- AIOps導入企業の情シス担当者110人を対象にした最新調査で、業務負荷が「減った」は75.4%
- 一方でAIの誤検知や誤動作を経験した人は66.4%、対応を「負担」と感じる人は89.0%に到達
- 削減できた業務トップ3はログの目視確認・監視レポート作成・深夜のアラート対応
- 新たな悩みは「責任の所在が不明確」68.7%・「AI判断根拠が不透明」55.2%・「制御を失う不安」53.7%
- Datadog・Dynatrace・Splunkといった主要AIOpsツールの違いと、日本企業が今すぐできる対策も解説
AIを入れたのに、なぜか仕事が増えた気がする──そんな声がIT現場で広がっています。2026年5月に発表された情シス担当者110人の調査で、AIによる業務削減を実感する一方、9割が「AIの誤動作対応が新たな負担」と答えました。何が起きているのか、データから読み解きます。
AIOpsとは? なぜ今こんな調査が注目されたのか
AIOpsの基本
AIOps(エーアイオプス)は、Artificial Intelligence for IT Operationsの略です。
システムのログやアラートをAIに監視させて、障害の予兆を見つけたり、対応を自動化したりする仕組みのことを指します。
これまで人が深夜に飛び起きてサーバーログを目視チェックしていた作業を、AIが代わりに見張ってくれる──そんなイメージです。
なぜ2026年5月の調査が話題になったのか
株式会社ボスコ・テクノロジーズが、AIOps導入済み企業の情シス担当者110人にアンケートを実施しました。
調査期間は2025年11月12日〜13日、結果は2026年5月12日にPR TIMESで公開され、5月27日にITmediaが詳報を掲載しています。
注目を集めた理由は明確で、「AIで楽になった」という導入側の期待と、現場が感じる「新しい負担」のギャップが具体的な数字で示されたからです。経営層と現場の温度差を可視化した、貴重なデータと言えます。
業務は本当に減ったのか──75.4%が「減った」と回答
業務負荷軽減の実態
まず良いニュースから紹介します。AIOps導入後の業務負荷について、75.4%が「減った」と回答しました。
内訳は「大幅に減った」が24.5%、「やや減った」が50.9%です。3人に2人以上が、何らかの形で楽になったと答えています。
具体的に減った業務トップ3
では、どんな業務が減ったのでしょうか。具体的な内容は次のとおりです。
- ログの目視確認作業:67.5%
- 定型的な監視レポート作成:61.4%
- 深夜・休日のアラート対応:53.0%
たとえば、ある中堅メーカーの情シス担当者は、毎朝出社後の2時間を「夜間アラートのログ確認」に充てていました。AIOps導入後はこの作業が15分程度に短縮され、本来やりたかったセキュリティ強化や新システム検討に時間を回せるようになっています。
属人化の解消や運用コスト削減を狙って導入する企業が増えており、調査でも導入目的トップは「IT運用の属人化を解消するため」59.1%でした。
AIが生んだ新業務──9割が「負担」と回答した中身
66.4%が誤検知・誤動作を経験
ここからが本題です。AIによる誤検知や誤動作を経験した人は66.4%に上りました。
「よくある」が25.5%、「ときどきある」が40.9%です。3人に2人が、AIが間違った判断をする現場に立ち会っています。
対応負担は89.0%が「ある」と回答
もっと深刻なのは、誤動作への対応を「負担」と感じる人が89.0%に達した点です。
「非常に負担」が35.6%、「やや負担」が53.4%。10人中9人が、AIの後始末で疲弊しています。
たとえば、AIが正常な通信を「異常」と判定して自動遮断してしまうと、担当者は急いで原因を調べて手動で復旧させる必要があります。さらに「なぜAIがそう判断したのか」を上司や顧客に説明する書類づくりまで発生します。
この「AIが生んだ後追い業務」は、海外ではworkslop(ワークスロップ)とも呼ばれはじめており、生産性向上の影に隠れた構造課題として議論が始まっています。
対応方法のトップ3
現場が取っている対策は次のとおりです。
- 事後検証(AIの判断ログを後から人がチェック):64.4%
- 手動停止・修正(AI動作を一時停止して人が対応):63.0%
- 事前確認(重要な操作前に人が承認):61.6%
つまり、自動化したはずなのに、結局「人がチェックする工程」が新しく組み込まれてしまっているわけです。
主要AIOpsツールを比較──Datadog・Dynatrace・Splunkの違い
新規にAIOpsを検討する企業のために、世界シェア上位3ツールの特徴を整理しました。
Datadog(データドッグ)
米Datadog社が提供するクラウド型統合監視サービスです。メトリクス・ログ・トレースをワンストップで扱える点が評価されています。
