- 米紙WSJが「SpaceXがiPhoneより薄いAI端末を開発中」と報道
- イーロン・マスク氏は約30分後に「完全な誤り」と即否定
- 端末は独自OSとxAIの技術を積むとされたが、出荷は未定
- 過去のAI専用端末(Humane・Rabbit)は失敗し、成功の壁は高い
- 日本のスマホ市場にとっても、実は他人事ではない理由がある
「スマホの次に来るのは、AIが主役の新しい端末かもしれない」。そんな噂が2026年7月に世界を駆けめぐりました。舞台はロケット企業のSpaceX。ところが、当のイーロン・マスク氏がすぐに全否定します。この記事では、何が報道され、なぜ否定され、そしてAI端末競争がどこへ向かうのかを、やさしく整理します。
何が報道された?WSJが伝えたSpaceXのAI端末
きっかけは、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記事でした。日本時間の2026年7月2日、SpaceXがAI端末を開発していると報じたのです。
記事によると、SpaceXは投資家向けの説明会で、あるプロトタイプ(試作機)を見せたとされます。
その特徴は「iPhoneより薄い、洗練された手のひらサイズの端末」。独自のOS(端末を動かす基本ソフト)で動き、マスク氏のAI企業xAIの技術を積むと伝えられました。
頭脳にあたる半導体は、米クアルコムの「Snapdragon(スナップドラゴン)」を使うとされています。
SpaceXは2026年6月に株式を上場(IPO)したばかりです。ちなみに端末はまだ初期段階で、「設計は変わるかもしれず、発売しない可能性もある」と投資家に伝えていたといいます。
なぜマスクは「完全な誤り」と即否定したのか
報道が出ると、反応は驚くほど早いものでした。
マスク氏は記事公開の約30分後、自身のXに「Utterly false(完全な誤り)」と投稿し、報道をきっぱり否定したのです。
ただし、どこがどう間違っているのか、具体的な説明はありませんでした。SpaceXからの詳しい公式声明も出ていません。
ここが少しやっかいなところです。「端末そのものが存在しない」という否定なのか、「細かい部分が違う」という否定なのかは、はっきりしないのです。
マスク氏は過去にも報道を強い言葉で否定し、あとで方針が動いた例があります。だからこそ、否定があっても「本当に何もないのか」と疑う声が残っています。
そもそもAI専用デバイスとは?スマホと何が違う
そもそも「AI端末」とは何でしょうか。スマホと何が違うのか、想像してみてください。
ふだん私たちは、アプリを開いてからAIに質問します。地図を開き、メモを開き、翻訳を開く。この「アプリを選ぶ手間」が前提です。
AI専用端末は、この順番をひっくり返します。アプリを開かず、まずAIに話しかける。あとはAIが必要な作業を裏でこなす、という発想です。
そのため、画面が小さかったり、まったく無かったりする設計も検討されています。声やカメラで、いつでもAIとやりとりする形です。
つまり、目指すのは「小さなスマホ」ではありません。スマホとは操作の入り口が違う、新しい種類の道具なのです。
競合を比較|OpenAI・Humane・Rabbitの現在地
実は、AI端末に挑むのはSpaceXだけではありません。ライバルたちの現在地を見てみましょう。
OpenAI × ジョニー・アイブ氏(ioデバイス)。iPhoneの元デザイナーと組み、画面のない端末を開発中です。OpenAIは開発会社を約65億ドル(約1兆円)で買収しました。ただし発売は延期され、早くても2027年2月以降とされています。
Humane「Ai Pin」。服につける小型端末でしたが、大失敗に終わりました。約2.3億ドルを集めながら、販売は1万台未満。会社はHPに約1.16億ドルで売却され、2025年2月には全端末が使えなくなりました。
Rabbit「R1」。手のひらサイズの人気端末でしたが、中身は「安い部品で動くAndroidアプリとほぼ同じ」と判明しました。「それならスマホで十分」と言われてしまったのです。
ここから見える壁は1つです。AI端末が生き残る条件は「無いよりマシ」ではなく、「スマホより便利」であること。この基準は、とても高いのです。
マスクの「エブリシングアプリ」構想とのつながり
ではなぜ、否定されてもSpaceXの噂は消えないのでしょうか。背景には、マスク氏の大きな構想があります。
マスク氏はいま、X(旧Twitter)を「エブリシングアプリ(何でもできるアプリ)」に育てようとしています。
Xの中には、AIのGrok(グロック)、決済・銀行の「X Money」、暗号化メッセージの「XChat」が続々と入りつつあります。
企業の関係も複雑につながっています。2025年3月にxAIがXを買収し、2026年2月にはSpaceXがxAIを取り込みました。
もし自前のAI端末があれば、AppleやGoogleを通さず、ユーザーとの入り口を自分で握れます。だから「マスクなら作りかねない」と多くの人が感じ、報道が一気に広がったのです。
日本のユーザーにどう関係する?
