この記事でわかること
- トランプ大統領が「AI」という名称を「不正確で下品」と批判し、改名を指示
- 「Superior Intelligence」など3案で30万人が投票、米国公式文書で採用へ
- 宇宙軍に倣った「AI Force」を創設、高IQ限定のツァー任命を予告
- AI安全性への懸念を「左派のデマ」と一蹴、対中競争を最優先
「AI」は不正確で下品な名前だ
2026年9月19日、アメリカのトランプ大統領がSNS「Truth Social(トゥルース・ソーシャル)」で驚きの発表をしました。それは、世界中で使われている「AI(人工知能)」という言葉を変えようという提案です。
トランプ氏は投稿で「多くの人が、AIという言葉は不正確で、非常に洗練を欠くと考えている」と述べました。つまり、「AIという名前はダサくて、意味も正しくない」という主張です。
代わりに提案されたのが、以下の3つの新しい名前でした。
- Superior Intelligence(SI):優れた知能
- Extreme Intelligence(EI):極めて高度な知能
- Supreme Intelligence(SI):最高の知能
トランプ氏は支持者に投票を呼びかけ、投票開始から1時間以内に3万人近くが反応しました。最終的には30万人が投票し、「Superior Intelligence」が42%の支持で首位に立ちました。
国連演説で公式変更を宣言
この投票から3日後の9月22日、トランプ大統領は国連総会の演説で、さらに踏み込んだ発表をしました。「今後、アメリカのすべての公式文書で、人工知能(Artificial Intelligence)という言葉を使わない。代わりに『スーパー・インテリジェンス(Super Intelligence)』と呼ぶよう指示した」と明言したのです。
つまり、SNSでの投票は単なる人気調査ではなく、実際にアメリカ政府の公式用語を変える動きだったわけです。これまで「AI」と呼ばれてきた技術が、今後アメリカでは「SI(スーパー・インテリジェンス)」と呼ばれる可能性が出てきました。
ちなみに、トランプ氏がこのタイミングで改名を発表したのには理由があります。この国連演説で、トランプ氏はAI規制に反対する姿勢を明確にしました。「中国に勝つためにAI開発を加速させる」という主張の一環として、名称変更を打ち出したのです。
宇宙軍に続く「AI Force」を創設
トランプ大統領は名称変更だけでなく、新しい組織の創設も発表しました。それが「AI Force(AIフォース)」です。
AI Forceは、トランプ氏が第1期政権で創設した「宇宙軍(Space Force)」に倣った組織だと説明されています。宇宙軍は、アメリカ軍の6番目の軍種として2019年に誕生し、宇宙空間での軍事活動を担当しています。
AI Forceも同じように、AI技術の開発と保護を専門に扱う政府組織になると見られています。ただし、具体的な組織の構造、予算規模、どの省庁に所属するかなどの詳細は、まだ一切発表されていません。
トランプ氏は「近いうちにAI Forceを率いるツァー(政策責任者)を任命する」とも述べました。しかも、その条件として「高IQの人だけが応募できる」と明示したのです。この発言も大きな話題を呼んでいます。
「高IQ限定」のAIツァーとは
AIツァーとは、アメリカ政府のAI政策全体を統括する責任者のことです。日本でいえば「デジタル大臣」のような役職に近いでしょう。
実は、トランプ政権では今年3月まで、ベンチャーキャピタリストのデビッド・サックス氏がAI・暗号通貨ツァーを務めていました。サックス氏は特別政府職員としての任期上限に達したため退任しています。
今回の「高IQのみ応募可」という条件は、SNS上で賛否両論を巻き起こしています。「能力重視は当然だ」という意見がある一方で、「IQだけで判断するのは適切か」「差別的ではないか」という批判も出ています。
なお、具体的な候補者の名前はまだ発表されていません。AI業界では、テック企業の経営者や研究者、投資家などの名前が取り沙汰されています。
AI安全性への懸念を「左派のデマ」と否定
トランプ氏の一連の発表で特に注目されたのが、AI安全性に対する姿勢です。トランプ氏は「AIのリスクに関する警告は、急進左派の民主党が作り出したデマだ」と断言しました。
