東京はAI都市35位|ソウル10位・上海8位

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • BCGが2026年7月27日に初の「Intelligent Cities Index 2026」を公開。39カ国61都市を評価
  • 1位はロンドン(85点)。2位ドバイ、3位ニューヨーク、4位ワシントンD.C.、5位アムステルダム
  • アジア勢は上海8位・北京9位・ソウル10位・シンガポール11位と上位に集中
  • 東京は35位(63点)、大阪は56位(52点)。どちらも4段階中3番目の「Emerging(新興)」
  • 日本が低い理由は技術力ではなく「使われているか」「効果が出ているか」を示せていない点にある

東京は世界の都市総合力ランキングで2位です。ところが「AIをうまく使えている都市」の評価では、いきなり35位まで落ちました。この差はどこから生まれたのでしょうか。世界61都市を並べた新しいランキングから、日本の弱点が驚くほどはっきり見えてきます。

BCGが世界初のAI都市ランキングを公開

2026年7月27日、大手コンサルティング会社のBCG(ボストン コンサルティング グループ)が新しい調査を発表しました。

名前は「Intelligent Cities Index 2026: How AI Shapes Urban Living」といいます。日本語にすると「インテリジェント・シティーズ指数2026 ─ AIは都市の暮らしをどう変えるか」です。

対象は39カ国・61都市。BCGがこのランキングを作ったのは今回が初めてです。

ポイントは「どの都市が最新技術を持っているか」を測ったのではない、という点です。測ったのは「その技術が住民や企業の役に立っているか」でした。

都市の選び方にも基準があります。GDP(その都市が生み出す経済の大きさ)と、AI都市としての注目度をもとに61都市が選ばれました。

何を測ったのか?5つの評価領域と35の指標

評価はいきなり点数をつけるのではなく、段階を踏んでいます。5つの領域を決め、そこから14の切り口に分け、最終的に35個の指標で採点する仕組みです。

配点の重みが物語ること

5領域と配点は次のとおりです。

  • 成果(25%):生活の質、経済的なチャンス、人とのつながり、行政との関わりやすさ
  • 導入(25%):技術が実際にどれだけ使われているか
  • 実現基盤(25%):人材、資金、ガバナンス(ルールや管理体制)
  • 業務の進め方(15%):行政組織が計画をどう実行に移しているか
  • 戦略(10%):将来に向けた方針づくり

ここに大事なヒントがあります。「戦略」の配点はたった10%しかありません。

つまり、立派な計画書を作っただけでは点が伸びない設計になっています。実際に使われて、住民の暮らしが良くなって、初めて75%分の配点に届くのです。

4段階の成熟度

採点結果は、わかりやすく4つの段階にまとめられました。

上からLeading(先行)、Accelerating(加速)、Emerging(新興)、Developing(発展途上)の順です。

順位表の細かい差だけでなく、「そもそもどの段階にいるか」がひと目でわかるようになっています。

1位ロンドンは85点、2位以下を5点引き離す

総合1位はロンドンでした。100点満点で85点です。

2位以下との差は約5点。僅差ではなく、はっきりとしたトップでした。

ロンドンが強かったのは「成果」の領域です。暮らしやすさから経済的なチャンスまで、住民が受け取る恩恵の部分で全都市トップの評価を得ています。

上位都市はそれぞれ得意分野が違う

面白いのは、上位都市が全部の分野で勝っているわけではない点です。

  • ロンドン(1位):住民への「成果」でトップ
  • ドバイ(2位):技術の「導入」でトップ
  • ニューヨーク(3位):「業務の進め方」でトップ
  • アムステルダム(5位):「実現基盤」でトップ
  • マドリード:「戦略」でトップ

BCGはこの結果を「すべての領域を制した都市は1つもない」とまとめています。つまり、正解の型は1つではないということです。

アジア勢はトップ15に5都市

トップ20には、日本以外のアジアの都市が次々に登場します。

上海が8位、北京が9位、ソウルが10位、シンガポールが11位、深圳が14位。トップ15に5都市が入りました。

6位ベルリン、7位サンフランシスコの直後に、中国の2都市が並んでいる形です。

東京35位・大阪56位という現実

では日本はどうだったのでしょうか。

東京は35位、総合63点。ロンドンとは22点差です。段階でいうと4段階中3番目の「Emerging(新興)」に分類されました。

大阪は56位、総合52点。61都市中の56位ですから、下から数えたほうが早い位置です。こちらも「Emerging」でした。

ソウルより25個下、という位置づけ

数字を並べると厳しさが際立ちます。ソウルは10位、東京は35位。その差は25ランクです。

日本の技術力が急に落ちたわけではありません。評価の物差しが変わったのです。

この指数が重く見るのは「AIやデジタルの仕組みが、住民にどれだけ届いて、どれだけ効果を出したか」でした。導入したかどうかではなく、使われたかどうかを問う設計です。

元記事を掲載したメディアも、日本の都市に必要なのは導入実績を並べることではなく、サービスの利用率・住民満足度・社会的な効果を数字で示すことだと指摘しています。

「使われていない便利機能」の問題

ある自治体が子育て支援のAIチャット窓口を作ったとします。24時間いつでも質問に答えてくれる仕組みです。

ところが、その存在を知っている保護者が全体の5%だけだったらどうでしょう。技術としては動いていても、暮らしは1ミリも変わりません。

今回のランキングは、まさにこの部分を採点しています。作った数ではなく、届いた量で評価されているのです。

他の都市ランキングと何が違う?

