AIで書くと創造性は2〜8倍下がる?米大学が実証

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • 米ジョージア工科大学が「人間」と「ChatGPT」のエッセイ約2,200件を比較した最新研究の中身
  • AIが書いた文章は、人間より独自性が「2〜8倍」低いという衝撃の結果
  • たくさん集めるほど、AIの文章は「みんな似てくる(同質化)」という落とし穴
  • プロンプトを工夫しても、この差は埋まらなかった理由
  • 日本の大学のAIルールと、創造性を落とさない上手な使い方

レポートを書くとき、AIにサッと頼ってしまうことはありませんか。とても便利ですよね。でも「AIに頼ると、自分の考える力が落ちるのでは?」と不安に感じる人も多いはずです。2026年6月、その不安に答える研究が話題になりました。AIを使う人と使わない人、創造的なのはどっちなのか。意外な答えを、やさしく解説します。

何が分かったの?米大学が出した「意外な結果」

研究を行ったのは、アメリカの名門 ジョージア工科大学 のチームです。

研究者は Moon さん、Green さん、Kushlev さんの3人。2025年に論文を発表しました。

テーマは「AIで文章を書くと、創造性はどうなるのか」です。

結論を先に言います。創造性は「人間」が圧勝でした。

AIが書いた文章は、人間が書いた文章より独自性(オリジナリティ)が 2〜8倍も低かったのです。

「AIのほうが頭が良さそうなのに、なぜ?」と思った人もいるでしょう。その理由は後で説明します。

どうやって調べたの?2,200件のエッセイを比較

人間とChatGPTで「書きくらべ」

研究チームは、たくさんのエッセイ(小論文)を集めました。

その数、なんと 約2,200件。人間が書いたものと、ChatGPT(GPT-4)が書いたものを用意しました。

そして、両方の「アイデアの多様さ」を細かく比べたのです。

「1件増えるごとに、新しい考えが増えるか」を測定

ポイントは測り方です。エッセイを1件、また1件と足していきます。

そのたびに「新しいアイデアがどれだけ増えるか」を数えました。

人間の場合、1件増えるごとに新しい発想がどんどん追加されました。

ところがAIは違いました。数を増やしても、似たような内容ばかりで、新しさが伸び悩んだのです。

本物の出願エッセイでも「同じ傾向」

研究チームは、実際の大学出願エッセイ約1,400件も調べました。2019年から2025年まで、毎年200件ずつ選んだものです。

すると、ChatGPTが広まった2023年以降のエッセイは、それ以前より「みんな似てくる」傾向が強まっていました。

つまり研究室の実験だけでなく、現実の文章でも同じことが起きていたのです。

なぜAIは「みんな同じ」になるの?

カギになる言葉が 「同質化(どうしつか)」 です。みんなが似てきて、個性が消えていくことを指します。

なぜAIで同質化が起きるのでしょうか。

AIは、過去にネット上にあった大量の文章を学んでいます。その学んだパターンをもとに、いちばん「ありそうな答え」を返します。

言いかえると、AIは 「平均点の優等生」 のような存在です。無難で上手な答えは得意ですが、誰も思いつかない突飛なアイデアは苦手なのです。

だから100人がAIに「夏休みの思い出を書いて」と頼むと、似たような文章が100枚できあがります。

一方、100人の人間が書けば、100通りのバラバラな思い出が生まれます。この違いが「2〜8倍の差」として表れたわけです。

プロンプトを工夫すれば直る?→「直らなかった」

ここで多くの人が思うはずです。「指示の出し方(プロンプト)を工夫すれば、AIももっと多彩になるのでは?」と。

研究チームも、その点をしっかり試しました。

AIの設定をいじったり、考える手順を踏ませる「思考の連鎖(チェーン・オブ・ソート)」という高度な手法も使いました。これは「順を追って考えてね」とAIに丁寧にお願いするテクニックです。

それでも結果は変わりませんでした。工夫しても、人間との差は埋まらなかったのです。

研究チームは「LLM(人間のように文章を書けるAI)は、本質的に新しいアイデアを生み出しにくい」と指摘しています。これは小手先の工夫では解決しにくい、根っこの問題のようです。

身近に置きかえると、どういうこと?

