この記事でわかること

  • AIが生成したWebアプリの9割に脆弱性が見つかった調査結果
  • バイブコーディングで作られたアプリに潜む具体的なセキュリティリスク
  • 脆弱性が生まれる3つの原因と対策方法
  • 世界的に広がるAI生成コードのセキュリティ問題

AIが作ったWebアプリ、9割に脆弱性

2026年10月7日、MicrosoftとシンガポールAI安全研究所などの研究チームが、重大な調査結果を発表しました。AIに自動生成させたWebアプリケーションを調べたところ、91%のアプリから脆弱性が見つかりました。

調査対象は、バイブコーディングで作られた公開中のWebアプリ200件です。バイブコーディングとは、AIに指示するだけでアプリを作る手法を指します。見つかった脆弱性は合計1,186件でした。そのうち65.77%は、深刻度が致命的または高に分類される重大なものです。

研究チームはITmediaの報道によると、ClaudeやLovableといったAIツールで作られた984件のアプリから無作為に200件を抽出して調査しました。

バイブコーディングとは何か

バイブコーディングは、プログラミングの専門知識がなくてもAIに「こんなアプリが欲しい」と伝えるだけでアプリが完成する手法です。コードを書くのではなく、AIに雰囲気を伝えて作ってもらう仕組みになっています。

たとえば「ユーザーがログインできて、投稿を共有できるSNSアプリ」と指示するだけで、AIがデータベース設計からフロントエンド画面まで自動生成します。開発期間は従来の数週間から数時間に短縮できました。

便利な半面、問題があります。AIは動くコードを作りますが、セキュリティまでは考えきれていません。

どんな脆弱性が見つかったのか

今回の調査で最も多かった脆弱性は次の3つです。

1つ目は、アクセス制御の不備です。339件、28.58%を占めました。本来アクセスできないはずのデータに、誰でもアクセスできてしまいます。たとえば、他人の投稿を勝手に編集できたり、管理者専用ページに一般ユーザーが入れたりします。

2つ目は、インジェクション攻撃への脆弱性です。199件、16.78%でした。悪意のあるコードを入力欄に打ち込むことで、システムを乗っ取れます。SQLインジェクションなどが代表例で、データベースの中身を全部抜き取られる危険があります。

3つ目は、認証の失敗です。176件、14.84%を占めました。ログイン機能が甘く、パスワードなしで入れたり、簡単に他人になりすましたりできます。

SecurityWeekが報じた別の調査では、434件の脆弱性のうち23件が致命的と評価され、そのうち11件はパスワードやAPIキーがコードに直接書き込まれている問題でした。

なぜ脆弱性が生まれるのか

研究チームは、脆弱性が生まれる原因を3つに分類しました。

最も多いのは知識の欠陥で、63.4%を占めます。AIがセキュリティのベストプラクティスを知らないため起こります。たとえば、パスワードは暗号化して保存するという基本ルールを守らず、平文で保存してしまうケースです。平文とは、そのまま読める状態のことです。

2番目は目的の欠陥で、23.1%でした。ユーザーの指示が曖昧だったり、セキュリティについて何も言われていなかったりすると、AIはとりあえず動けばいいというコードを作ります。結果、セキュリティが後回しになります。

3番目は記憶の欠陥で、13.5%です。AIは会話の途中で、前に出された指示を忘れることがあります。たとえば、管理者だけがアクセスできるページと最初に指示しても、後の会話でその制限を忘れて誰でもアクセスできるコードを生成してしまいます。

世界的に広がる問題

この問題は日本だけではありません。Veracodeの2026年レポートによると、AI生成コードの44%が危険な脆弱性を含んでいます。セキュリティテストの合格率は平均56%にとどまります。

特に深刻なのは、クロスサイトスクリプティングの成功率が15%、ログインジェクションが12%と極端に低い点です。一方、SQLインジェクションは83%、暗号化アルゴリズムは87%と高い成功率を示しており、AIの得意不得意がはっきり分かれています。

2025年後半には7カ月で18件だった脆弱性報告が、2026年の最初の3カ月だけで56件に急増しました。特に2026年3月だけで35件が報告され、2025年全体を上回りました。バイブコーディングの普及とともに、問題も急速に増えています。

対策はあるのか

調査では、いくつかの対策の効果も検証されました。

1つ目の対策はプロンプトの改善です。AIへの指示に「本番運用に耐えるセキュアなアプリを作ってください」と明記するだけで、脆弱性の再発率は25.7%から11.0%に低下しました。AIは指示されていないことは考えないので、セキュリティ要件を明確に伝えることが重要です。

2つ目はセキュリティスキルの追加です。AIにセキュリティ強化用の追加機能を組み込むと、脆弱性率は11.9%まで下がりました。つまり、AIツール側の改善も効果があります。

3つ目は人間によるレビューです。@ITの記事では、専門家がAI生成コードは必ず人間が最終チェックすべきだと指摘しています。ところが現状では、AI生成コードに従来と同じセキュリティ基準を適用している組織はわずか12%しかありません。

日本の開発現場への影響

日本でもバイブコーディングの利用は広がっています。GitHub Copilotは2025年半ばに2,000万ユーザーを突破し、Googleでは2026年初頭の時点で新規コードの約半分がAI生成になっていると報告されています。

開発スピードが上がる一方で、セキュリティ対策が追いついていません。特に中小企業やスタートアップでは、専門のセキュリティ担当者がいないままAIツールを使ってアプリを公開するケースが増えています。

今回の調査結果は、便利なツールの裏に潜むリスクを明らかにしました。AIは強力な助け手ですが、セキュリティの最終判断は人間が行う必要があります。バイブコーディングを使う際は、必ずセキュリティの専門家によるレビューを受けることが求められます。

まとめ

  • MicrosoftらがAI生成Webアプリ200件を調査し、91%に脆弱性を発見
  • 見つかった1,186件の脆弱性のうち65.77%が深刻度「高」以上
  • アクセス制御の不備、インジェクション攻撃、認証の失敗が上位3つ
  • 脆弱性の63.4%はAIの知識不足が原因
  • AI生成コードの44%が危険な脆弱性を含むと世界的にも報告
  • プロンプト改善で脆弱性率を25.7%から11.0%に低減可能
  • 人間によるセキュリティレビューが必須

参考文献