ログ検索機能が強く、SaaSやWebサービスを多用する企業に好まれます。一方、エージェント設定にやや手間がかかる点はデメリットです。
Dynatrace(ダイナトレース)
独自AIエンジン「Davis AI」を搭載し、障害の根本原因を自動で特定する機能で業界トップ評価を得ています。
大規模システムの依存関係を自動マッピングする能力に優れますが、ライセンス費用は高めです。エンタープライズ向けと言えます。
Splunk(スプランク)
2024年にCiscoが買収したログ管理の老舗です。すでに大量のログをSplunkに集めている企業にとっては、AIOps拡張がスムーズに進みます。
セキュリティ運用との親和性が高く、金融・公共機関での採用が目立ちます。
どれを選ぶべきか
ざっくり整理すると、こうなります。
- クラウドサービス中心で素早く立ち上げたい → Datadog
- AIによる根本原因分析を重視 → Dynatrace
- 既存のログ基盤を活かしたい → Splunk
ただし、どのツールを選んでも今回の調査が示す「AI誤動作の後追い負担」からは逃れられません。ツール選定と同じくらい、運用ルール設計が重要です。
なぜ「責任の所在」が曖昧になるのか
3つの不安要素
調査では、AI業務委託に心理的抵抗を感じる人が60.9%に上りました。具体的な不安は次のとおりです。
- 責任の所在が不明確:68.7%
- AI判断の根拠が不透明:55.2%
- 制御を失う懸念:53.7%
AIが障害を引き起こしたとき、責められるのはAIではなく担当者です。しかし、AIがどうしてそう判断したのかは説明できない──このジレンマが現場のストレスになっています。
経営層と現場の温度差
経営層は「AIで人手不足を解消できる」と期待します。一方で現場は「AIの監視という新しい仕事が増えただけ」と感じる構図です。
この温度差を埋めないまま導入を進めると、結局は離職やモチベーション低下につながります。今回の調査は、その警鐘とも読み取れます。
日本市場への影響──中小企業はどう動くべきか
日本特有の事情
日本では、情シス部門が1〜3人で運営される中小企業が多くあります。属人化が深刻で、担当者が退職すると業務が止まる──そんなリスクを抱える企業に、AIOpsは強力な解決策に見えます。
ただし、海外と異なり、日本企業の8割以上は監視ツールを「複数の製品の組み合わせ」で運用しているという別調査もあり、AIOps導入には統合の難しさがつきまといます。
中小企業が今すぐ着手すべき3つのこと
具体的に何をすればいいのでしょうか。
- 責任分担を文書化する:AIが判断する範囲と、人が最終承認する範囲を明文化する
- 誤動作ログを蓄積する:AIが何を間違えたかを記録し、運用改善のサイクルに乗せる
- 段階導入する:いきなり全業務に適用せず、深夜アラートなど影響範囲が小さい領域から始める
調査でも対策として「リスクの段階的軽減」を選ぶ企業が63.0%に達しており、いきなりフル自動化に踏み込まない慎重姿勢が広がっています。
よくある質問(FAQ)
Q1. AIOpsを導入すると、情シス担当者は不要になりますか?
いいえ。今回の調査でも、AIの誤動作対応や監視のために人手は引き続き必要です。むしろ「AIを正しく使いこなす担当者」の重要性は高まっています。
Q2. workslop(ワークスロップ)とは何ですか?
AIが生成した出力を人が後追いでチェック・修正・説明する作業のことです。生成AIブームに伴って欧米で2025年頃から議論され始めた概念で、AIOpsの誤動作対応も広い意味でworkslopに含まれます。
Q3. AIOps導入で失敗しないコツは?
「導入したら終わり」と考えないことです。AIの誤動作は必ず発生するため、誤動作ログを定期的に振り返り、判断ルールを継続的に改善する運用体制が欠かせません。
Q4. 中小企業でもAIOpsは使えますか?
使えますが、ツール選定が重要です。Datadogは月額数百ドル規模から始められる一方、Dynatraceは大規模向けで初期コストが高めです。自社の規模・予算に合うツールを慎重に選びましょう。
Q5. AIOpsとMLOpsはどう違いますか?
AIOpsはIT運用にAIを使う取り組み、MLOpsは機械学習モデルの開発・運用を効率化する取り組みです。守備範囲が異なるため、混同しないよう注意してください。
まとめ
今回の調査が示したポイントを振り返ります。
- AIOps導入で75.4%が業務負荷軽減を実感した一方、89.0%は「AI誤動作の対応が新しい負担」と回答
- 削減できた業務はログ確認・監視レポート・深夜アラート対応の3つが中心
- 新たな課題は「責任の所在不明確」「AI判断の不透明さ」「制御喪失への不安」の3点
- Datadog・Dynatrace・Splunkなど主要ツールはそれぞれ強みが異なる
- 日本企業、特に中小企業は段階導入と責任分担の文書化が成功の鍵
AIOps導入を検討する企業は、まず「責任分担ルール」を社内で議論することから始めてみてください。

