- Claude Scienceは、科学者向けの新しいAI研究環境です
- 60種類以上の科学データベースを最初から使えます
- ノーベル賞学者ジョン・ジャンパー氏がAnthropicに移籍しました
- Google・OpenAIとの「創薬AI三つ巴」が始まりました
- 有料プランで使え、日本の製薬会社にも大きく関係します
「AIが科学者の代わりに実験を進めてくれる」。そんな未来が、もう始まっています。Anthropic(アンソロピック)が発表したClaude Scienceは、研究のバラバラな作業を1つにまとめる新しい道具です。この記事を読めば、何ができて、日本にどう関係するのかがわかります。
Claude Scienceとは?ノーベル賞学者も動いた新AI
Claude Scienceは、2026年6月30日にAnthropicが発表した科学研究専用のAIアプリです。
ひとことで言うと「研究者のためのClaude Code」です。
Claude Code(プログラマーの作業を自動でこなすAI)が有名ですよね。その科学版だと考えるとわかりやすいです。
研究者は、論文を読んだり、データを分析したり、グラフを作ったりします。今まではバラバラのソフトを行き来していました。
Claude Scienceは、それらを1つの画面にまとめて自動化します。ざっくりした指示を出すだけで、AIが最後まで作業を進めます。
この発表の少し前、大きなニュースがありました。ノーベル賞学者のジョン・ジャンパー氏が、GoogleからAnthropicへ移籍したのです。
ジャンパー氏は、タンパク質の形を予測するAI「AlphaFold(アルファフォールド)」を作った人です。この功績で2024年のノーベル化学賞を受けました。
約9年勤めたGoogle DeepMindを離れる決断でした。この移籍のニュースが出た後、Google親会社の株価は約7%も下がったと報じられています。
何ができる?主な5つの機能
Claude Scienceの中身を、やさしく5つに分けて見ていきます。
1. 60種類以上のデータベースを最初から使える
ゲノム(生き物の設計図)やタンパク質の巨大なデータベースが、最初からつながっています。
UniProtやPDBなど、研究者がよく使う60以上の専門ツールを、探さずにすぐ使えます。
2. AIが自分でチェックする「レビュアー機能」
Claude Scienceには、答えを見直す専用のAIがいます。
引用や計算にまちがいがないかを確認し、自分で修正します。人間のダブルチェックに近い働きです。
3. タンパク質や分子をそのまま表示
3Dのタンパク質構造や化学構造を、画面にそのまま描いてくれます。
文字だけでなく、目で見て理解できるのがうれしいポイントです。
4. あとから追える「再現性」の記録
グラフを1つ作るたびに、使ったコードや手順、会話の履歴をすべて保存します。
数か月後でも「この結果はどう作ったのか」を正確にたどれます。科学ではこの再現性がとても大切です。
5. 大きな計算も自動で管理
重い計算が必要なときは、クラウドのGPU(高速計算チップ)を自動で借りて動かします。
1台から数百台まで、規模に合わせて広げられます。
具体的な活用シーン|すでに使われている3つの例
Claude Scienceは発表と同時に、実際の研究現場で使われ始めています。
ある創薬企業Manifold Bioでは、新しい実験で狙うべきターゲット候補をAIが選ぶ作業に使いました。安全性などの基準に照らして絞り込んだそうです。
アレン研究所のジェローム・ルコック氏は、約20個の自作機能を組み合わせました。その結果、論文レビューの執筆時間を約2年から数か月へ短縮できたと語っています。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のスティーブン・フランシス氏の例も印象的です。遺伝子のデータ解析にかかる時間を、これまでの約10分の1に縮められたといいます。しかも精度は別の検証で確認済みです。
どれも「AIが下働きをして、研究者は考えることに集中できる」という共通点があります。
競合との違い|Google・OpenAIとの三つ巴
実は、科学向けAIを出しているのはAnthropicだけではありません。
Googleは5月に「Gemini for Science」を発表しました。AlphaFoldなどの高性能モデルと、30以上のデータベースを組み合わせた道具です。
OpenAIも4月に「GPT-Rosalind」という、生物学に特化したAIを出しています。
つまり今、Anthropic・Google・OpenAIによる「創薬AIの三つ巴」が起きているのです。
ではClaude Scienceの強みは何でしょうか。それは「もっと賢いモデル」を売りにしていない点です。
賢さの競争ではなく、研究者が使いやすい環境づくりで勝負しています。バラバラな作業をなめらかにつなぐ、という発想です。
ちなみに製薬大手のノボ・ノルディスクは、AnthropicとOpenAIの両方と組んでいます。企業は1社に絞らず、見比べている段階と言えます。
この市場の伸びも見逃せません。AIを使った創薬の市場規模は、2026年の約40億ドルから、2035年には250億ドル超に育つと予測されています。
料金と使い方|誰が使える?