この発言の背景には、AI業界で起きている激しい議論があります。実は、トランプ氏の発表の数週間前に、大きな動きがありました。
AI企業Anthropic(アンソロピック)の研究者が「AI企業は真剣に『AIが10年以内に人類を滅ぼす可能性がある』と信じているのに、開発を続けている。私たちの命を賭けたギャンブルだ」と警告して退職したのです。
これを受けて、AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏が「AI開発のペースを落とそう」という提案を発表しました。この提案には、OpenAIのサム・アルトマンCEOや、イーロン・マスク氏も賛同の意を示しました。
つまり、AI業界のトップたちが「このままでは危険かもしれない」と言い始めたタイミングで、トランプ氏は真逆の方向に舵を切ったわけです。「AI安全性への懸念はデマだ」「開発を加速させる」という姿勢を明確にしました。
対中競争がすべての判断基準
では、なぜトランプ氏はAI安全性の議論を無視するのでしょうか。その理由は、対中国との競争にあります。
トランプ氏はTruth Socialの投稿で「我々は中国や他の国々をリードしている。私はそれを維持するつもりだ」と述べています。国連演説でも、AI規制への反対を「中国に勝つため」という文脈で説明しました。
つまり、トランプ政権の考え方はこうです。「AIは中国との競争に勝つための最重要技術だ。安全性を気にして開発を遅らせれば、中国に負ける。だから規制せずに、全速力で開発を進める」というロジックです。
この姿勢は、バイデン前政権とは正反対です。バイデン政権は2023年10月にAI安全性に関する大統領令を発令し、AI企業に安全性テストの報告を義務付けるなど、規制を強化していました。トランプ政権はこうした規制を次々と撤廃する方針を示しています。
日本への影響は
アメリカがAI規制を緩和し、開発を加速させる方針を取ると、日本にも影響が及ぶ可能性があります。
まず、日本企業がアメリカのAI技術を導入する際、安全性の確認がより難しくなるかもしれません。アメリカ側で安全性テストが緩くなれば、日本側で独自に審査する必要が出てきます。
一方で、AI開発競争が激化すれば、日本企業にとってもビジネスチャンスが広がります。特に、データセンター建設や半導体製造など、AI関連のインフラ需要は急増すると見られています。
また、国際的なAI規制の枠組み作りにも影響します。ヨーロッパは「AI規制法」を制定して厳格な規制を導入していますが、アメリカが規制緩和路線を取ると、世界全体の基準作りが混乱する可能性があります。
日本政府は現在、アメリカとヨーロッパの中間的な立場でAI戦略を進めています。今後、どちらの陣営に近づくのか、判断を迫られる場面が増えるでしょう。
「名前」が変わると何が変わるのか
最後に、そもそも「AI」という名前を変えることに意味はあるのでしょうか。
トランプ氏の主張は「『人工』という言葉が間違っている。この技術は人間を超える『優れた知能』だから、正しい名前で呼ぶべきだ」というものです。
しかし、専門家の間では懐疑的な意見が多いようです。「AIの能力はまだ限定的で、『優れた知能』とは言えない」「名前を変えても技術の本質は変わらない」といった指摘があります。
ただし、名称変更には政治的な意図があるとも言われています。「AI」という言葉には、SF映画などの影響で「人間を支配する危険な技術」というネガティブなイメージがあります。「スーパー・インテリジェンス」という新しい名前にすることで、そうしたイメージを払拭し、規制への抵抗感を弱める狙いがあるのではないか、という見方です。
実際に名称が定着するかどうかは、今後の展開次第です。アメリカ政府の公式文書では変わるかもしれませんが、企業や研究者、メディアが「AI」という言葉を使い続ければ、結局は両方の呼び方が併存することになるでしょう。
まとめ
- トランプ大統領が「AI」を「スーパー・インテリジェンス」に改名すると発表、米国公式文書で採用へ
- 宇宙軍に倣った「AI Force」を創設し、高IQ限定のツァーを任命予定
- AI安全性への懸念を「急進左派のデマ」と否定、対中競争を最優先する姿勢を鮮明に
- バイデン政権の規制路線から大きく転換、開発加速を推進
- 日本企業や日本政府のAI戦略にも影響が及ぶ可能性