「アメリカの話でしょう」と思うかもしれません。ですが、日本にとっても無関係ではありません。
MMD研究所の2026年2月調査では、日本のスマホはiPhoneが49.0%、Androidが50.8%と、ほぼ半々です。iPhone好きが多い国として知られてきました。
それだけに、日本では慣れた端末を手放しにくい傾向があります。新しいAI端末が出ても、乗り換えの壁は高いでしょう。
さらに、日本で売るには日本語対応や技適(電波を使う機器の国内認証)といった手続きも必要です。すぐに手に入るとは限りません。
それでも、AIアシスタントの主戦場が「アプリ」から「端末」へ移り始めれば、私たちのスマホの使い方も少しずつ変わっていきます。今回の噂は、その大きな流れを映す出来事なのです。
よくある質問(FAQ)
Q. SpaceXのAI端末は本当に発売されますか?
現時点では不明です。マスク氏は報道を否定しており、SpaceXも発売を認めていません。仮に試作機があっても「発売しない可能性がある」と伝えられています。
Q. これでiPhoneは無くなってしまうのですか?
いいえ、当分は無くなりません。AI端末はスマホを完全に置き換えるより、新しい種類の道具として広がると見られています。
Q. xAIのGrokとはどう関係しますか?
報道では、端末にxAIの技術が積まれるとされました。GrokはxAIのAIなので、その頭脳を持ち歩けるイメージです。
Q. 過去のAI端末はなぜ失敗したのですか?
HumaneやRabbitは「新しさ」で注目されましたが、スマホより便利とは言えず、使い続ける理由が足りませんでした。ハードは発売後に直しにくい点も痛手でした。
Q. 日本ですぐに買えますか?
いいえ。そもそも発売が不確かなうえ、日本で売るには日本語対応や国内の認証も必要になります。
まとめ
- WSJが「SpaceXがiPhoneより薄いAI端末を開発中」と報道した
- マスク氏は約30分後に「完全な誤り」と即否定したが、詳細は語っていない
- 端末は独自OSとxAI技術を積むとされたが、出荷は未定
- OpenAI・Humane・Rabbitなど競合は苦戦し、「スマホより便利」の壁は高い
- 背景にはマスク氏の「エブリシングアプリ」構想があり、噂が消えない理由になっている
まずは公式発表を待ちつつ、AI端末が「スマホより便利」を本当に超えられるかに注目してみてください。
参考文献
- 「iPhoneより薄いスマホ風AIデバイスをSpaceXが開発中」報道をイーロン・マスクが即否定(GIGAZINE)
- Elon Musk categorically denies SpaceX is making an AI device(Tom’s Hardware)
- SpaceX has an AI device prototype, and it sure sounds phone-ish(TechCrunch)
- Jony Ive’s AI hardware is delayed to 2027 and won’t be called io(9to5Mac)
- 2026年2月スマートフォンOSシェア調査(MMD研究所)