「東京が35位なんて信じられない」と感じた方もいるはずです。実は、他のランキングでは東京はもっと高い評価を受けています。物差しの違いを整理しておきましょう。

3つの指数を比べてみる

  • BCG Intelligent Cities Index 2026:61都市が対象。AI・デジタルの成果を重視。1位ロンドン、東京35位
  • IMD Smart City Index 2026:148都市が対象。住民が感じている使い勝手を調査。1位はチューリッヒで7年連続、2位オスロ、3位ジュネーブ、4位ロンドン、6位ドバイ
  • 森記念財団 世界の都市総合力ランキング(GPCI):経済・研究開発・文化・交通など総合力を評価。東京は2位で、初めてニューヨークを上回った

GPCIで2位、AI都市指数で35位。この落差が、今回のニュースの核心です。

東京は都市としての総合力は世界トップクラスです。一方で、AIを行政サービスや市民生活に組み込む部分では出遅れている、という構図が浮かび上がります。

評価軸が変わると順位も変わる

ちなみに、AI企業の集積を測る別の民間指数では、サンフランシスコが1位、ロンドンが2位、北京が3位という結果も出ています。

どのランキングも「唯一の正解」ではありません。ただし複数の指数を並べたとき、日本の都市が「AI活用」の軸でだけ順位を落とす傾向は共通しています。

日本の自治体・企業にとって何を意味するか

このランキングは遠い世界の話ではありません。日本国内のデータと重ねると、課題がくっきりします。

自治体の導入率に大きな段差がある

総務省の調査によると、生成AIを導入済みの自治体の割合は次のとおりです。

  • 都道府県:87.2%
  • 指定都市:90.0%
  • その他の市区町村:29.9%

大きな自治体は9割前後が導入済みです。ところが、それ以外の市区町村では3割にとどまります。

課題として上位に挙がったのは「取り組むための人材がいない、または不足している」と「AIが作ったものの正確性への不安」でした。

予算よりも先に、人と信頼が足りていないわけです。

現場で起きていること

人口3万人の町役場を想像してみてください。情報担当は1人、しかも税務システムの管理も兼任しています。

生成AIを入れたい気持ちはあっても、庁内ルールを作り、職員に研修をして、個人情報の扱いを整理する時間がありません。結果として「検討中」のまま年度が終わります。

一方で東京都のような大きな自治体は、専任チームを置いて次々に実装を進められます。この差が積み重なると、住民が受けられるサービスの質にも差が出てきます。

企業にとってのヒント

企業側にも同じ構図が当てはまります。社内でAIツールを契約したのに、実際に毎日使っている社員は一部だけ、というケースは珍しくありません。

BCGの評価軸をそのまま社内に持ち込むなら、見るべき数字は「導入したツールの数」ではありません。利用率と、業務がどれだけ楽になったかの実測値です。

BCGのマネージング・ディレクター兼パートナーであるAkram Awad氏は、AI活用への熱意は従来の技術ハブ都市に限られないと述べています。同社のパートナー兼ディレクターであるRami Mourtada氏も、変化の速さを踏まえると土台づくりには緊急性が必要だと指摘しました。

実際、調査ではアフリカ・アジア・中東の都市で生成AIの利用意欲がとくに高いという結果も出ています。順位は固定されたものではありません。

よくある質問(FAQ)

Q1. このランキングはどれくらい信頼できますか?

BCGは世界的な大手コンサルティング会社で、今回が初回の調査です。5領域・14の切り口・35指標という設計は公開されています。

ただし初回である点、対象が61都市に限られる点は押さえておくべきです。1つの指数だけで都市の優劣を決めつけるのは避けたほうがよいでしょう。

Q2. 東京が35位なのは技術力が低いからですか?

そうとは言い切れません。この指数の75%は「導入」「成果」「実現基盤」に配分されており、技術の有無より実際の利用と効果を重く見ています。

つまり、持っている技術ではなく、届いているサービスで評価された結果と考えられます。

Q3. 順位を上げるには何が必要ですか?

元記事の指摘に沿えば、鍵は3つです。サービスの利用率、住民の満足度、そして社会的な効果を数字で示すこと。

新しい仕組みを増やすより、すでにある仕組みを「使われる状態」に持っていくほうが評価につながります。

Q4. 大阪が56位なのはなぜですか?

公開情報では大阪の詳細な内訳までは示されていません。総合52点で「Emerging」段階という結果です。

東京の63点と比べても11点低く、61都市の中では下位グループにあたります。今後の詳細分析を待つ必要があります。

Q5. 個人の生活に影響はありますか?

すぐに影響が出るものではありません。ただし、行政手続きのオンライン化や問い合わせ対応の自動化が進むかどうかは、日々の待ち時間に直結します。

お住まいの自治体がどんなAIサービスを提供しているか、一度ホームページを確認してみると発見があるかもしれません。

まとめ

  • BCGが2026年7月27日、初の「Intelligent Cities Index 2026」を公開。39カ国61都市が対象
  • 1位ロンドン(85点)、2位ドバイ、3位ニューヨーク、4位ワシントンD.C.、5位アムステルダム
  • 上海8位、北京9位、ソウル10位、シンガポール11位、深圳14位とアジア勢が上位に
  • 東京は35位(63点)、大阪は56位(52点)で、ともに4段階中3番目の「Emerging」
  • 評価の75%は「導入」「成果」「実現基盤」。計画より実際の利用と効果が問われる設計
  • 国内でも生成AI導入率は都道府県87.2%に対し市区町村29.9%と大きな段差がある

まずは自分の職場や自治体で「導入したAIが本当に使われているか」を確かめるところから始めてみてください。

参考文献