少しイメージしてみましょう。

たとえば、ある高校のクラス40人が、読書感想文の宿題をすべてAIに任せたとします。提出された40枚は、表現も結論もそっくりで、先生は誰の作文か見分けがつきません。

次に、就職活動を考えてみてください。エントリーシートをAIで書く学生が増えると、企業の採用担当者のもとに「同じような自己PR」が山ほど届きます。これでは自分の魅力が埋もれてしまいます。

さらに、会社の新商品アイデア会議で全員がAIの案を持ち寄ったらどうでしょう。出てくるのは似たり寄ったりの企画ばかり。ライバル会社も同じAIを使えば、世の中から「とがった商品」が消えていくかもしれません。

便利さの裏で、社会全体の「アイデアの幅」がそっと狭まっていく。研究が警告しているのは、こうした未来です。

似た研究や反対の意見はある?

今回の研究は「AIは創造性を下げる」という立場です。ただ、世界には少し違う見方の研究もあります。

  • ブレストには役立つという研究:2024年の別の調査では、学生の多くが「AIはアイデア出しの最初のきっかけに便利」と答えました。考えの呼び水としては有効だという意見です。
  • 使い方しだいという研究:AIの案をうのみにせず、自分で選び取って磨ける人ほど、良い結果を出せるという指摘もあります。
  • 過度な依存は危険という研究:逆に、AIの提案をそのまま受け入れる「丸投げ」は、独創性や考える力を弱めると警告する研究も複数あります。

まとめると、専門家の見方は「AIが悪い」ではなく 「使い方が運命を分ける」 という点で一致しつつあります。きっかけに使うのは良いが、丸投げは危ない、というわけです。

日本の大学はどう考えている?

日本でもこの問題は他人事ではありません。2026年に入り、多くの大学が 生成AIの利用ガイドライン を整えています。

たとえば北里大学のガイドライン(2026年4月版)では、レポートや試験でAIを使うときは、必ず担当の先生に確認してから使うよう求めています。

そして共通して強調されているのが、次の考え方です。

  • AIの出力をそのままコピーして提出するのは原則禁止
  • 自分の頭で考え、自分の言葉でまとめる過程こそが大学教育の目的
  • AIに丸投げすると、思考力をきたえる機会を失ってしまう
  • 一次資料での事実確認(ファクトチェック)と、批判的に検証する姿勢が大切

今回の研究結果は、こうした日本のガイドラインの考え方を、データの面から裏づけたとも言えます。「自分で考える部分を残そう」というメッセージは、世界共通になりつつあります。

創造性を落とさないAIの使い方3つ

では、私たちはどうAIと付き合えばいいのでしょうか。研究の教訓から、3つのコツを紹介します。

1. 最初の「たたき台」にだけ使う
ゼロから考えるのが大変なとき、AIに案を出してもらうのは有効です。ただし、それを完成品にせず「出発点」として扱いましょう。

2. 必ず自分の経験や言葉を足す
AIの文章に、自分だけのエピソードや本音を加えてください。あなたにしか書けない部分が、独自性を生みます。

3. AIの答えを疑ってみる
「本当にこれで合っている?」「もっと面白い切り口はない?」と問い直す習慣が大切です。この一手間が、同質化のワナから抜け出す近道になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. AIを使うと、必ず創造性が下がるのですか?
必ずではありません。研究が問題にしているのは「丸投げ」です。たたき台として使い、自分で考えを足せば、創造性を保ちながら効率を上げられます。

Q2. なぜAIの文章は「似てしまう」のですか?
AIは過去の大量データから「いちばんありそうな答え」を選ぶ仕組みだからです。そのため、無難で平均的な、似た文章になりやすいのです。

Q3. プロンプトを工夫しても本当にダメなのですか?
今回の研究では、設定変更や高度な手法を試しても人間との差は埋まりませんでした。完全には解決できない、根本的な課題とされています。

Q4. 学生はレポートにAIを使ってもいいの?
大学によってルールが違います。多くの日本の大学は「先生に確認してから」「そのまま提出は禁止」としています。まず自分の学校のガイドラインを確認しましょう。

Q5. この研究はどこで読めますか?
「Computers in Human Behavior: Artificial Humans」という学術誌に2025年に掲載されました。著者はMoon、Green、Kushlevの3氏です。

まとめ

今回のポイントを振り返ります。

  • 米ジョージア工科大学の研究で、AIの文章は人間より独自性が2〜8倍低いと判明した
  • 約2,200件のエッセイ比較で、AIは数を増やすほど「みんな似てくる(同質化)」傾向が出た
  • プロンプトを工夫しても、人間との創造性の差は埋まらなかった
  • 日本の大学も「AIへの丸投げ禁止、自分で考える過程を重視」という方針
  • たたき台に使い、自分の言葉と経験を足すことが、創造性を守るカギ

AIは敵ではなく、頼れる相棒です。次にレポートやアイデア出しでAIを使うときは、「最後のひと工夫は自分の頭で」を合言葉にしてみてください。

参考文献

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