- 警視庁が2026年7月24日、検索結果を汚染する投資詐欺の新手口に注意喚起した
- 詐欺グループは企業や官公庁の「サイト内検索」を悪用し、公式ドメインに偽の評判を紛れ込ませる
- 汚染された検索結果をAIが読み込み、AI要約まで「詐欺ではありません」と答えてしまう
- SNS型投資詐欺の被害額は2025年だけで1274.7億円。前年比46.3%増と急拡大している
- 読者ができる自衛策と、サイト運営者が今日から打てる技術的な防御策を具体的に解説する
気になるサービス名を検索して、「詐欺ではありません」と出てきたら、あなたは安心しませんか。
その安心こそが、いま狙われています。警視庁が7月24日、検索結果とAI要約をまるごと汚染する詐欺の手口に警鐘を鳴らしました。仕組みと対策を、順番にほどいていきます。
警視庁が鳴らした警鐘:検索結果そのものが罠だった
警視庁サイバーセキュリティ対策課は2026年7月24日、公式Xで異例の注意喚起を出しました。
呼びかけの言葉はシンプルです。「検索結果のみを過信しないよう注意しましょう」。
きっかけは、SNS型投資詐欺のグループが使い始めた新しい手口でした。
被害者はたいてい、勧誘されたあとに一度は疑います。そしてグループ名やサイト名を検索して「本物かどうか」を確かめようとします。
詐欺グループは、その最後の確認作業を狙いました。
検索すると出てくるのは「○○は詐欺ではない」「素晴らしい」「儲かりました」といった肯定的な言葉ばかり。しかも表示されているのは、見覚えのある企業や官公庁のドメイン(サイトの住所)です。
疑いは消え、被害者はお金を振り込んでしまいます。
「サイト内検索スパム」という抜け道
攻撃者は、他人のサイトの検索窓を使う
今回使われたのは「サイト内検索スパム」と呼ばれる手法です。
多くの企業サイトには、記事や商品を探すための検索窓がついています。
ここに何か言葉を入れると、「〇〇の検索結果」というページが自動で作られます。このページには、入力した言葉がそのまま表示されます。
攻撃者はここに目をつけました。企業サイトの検索窓に「○○は詐欺ではない」と入力し、そのときのURLを大量に集めておくのです。
WordPressで作られたサイトなら、URLは「/?s=○○は詐欺ではありません」のような形になります。
外部からリンクを張ってGoogleに拾わせる
URLを集めただけでは、まだ誰の目にも触れません。
そこで攻撃者は、自分たちが用意した別のサイトから、そのURLへ大量のリンクを張ります。
検索エンジンのロボットはリンクをたどってページを巡回します。リンクが張られていれば、その検索結果ページも「実在するページ」として登録されてしまいます。
こうして、まったく無関係な企業のドメイン名と一緒に、「○○は詐欺ではありません」という文字列が検索結果に並びます。
企業側は何も悪いことをしていません。それでも自社のドメインが詐欺の宣伝看板として使われてしまうのが、この手口の厄介なところです。
検索エンジンの仕組みを悪用して不正な情報を目立たせる攻撃は、まとめて「SEOポイズニング」(検索結果への毒混入)と呼ばれています。サイト内検索スパムは、その一種です。
なぜAI要約まで一緒に騙されるのか
今回のニュースで最も新しいのは、被害が人間だけで終わらない点です。
ChatGPTやGoogleのAI要約は、質問を受けると裏側でWeb検索をかけます。そして上位に出てきたページを読み、内容をまとめて答えます。
つまりAIは、検索結果の上位が正しいという前提で動いています。
その前提が崩れたらどうなるか。答えは単純で、AIは汚染された情報をそのまま要約します。
しかもAIの答えには、検索結果のような「広告」「口コミサイト」といった手がかりが付きません。断定的な一文だけが返ってくるぶん、人はかえって信じやすくなります。
海外ではさらに深刻な事例が報告されています。「LLM電話番号汚染」と呼ばれる手口です。
攻撃者が偽のサポート電話番号を書いたページを大量にばらまくと、AIがそれを「公式窓口」として案内してしまいます。
実際、Perplexityに大手航空会社の予約番号を尋ねたところ、詐欺のコールセンター番号を「公式」として提示したと研究者が報告しています。GoogleのAI Overviewsでも同様の偽番号の表示が確認されました。
汚染のスピードも想像以上です。セキュリティ研究者のブルース・シュナイアー氏は2026年2月、個人サイトに作り話の記事を1本置いただけで、24時間以内にGoogleのAI要約とChatGPTがそれを事実として語り出したと報告しています。
そして、ここからが本当に怖い部分です。AIが答えた誤情報を誰かがブログに書き写すと、次のAIはそれを「複数のソースで確認できた情報」として学習します。嘘が自分で自分を裏づけていく循環が生まれるのです。
従来の詐欺サイトと何が違うのか
「偽サイトなんて昔からある」と思った方もいるでしょう。違いは「誰の信用を借りているか」にあります。
| 手口 | やり方 | 見破りにくさ |
|---|---|---|
| なりすましサイト | 本物そっくりの偽サイトを作る | URLをよく見れば気づける |
| 口コミ偽装 | レビューサイトに高評価を大量投稿 | 「サクラかも」と疑う人は多い |
| サイト内検索スパム | 実在企業の検索窓を使い、本物のドメインに偽情報を載せる | URLもドメインも本物。ほぼ見破れない |
| LLM電話番号汚染 | 偽の連絡先をばらまきAIに案内させる | AIの断定口調で信じてしまう |
なりすましサイトは、URLの綴りを確認すれば見抜けました。
ところがサイト内検索スパムでは、ドメインは正真正銘の本物です。「公式サイトに書いてあるのだから間違いない」という常識が、そのまま罠になります。
「怪しいURLを踏まない」という従来の防御が効かない。ここが決定的な違いです。
日本での影響:被害はすでに1274億円規模
