデルを選んでみましょう。


