Siriの頭脳がGeminiに|なぜApple自前を捨てた?

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • Siri(iPhoneの音声アシスタント)の頭脳が、Apple自前のAIからGoogleのGeminiに置き換わります
  • AppleはGoogleに年間およそ1000億円を払い、Siri専用の「1.2兆パラメータ」Geminiを借ります
  • 当初本命だったAnthropicのClaudeは、要求額が高すぎて見送られました
  • あなたの会話はAppleの暗号化基盤を通り、Googleには中身が渡らない設計です
  • 新しいSiriはiOS 26.4から段階的に登場し、フル機能はiOS 27(2026年9月)の見込みです

「Siriに聞いても、結局うまく答えてくれない」。そう感じたことはありませんか?そのSiriの“頭脳”が、まるごと別の会社のAIに入れ替わります。相手はGoogleのGemini(ジェミニ)。Appleが自前のAIをあきらめ、ライバルの力を借りるという歴史的な決断です。WWDC26(Appleの開発者向け発表会)を6月8日に控えた今、その全体像をやさしく整理します。

何が起きたのか:Siriの頭脳がGeminiになる

2026年1月、AppleはGoogleと複数年契約を結びました。

次世代Siriの“中身”を、GoogleのGeminiで動かすという内容です。

つまり、画面に出るのはこれまで通り「Siri」。でも、その裏で考えているのはGoogleのAIになります。

Appleはこれまで「自社製にこだわる会社」として知られてきました。チップもOSも自前です。そのAppleが、AIの心臓部だけはよそから借りる。ここに今回のニュースの衝撃があります。

5月29日には、WWDC26を前にAppleがGeminiの最終調整を進めているとも報じられました。発表は目前です。

なぜAppleは自前AIをあきらめたのか

理由はシンプルです。Apple自身のAIが、思うように育たなかったからです。

Appleは「Apple Intelligence」という名前で独自AIを進めてきました。しかし新しいSiriは何度も延期され、評価も伸び悩みました。

スマホに載せられる自前モデルは、せいぜい数十億パラメータ規模。AIの賢さの目安になる数字です。

一方でGoogleのGeminiは数兆パラメータ。差は歴然でした。自力で追いつくより、トップ級のAIを借りるほうが速い。Appleはそう判断したのです。

「1.2兆パラメータ」のGeminiを小さくして積む

今回Siriに使われるのは、Apple専用に作られた1.2兆パラメータのGeminiカスタム版と報じられています。Apple自前モデルのおよそ8倍の規模です。

ただし、巨大なAIをそのままiPhoneで動かすのは大変です。電池も処理も追いつきません。

そこでAppleは「蒸留(じょうりゅう)」という技術を使います。大きくて賢いAIの考え方を、小さなAIにまねさせて教え込む方法です。

これは、ベテラン職人の技を新人がそばで見て盗み、身軽に再現できるようになるのに似ています。賢さは残しつつ、軽くする工夫です。

あなたのプライバシーは守られるの?

「Googleに会話を全部見られるのでは?」と心配になりますよね。

Appleの説明では、そうはなりません。鍵はPrivate Cloud Compute(プライベートクラウドコンピュート)という、Apple独自の暗号化されたクラウド基盤です。

Siriの処理はこの基盤の中で行われます。Geminiが頭脳として働いても、Googleはあなたの個人データを取り出せない仕組みだとしています。

さらに契約では、Siriのやり取りをGoogleが将来のGemini学習に使うことも禁止されています。表向きの名前も「Siri」のまま。Googleのロゴは出ません。

ClaudeでもChatGPTでもなくGeminiを選んだ理由

実は、Appleの本命はGoogleではありませんでした。

当初優先されていたのは、AnthropicのClaude(クロード)だったと報じられています。AnthropicのオフィスはApple本社のすぐ近くにあり、有力候補でした。

決め手になったのは「お金」です。報道によると、契約額の目安はこう違いました。

  • Google Gemini:年間およそ10億ドル(約1000億円)
  • Anthropic Claude:年間およそ15億ドル(約1500億円)、しかも3年間で毎年倍増の条件

Anthropicの要求は、Appleにとって高すぎました。一方でGeminiは価格も性能も折り合いがつきました。

ちなみに、Apple Intelligenceでは以前からChatGPTも一部で使えます。今後のiOS 27では、App Storeから好きなAIをSiriの“脳”に選べる構想も語られています。AppleはAIを一社に縛らない、したたかな戦略を取っているのです。

いつ使える?iOS 26.4とiOS 27のロードマップ

新しいSiriは、一度に全部そろうわけではありません。段階的に登場します。

  • 第1段階(iOS 26.4・2026年春ごろ):画面の内容を理解する力、文脈の読み取り、メール要約、簡単なアプリ横断操作
  • 第2段階(iOS 27・2026年9月ごろ):ChatGPT級の本格的な対話、20回以上の連続会話、複雑な自動化

ただし注意点もあります。2月にはBloombergが、社内テストの不具合で一部機能がiOS 26.5やiOS 27へずれ込む可能性を報じました。

AppleはCNBCに「2026年内には出す」と説明しています。とはいえ、フル機能は秋まで待つ可能性が高そうです。

日本のiPhoneユーザーへの影響

気になるのは「日本でも使えるの?」という点ですよね。

新しいSiriは日本語を含む複数言語での展開が予定されています。Geminiは多言語に強いため、日本語の自然な会話品質が大きく上がると期待されています。

たとえば、こんな場面を想像してみてください。画面に表示された英語のメールを見ながら「これ要約して、返事の下書きも作って」と話しかける。新しいSiriなら、画面を理解してそのまま手伝ってくれます。

ただし、画面理解や個人文脈の機能が日本語で完全に動くかは、まだ正式には確定していません。日本語は敬語や文法が複雑で、ここが日本での評価を左右します。

もう一つ大きいのは、日本でも多くの人が毎日iPhoneを使う点です。「気づいたら一番身近なAIがGemini」という状況が、すぐそこまで来ています。

よくある質問(FAQ)

Q. Siriの名前やアイコンは変わりますか?
A. 変わりません。中身がGeminiになっても、表示は「Siri」のままです。Googleのロゴも出ません。

Q. 古いiPhoneでも新しいSiriは使えますか?
A. 高度な処理はクラウド側で行うため、対応機種は限られる見込みです。最新のiOSとApple Intelligence対応端末が前提になります。

Q. 会話の内容がGoogleに筒抜けになりませんか?
A. Appleの暗号化基盤を通すため、Googleは個人データを取り出せない設計だとされています。学習への利用も契約で禁止です。

Q. 今のApple IntelligenceのChatGPT連携はなくなりますか?
A. なくなる発表はありません。むしろiOS 27では、複数のAIから選べる方向だと語られています。

Q. 料金はかかりますか?
A. ユーザーが追加料金を払う発表は今のところありません。費用はApple側がGoogleに支払う形です。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • Siriの頭脳が、Apple自前AIからGoogleのGeminiに置き換わります
  • AppleはGoogleに年間約1000億円を払い、Siri専用の1.2兆パラメータGeminiを借ります
  • 本命だったAnthropic Claudeは、年1500億円・毎年倍増の条件で見送られました
  • 会話はApple独自の暗号化基盤を通り、Googleには中身が渡らない設計です
  • 登場はiOS 26.4から段階的、フル機能はiOS 27(2026年9月)の見込みです

まずはWWDC26(6月8日の基調講演)で、Appleが新しいSiriをどう見せるかに注目してみてください。

参考文献

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