この手口が日本で使われた背景には、SNS型投資詐欺そのものの急拡大があります。
警察庁の統計によると、2025年のSNS型投資詐欺の認知件数は9538件、被害額は1274.7億円。前年から件数で48.7%、金額で46.3%も増えました。
勢いは止まっていません。2026年2月末時点の特殊詐欺全体の被害額は593.8億円で、前年同期より269.0億円増加。そのうち214.4億円分がSNS型投資詐欺の増加分です。
被害は個人だけにとどまりません。
たとえば、地域で30年続く老舗メーカーを想像してみてください。ある日、取引先から「御社のサイトに投資話が載っているのですが」と電話が入ります。
調べてみると、サイト内検索のページが勝手にインデックスされ、詐欺グループの宣伝文句が自社ドメインで表示されている。被害者でありながら、加害者に見えてしまう状態です。
もう一つ、深刻なのは採用や商談の場面です。学生や取引先候補が社名をAIに尋ねたとき、汚染された情報を拾って「投資詐欺との関連が指摘されています」と答えたら、その誤解を解く機会は永遠に来ません。
日本語圏はもともと情報量が英語圏より少なく、少数の汚染ページでも検索結果全体に影響が出やすいと言われています。日本のサイトが狙われやすい構造的な理由が、ここにあります。
今日からできる対策
読者・投資を検討している人がやるべきこと
検索結果とAI要約は「参考意見」に格下げしてください。判断の根拠にしてはいけません。
そのうえで、公的な登録情報にあたるのが唯一の確実な方法です。
- 金融庁の「金融事業者一括検索機能」で、相手が登録業者かを確認する(2026年1月30日から運用開始)
- 金融庁が公表している「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等」のリストに載っていないか照合する
- 会社名でなく登録番号で検索する。番号は詐欺グループが偽装しにくい
- 少しでも迷ったら消費者ホットライン「188」に電話する
ちなみに、AIに聞くなら質問の仕方を変えるのが有効です。「○○は安全ですか」ではなく、「○○の金融商品取引業の登録番号と、その一次情報のURLを教えて」と尋ねてください。
出典URLを出させれば、そのリンク先が本当に金融庁なのかを自分の目で確認できます。
サイト運営者・企業の担当者がやるべきこと
自社サイトが踏み台にされていないか、まず調べましょう。
Google検索で site:自社ドメイン 詐欺 と入力するだけで、おおよその汚染状況がわかります。
そのうえで、次の対策を打ってください。
- サイト内検索の結果ページに
<meta name="robots" content="noindex,follow" />を入れ、検索エンジンに登録させない - 検索結果が0件のページは、noindexにするか404を返す
- すでに登録されてしまったURLは、Search Consoleの削除ツールで緊急ブロックする
- Search Consoleの「ページ(インデックス作成)」レポートを月1回チェックし、見慣れない検索パラメータ付きURLがないか確認する
- 運用上どうしても必要でなければ、サイト内検索機能そのものを止めるのも有効な選択肢
- 会社名・所在地・代表者名・登録番号を構造化データで正確に記述し、AIに正しい情報を読ませる
WordPressテーマの「Cocoon」など、検索結果ページを最初からnoindexにしている環境もあります。まずは自社の設定がどうなっているかの確認からです。
実際に悪用が見つかったら、Googleのスパム報告フォームから通報し、公式サイトに「当社の公式サイトはこれだけです」という告知を出しましょう。証拠を残して警察や消費生活センターに相談することも忘れずに。
よくある質問(FAQ)
Q1. 検索結果に自社名と「詐欺ではありません」が並んでいました。ハッキングされたのでしょうか?
いいえ、多くの場合サーバーへの侵入は起きていません。サイト内検索という公開されている機能を外から使われただけです。ただし放置すると検索評価が下がるため、noindex設定は早めに行ってください。
Q2. AIに聞けば嘘は見抜いてくれないのですか?
現時点では期待できません。AIはWebの情報を読んで答える仕組みなので、Web自体が汚染されていれば結果も汚染されます。むしろ断定的な口調のぶん、人間の警戒心を下げてしまう危険があります。
Q3. 個人ブログでも狙われますか?
狙われます。攻撃者が求めているのは知名度ではなく「検索エンジンに信用されているドメイン」です。長く運営している個人サイトほど、むしろ価値が高いと判断されることがあります。
Q4. 投資話が本物かどうか、一番手っ取り早く見分ける方法は?
金融庁の一括検索機能で登録を確認することです。登録がないのに投資を勧誘している時点で違法であり、内容を検討する必要すらありません。「元本保証」「必ず儲かる」という言葉が出た時点でも同じです。
Q5. すでにお金を振り込んでしまいました。どうすればいいですか?
すぐに振込先の金融機関と警察(#9110)に連絡してください。早いほど口座凍結が間に合う可能性があります。消費者ホットライン「188」でも相談できます。
まとめ
- 警視庁が2026年7月24日、検索結果を汚染する投資詐欺の新手口に注意喚起した
- 手口は「サイト内検索スパム」。実在企業の検索窓を悪用し、本物のドメインで偽の評判を表示させる
- 汚染された検索結果をAIが読み込むため、AI要約まで「詐欺ではありません」と答えてしまう
- SNS型投資詐欺の被害額は2025年で1274.7億円、前年比46.3%増と拡大中
- 読者は金融庁の登録情報で確認し、サイト運営者は検索結果ページのnoindex設定を急ぐべき
まずは自分のサイトで site:自社ドメイン 詐欺 と検索し、汚染されていないかを5秒で確認してみてください。


