スコセッシ監督がAI企業アドバイザーに|ハリウッド二分の衝撃

マーティン・スコセッシ監督がAI企業Black Forest Labsのアドバイザーに就任し、映画制作にFLUX画像生成技術を活用

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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この記事でわかること

  • マーティン・スコセッシ監督がAI企業のアドバイザーに就任した経緯
  • Black Forest LabsのFLUX技術とは何か
  • スコセッシが実際にどのようにAIを活用しているか
  • ハリウッドでAI活用派と反対派が対立している背景
  • 日本の映画・クリエイティブ業界への影響

なにが起きたのか?巨匠がAI企業のアドバイザーに

2026年6月3日、ハリウッドに衝撃が走りました。「タクシードライバー」や「グッドフェローズ」などの名作で知られるマーティン・スコセッシ監督(81歳)が、画像生成AI企業Black Forest Labs(ブラック・フォレスト・ラボ)のアドバイザーに就任したのです。

スコセッシといえば、映画界の巨匠として知られる人物です。つまり、職人技を重視する伝統的な映画人の代表格と言えます。そんな彼がAI企業と手を組んだというニュースは、多くの人を驚かせました。

実はスコセッシは、レオナルド・ディカプリオとジェニファー・ローレンスが出演する次回作「What Happens at Night」の絵コンテ(映画の設計図のようなもの)を、このAI技術を使って制作しています。

Black Forest LabsとFLUXとは?

Black Forest Labsは2024年に設立された、比較的新しいAI企業です。創業者は、有名な画像生成AI「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」を開発したエンジニアたちです。

同社が開発する「FLUX(フラックス)」というAIモデルは、文章を入力すると高品質な画像を生成してくれるツールです。たとえば「夕暮れのニューヨークの街角」と入力すると、それに合った画像をAIが作ってくれます。

FLUXの特徴は、その品質の高さです。2025年11月にリリースされた最新版「FLUX.2」は、最大10枚の画像を同時に処理できる機能を持ち、キャラクターやスタイルの一貫性を保つことができます。すでにAdobe Photoshop(アドビ・フォトショップ)のベータ版にも採用されており、プロのクリエイターからも注目されています。

Black Forest Labsは、シリコンバレーの有名投資会社Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)などから、約46億円(3100万ドル)の資金を調達しています。

スコセッシはどう活用しているのか?

スコセッシ監督は、FLUXを絵コンテ制作に活用しています。絵コンテとは、映画の各シーンをイラストで表したもので、撮影前にスタッフ全員がイメージを共有するために使います。

スコセッシはこう語っています。「頭の中で見えているものを、キャストやスタッフにどう伝えるかは、いつも大きな問題でした。FLUXを使うことで、私が思い描くビジュアルを、より明確に、そして効率的にチームと共有できるようになりました」

たとえば「グッドフェローズ」の有名なコパカバーナのシーン(カメラがずっと動き続ける長回しのシーン)について、スコセッシはこう説明しています。「あのような複雑なシーンを事前にビジュアル化できれば、撮影時間を大幅に短縮でき、スタッフの負担も減らせます」

つまりスコセッシは、AIを「人間の代わり」として使うのではなく、「自分のアイデアを伝える道具」として使っているのです。

スコセッシはまた、こうも述べています。「映画は若いメディアです。まだ約125年の歴史しかありません。だからこそ、映画がどう進化していくかについて、オープンな姿勢でいなければならないのです」

ハリウッドが二分される理由

しかし、スコセッシのこの決断には、強い批判の声も上がっています。

コンセプトアーティスト(映画の世界観を描く専門家)のカーラ・オルティスさんは、「スコセッシは、自分の作品を支えてきた絵コンテアーティストたちを見捨てた」と厳しく批判しています。

アニメーターのサム・ディーツさんも、「絵コンテ制作にそれほど時間はかからないはずだ。人間のアーティストの作品で訓練されたAIを使う必要性が理解できない」と疑問を呈しています。

一方で、スコセッシを支持する声もあります。「アバター」シリーズで知られるジェームズ・キャメロン監督は、以前からAI企業Stability AI(ステイビリティ・エーアイ)の取締役を務めており、AI活用に前向きです。

逆に「パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロ監督は、AIの創作分野への侵入を「職人技への侮辱だ」として強く反対しています。

この対立は、ハリウッド全体で起きている大きな議論を映し出しています。つまり「AIは創作を助ける道具なのか、それとも人間のアーティストから仕事を奪う脅威なのか」という問いです。

日本の映画・クリエイティブ業界への影響

この動きは、日本の映画・アニメ業界にも大きな影響を与える可能性があります。

日本のアニメ業界では、絵コンテやレイアウトの作業に多くの時間と人手がかかっています。人手不足が深刻な現場では、AIによる効率化は魅力的に映るかもしれません。

一方で、日本のクリエイターたちも「AI学習に自分たちの作品が無断で使われている」という懸念を持っています。スコセッシの事例は、「巨匠クラスの監督がAIを使い始めた」という前例となり、業界全体の流れを変える可能性があります。

重要なのは、AIを「どう使うか」という視点です。スコセッシのように、AIを自分のビジョンを伝える道具として使うのか。それとも、人間の仕事を完全に置き換えるために使うのか。その選択によって、未来は大きく変わるでしょう。

まとめ

  • マーティン・スコセッシ監督が画像生成AI企業Black Forest Labsのアドバイザーに就任
  • スコセッシは次回作の絵コンテ制作にFLUX AIを活用している
  • Black Forest LabsはStable Diffusion開発者が創業、約46億円を調達
  • ハリウッドでは、AI活用派(スコセッシ、キャメロン)と反対派(デル・トロ)に分断
  • アーティストからは「仕事を奪われる」という強い批判も
  • 日本の映画・アニメ業界にも影響を与える可能性が高い
  • 重要なのは「AIをどう使うか」という視点

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