• Appleは長年、メモリメーカーに「買うのをやめるぞ」と迫って値下げさせてきたと報じられている
  • AIブームでメモリが足りなくなり、力関係が逆転した
  • TechInsightsは、Appleが2026年に同じ量のフラッシュメモリへ4倍の金額を払うと推計している
  • iPhoneやMacの値上げが現実味を帯びている
  • 日本のユーザーにも、ゲーム機やスマホの値上がりという形で影響が及ぶ

「iPhoneはなぜこんなに高くなるの?」と感じたことはありませんか。背景には、Appleとメモリメーカーの力関係が入れ替わるという大きな変化があります。この記事では、何が起きているのかと、私たちの財布への影響をやさしく解説します。

Appleはメモリメーカーを「買いたたいて」きた

GIGAZINEが2026年10月30日に紹介したウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、Appleはメモリの調達でこれまで圧倒的に強い立場にありました。

きっかけは「iPod」です。最初は東芝製のHDD(ハードディスク)を使い、その後はフラッシュメモリを使う「iPhone」を発売しました。

iPhoneが売れると、Appleは東芝を含む複数社からフラッシュメモリを大量に買い付けます。世界の供給量の5分の1以上を押さえたとされています。

「発注して、キャンセルする」戦術

報道で特に目を引くのが、その交渉術です。Appleは破格の安値で発注し、市場価格が下がるとその注文をキャンセルしていたといいます。

メーカーは特注品を含む在庫を抱えているため、多くの場合は値下げして納品するしかありませんでした。この戦術を考えたのは、当時の部品調達責任者トニー・ブレヴィンス氏(2022年に退社)とされています。

ほかにも、競合メーカーの営業担当者が会議室で鉢合わせするように設定して競争をあおっていました。サプライヤーの帳簿を監査し、他の買い手がAppleより安く買えないよう管理していたとも報じられています。

メーカー側の小さな抵抗

もちろん、メーカーも黙っていたわけではありません。サンディスクは2015年、Appleからの追加供給の要請を断りました。WSJによると、その際にブレヴィンス氏が営業担当者を脅したそうです。

ウエスタンデジタルも2017年に、注文を確約しない販売には手数料を求めたと伝えられています。

AIブームで立場が逆転した

流れが変わったのは最近です。コロナ禍の在宅ブームが落ち着いた2023年に、フラッシュメモリの価格は大きく下がりました。ところがその後、AIブームで価格が急騰します。

AI向けのデータセンター(AIを動かす巨大なコンピューター施設)は、大量のメモリを使います。メーカーはもうけの大きいAI向けに生産を回すので、スマホ向けは後回しになりがちです。

調査会社TechInsightsの推計では、Appleは2026年に前年とほぼ同じ量のフラッシュメモリを買うために、4倍の金額を払う見込みです。ティム・クック氏はこの状況を「100年に1度の洪水」にたとえました。

関係者によると、サプライヤーの営業担当者は、Appleが痛い目に遭っていることを密かに喜んでいたそうです。

どれくらい値上がりしているのか

HWBustersの報道によると、DRAM(作業用のメモリ)の価格は2025年10月から2倍以上になりました。クック氏はWSJのインタビューで、値上げは「避けられない」、状況は「持続不可能」と語っています。

TechInsightsのアナリストは、iPhone 17 Proの部品コストが次のように変わると見ています。

  • 12GBのDRAM:現在の約39ドルから約145ドルへ
  • 256GBのストレージ:約13ドルから約51ドルへ

この試算では、iPhoneのProモデルは少なくとも200ドル値上がりする可能性があります。利益率を保つには、iPhone 18 Proを現行の1,099ドルから約1,399ドルにする必要があるとも言われます。

Macにもすでに影響が出ています。2026年5月、Mac miniの最安モデルは599ドルから799ドルになりました。メモリは同じ16GBで、ストレージは256GBから512GBに増えましたが、実質的には値上げです。

また、36Krに載った分析記事は、メモリが製品原価に占める割合が従来の10〜15%から30〜40%に上がったと述べています。これは筆者の分析で、一次データまでは確認できていません。

Appleが取る対抗策

Appleも手をこまねいているわけではありません。MacTrastが韓国メディアの報道として伝えたところでは、iPhone 17向けの低消費電力DRAMのうち、Samsungの割合は60〜70%に増える見込みでした。従来はSK hynixとほぼ半々だったそうです。

背景には、MicronとSK hynixが生産能力をAI向けのHBM(高性能メモリ)に振り向け、スマホ向けが足りなくなったことがあります。

さらに36Krの記事によると、Appleは中国のCXMTやYMTCのチップを、米国外で売る製品に使う許可をワシントンに求めています。調達先を探すのに、それだけ苦労しているわけです。

競合他社への影響と比較

値上げに悩むのはAppleだけではありません。HWBustersによれば、ソニーはPS5を英国で90ポンド、米国で100ドル値上げしました。任天堂もSwitch 2を9月から値上げするとされています。

調査会社Omdiaは、2026年の世界のスマホ平均販売価格が約20%上がり、過去最高になると予測しています。

つまり、メモリ高騰はスマホやパソコンだけでなく、ゲーム機を含む電子機器全体に広がっています。

日本のユーザーへの影響

日本の私たちにも、他人事ではありません。たとえば、春に新しいMacBook Airを買おうと貯金している大学生を考えてみてください。発売時に価格が上がっていれば、貯めた金額では足りなくなるかもしれません。

家族でゲームを楽しむ家庭では、買い替えのときにゲーム機が値上がりしている可能性があります。会社でパソコンをまとめて入れ替える情シス担当者も、予算の組み直しが必要になるでしょう。

日本での具体的な価格は、今回の報道では示されていません。アメリカでの値上げ幅を目安にして、公式の発表を待つのが現実的です。

よくある質問(FAQ)

Q. iPhone 18は本当に値上がりしますか?

A. クック氏は値上げを「避けられない」と認めましたが、時期と対象製品は公表されていません。TechInsightsの試算では、Proモデルが約1,399ドルになる可能性があります。

Q. なぜAIのせいでスマホ用メモリが足りなくなるのですか?

A. メーカーが、もうけの大きいAIデータセンター向けの製品に生産を回しているためです。スマホ向けの供給が減って、価格が上がります。

Q. この値上がりはいつまで続きますか?

A. 36Krの記事によると、価格の転換点は2028年より前には来ないという見方があります。ただし不確実な部分が大きく、確かなことは言えません。

Q. 今のうちに買っておくべきですか?

A. 必要な買い物なら、値上げ前に済ませるのも一案です。ただ、無理に急ぐ必要はありません。自分の使い方に合うモデルを選ぶことが大切です。

まとめ

  • Appleは長年、大量発注を武器にメモリメーカーを買いたたいてきたと報じられている
  • AIブームでメモリが不足し、立場が逆転した
  • TechInsightsは、Appleの支払額が2026年に4倍になると推計している
  • iPhoneやMacのほか、ゲーム機などにも値上げが広がっている

次に買い替えを考えるときは、メモリ容量と価格のバランスを見直して、本当に必要なモデルを選んでみてください。

参考文献