Claude Scienceは、今のところベータ版(お試し段階)です。
使えるのは有料プランの人だけです。Pro・Max・Team・Enterpriseの契約者が対象です。残念ながら無料プランでは使えません。
動く環境はmacOSとLinuxです。学校や非営利の研究機関には、割引の席も用意されています。
さらにAnthropicは、研究者を応援する「AI for Science」という枠も始めました。
最大50件のプロジェクトに、1件あたり最大3万ドルぶんのクレジットを提供します。応募の締め切りは2026年7月15日、活動期間は9月から12月までです。
日本のユーザー・企業への影響
「これは海外の話でしょう?」と思ったかもしれません。でも、日本にも深く関係します。
日本には、武田薬品や第一三共など、世界で戦う製薬会社があります。こうした会社の研究開発(R&D)部門と、Claude Scienceの相性はとても良いです。
創薬やゲノム研究は、まさにClaude Scienceが得意とする分野だからです。
日本の大学や研究室にとっても、意味は大きいです。高価なソフトをそろえなくても、AIが研究の下ごしらえをしてくれます。
一方で注意点もあります。今は英語での利用が中心で、対応OSもmacOSとLinuxに限られます。Windowsしか使わない研究室はすぐには使いにくいかもしれません。
それでも、日本語の解説記事が発表直後から次々に出ています。国内の関心の高さがうかがえますね。
よくある質問(FAQ)
Q1. Claude Scienceは普通のClaudeと何が違いますか?
普通のClaudeは会話が中心です。Claude Scienceは、科学データベースや計算環境とつながり、研究作業そのものを自動で進める点が違います。
Q2. 無料で使えますか?
いいえ。無料プランでは使えません。Pro・Max・Team・Enterpriseのいずれかの有料契約が必要です。
Q3. 研究者でなくても使えますか?
使うことはできますが、中身は科学研究に特化しています。専門のデータベースが多いため、研究者以外にはあまり向きません。
Q4. 日本語で使えますか?
Claude自体は日本語に対応しています。ただしClaude Scienceはベータ版で、対応OSもmacOSとLinuxに限られます。使う前に環境を確認しましょう。
Q5. AIが出した研究結果は信用できますか?
Claude Scienceは、結果を作ったコードや手順をすべて記録します。あとから人間が検証できる仕組みです。とはいえ最終的な確認は研究者自身が行う前提です。
まとめ
Claude Scienceのポイントを振り返ります。
- 2026年6月30日に発表された、科学者向けのAI研究環境です
- 60以上のデータベースを最初から使え、研究を自動化できます
- ノーベル賞学者ジョン・ジャンパー氏の移籍が話題を後押ししました
- Google・OpenAIとの創薬AI三つ巴が本格化しています
- 有料プラン限定で、日本の製薬・研究分野にも大きく関係します
まずは公式サイトで、あなたの研究分野にどう使えそうかをのぞいてみてください。
参考文献
- Claude Science, an AI workbench for scientists(Anthropic公式)
- Anthropic’s Claude Science bets on workflow, not a new model(TechCrunch)
- Claude Science is Anthropic’s newest flagship product(MIT Technology Review)
- Nobel laureate John Jumper is leaving DeepMind for rival Anthropic(TechCrunch)
- Anthropic releases Claude Science, aimed at researchers and pharma(STAT News)

