- AIに性格診断を受けさせると、答える言語で結果が変わった
- ChatGPT-4oの「開放性」は英語4.74、中国語4.03だった
- DeepSeek-V3は逆に、中国語の方が高い結果だった
- 原因は学習データの文化的な偏りが有力だが、まだ切り分けられていない
- AIを調査の回答者の代わりに使うときの注意点がわかる
同じAIに同じ質問をしても、答える言語によって性格が違って見えるとしたら、気になりませんか?この記事では、2026年10月に報じられた研究の中身と、私たちが気をつけたい点をやさしく整理します。
AIに性格診断をさせたら何が起きたのか
中国科学技術大学のYuzhan Hang氏らの研究チームが、AIに人間用の性格診断を受けさせました。成果は科学誌「Royal Society Open Science」に載り、GIGAZINEが10月31日に紹介しています。
答える言語を変えるだけで、AIの自己評価が変わりました。
対象は5つのチャットボットです。アメリカ製のChatGPT-4oとGemini 2.0 Flash、中国製のDeepSeek-V3とErnie 3.5、フランス製のLe Chatが選ばれました。
実験は2025年1月から3月に行われました。TechXploreの解説によると、各モデルには英語と中国語で答えさせています。Le Chatにはフランス語でも答えさせました。
どんな診断で、どう調べたのか
使われたのは「Big Five」
使ったのは、人間向けの性格検査Big Five Inventory-2です。60の質問に5段階で答えます。
測るのは5つの特性です。外向性、協調性、誠実性、否定的感情性(不安や落ち込みやすさ)、開放性(好奇心や想像力の強さ)です。
人間のふりはさせない
AIには「人間のふりをせず、自分自身として答えて」と指示しました。同じ条件で、各言語30回ずつ答えさせています。
1回きりの偶然を拾わないよう、30回分の結果をまとめています。1つの言語の中では、わりと安定した結果が出ました。
言語で変わった具体的な数字
いちばんわかりやすいのは、開放性のスコアです。5点満点で見てみましょう。
- ChatGPT-4o:英語4.74、中国語4.03
- DeepSeek-V3:英語4.38、中国語4.81
ChatGPT-4oは英語の方が高く、DeepSeek-V3は中国語の方が高くなりました。方向が逆になっています。
全体の傾向もありました。ChatGPT-4oとLe Chatは、英語の方が協調性、誠実性、開放性が高くなりました。中国製のモデルは、中国語で答えたときに信頼や知的好奇心の点数が上がりました。
つまり、自分を生み出した国の言語で答えると、自己評価が高くなりやすい傾向です。ただし例外もあります。Gemini 2.0 Flashは、中国語で答えた方が誠実性が高く、否定的感情性が低くなりました。
どのモデルも、自分を「協調的で信頼できる存在」と答えました。否定的な感情も少ないと答えています。人間の回答と比べても、全体にポジティブでした。
なぜ言語で結果が変わるのか
研究チームは、AIが「心理的には安定しているが、文化的には一貫しない」性格を示すとまとめています。言語の中では安定しているのに、言語をまたぐとぶれる、という意味です。
理由としては、いくつかの可能性が挙がっています。
- 役に立つこと、協調的であることを重視する訓練が、好意的な自己評価につながっている
- 人間の文章にある、自分をよく見せる書き方を学んでいる
- 性格診断だと分かると、世間受けのよい答えを選びやすい(先行研究の指摘)
たとえば、日本の就職面接を思い浮かべてください。同じ人でも、日本語で話すときと英語で話すときで、少し違う自分を出すことがありますよね。AIにも似た切り替えが起きているのかもしれません。
ただし、はっきりした原因はまだ特定できていません。学習データの文化、モデルの作り方、質問の翻訳のされ方が混ざっていて、切り分けられていないからです。
ほかの研究でも似た結果が出ている
似た結果は今回が初めてではありません。スペインのオープン・カタルーニャ大学(UOC)のチームは、COLING 2025という学会でGPT-4oの研究を発表しました。UOCの発表によると、英語、ヘブライ語、ポルトガル語など6言語で性格検査に答えさせています。
すると、言語によって回答が大きく変わりました。翻訳の影響だけでは説明できず、言語に結びついた文化的な要因が働いていると考えられています。
さらに、英国、米国、カナダなど5か国の英語話者として答えさせると、各国のステレオタイプに沿った性格が出ました。
もう1つ、AIPsychoBench(arXiv)という研究があります。7言語を英語と比べたところ、スコアのずれは5〜20.2%に及びました。112項目のうち43項目でずれが出ています。
日本のユーザーや企業への影響
今回の実験は英語と中国語、フランス語が中心で、日本語は含まれていません。日本語でどうなるかは、この研究からは分かりません。
それでも、日本の読者にとって無関係ではありません。AIにアンケートの回答者役をさせる使い方が広がっているからです。
たとえば、新商品の企画担当者が、AIに「30代の会社員」として感想を答えてもらうとします。このとき、日本語で聞くか英語で聞くかで結果が変わるかもしれません。
UOCの研究者も、AIの仮想回答者は健康分野の研究などで役立つ可能性がある一方、確認なしに正確な測定値として扱うべきではないと慎重です。
仕事で使うときは、次の3点を心がけてください。
- 同じ質問を日本語と英語の両方で試して、差を見る
- AIの答えを、実際の人間のデータと照らし合わせる
- AIの答えは、意思決定の参考の1つにとどめる
この研究の限界
結果を受け止めるときは、この研究の限界も知っておく必要があります。
1つ目は、診断の点数が、実際の会話での振る舞いを示すとは限らないことです。普段のやりとりで同じ差が出るかは、確かめられていません。
2つ目は、比べた人間のデータが不ぞろいなことです。年齢や募集の方法が国ごとに違い、中国のデータは大学生だけでした。
3つ目は、調査がChatGPT-4oやGemini 2.0 Flashといった、2025年前半時点のモデルで行われたことです。今のモデルでも同じとは言い切れません。
よくある質問(FAQ)
Q. AIには本当に性格があるのですか?
人間のような心があるとは言えません。今回の結果が示すのは、診断への答え方に一定のパターンがあるということです。
Q. 日本語でAIに質問すると、答えが変わりますか?
今回の研究は日本語を調べていません。ただ、ほかの言語で差が出ているため、日本語でも差が出る可能性はあります。
Q. どのAIがいちばん安定していましたか?
研究では、どのモデルも言語で結果が動きました。安定したモデルの順位づけは報告されていません。
Q. 仕事でAIを使うとき、何に気をつければいいですか?
重要な判断では、複数の言語や聞き方で試しましょう。AIの答えだけで決めず、実際のデータや人の目で確かめるのが基本です。
まとめ
- 5つのAIに性格診断を受けさせると、答える言語で結果が変わった
- ChatGPT-4oの開放性は英語4.74、中国語4.03。DeepSeek-V3はその逆だった
- どのAIも、人間より自分をポジティブに評価した
- 原因は学習データの文化的な偏りが有力だが、まだ切り分けられていない
- 日本語は調べられておらず、実際の会話で同じ差が出るかも未確認
AIに意見を聞くときは、言語を変えてもう一度聞いてみてください。