この記事でわかること
- Alibabaが公開したQwen3-Coder-Nextとは何か
- 80億パラメータのうち3億だけで動く仕組み(MoE)
- 有料AIに迫るコーディング性能の実力
- 自分のパソコンで動かせるメリットと注意点
- 日本の開発者にとっての影響と活用法
「AIにコードを書いてもらいたいけど、毎月のAPI料金が高い…」。そんな悩みを持つ開発者に朗報です。
2026年2月3日、中国のIT大手Alibaba(アリババ)のAI研究チーム「Qwen(チウェン)」が、新しいコーディング特化AIモデル「Qwen3-Coder-Next」を無料公開しました。なんと、自分のパソコンで動かせるのに、有料の高性能AIに近い実力を持っています。
Qwen3-Coder-Nextってどんなモデル?
Qwen3-Coder-Nextは、プログラミングに特化したAIモデルです。コードを書いたり、バグを直したり、プロジェクト全体を理解して修正したりできます。
最大の特徴は、Apache 2.0ライセンスで公開されていること。つまり、誰でも無料で使えて、商用利用もOKです。
対応するプログラミング言語は、なんと370言語。Python、JavaScript、TypeScriptはもちろん、Rust、Go、Java、C++など主要な言語をすべてカバーしています。前のバージョン(Qwen2.5-Coder)の92言語から4倍に増えました。
80億のうち3億だけ!MoEの仕組みとは
Qwen3-Coder-Nextの最大の技術的な特徴が、MoE(Mixture of Experts=専門家の混合)という仕組みです。
たとえるなら、512人の専門家がいる大きな会社のようなものです。お客さんの相談内容に応じて、毎回最適な10人だけが対応するイメージです。全員が同時に働く必要がないので、とても効率的です。
具体的な数字で見てみましょう。
- 総パラメータ数:800億(80B)
- 実際に動くパラメータ数:30億(3B)だけ
- 専門家の数:512人+共有1人
- 毎回使う専門家:10人+共有1人
- 層の数:48層
つまり、800億の知識を持ちながら、30億分の計算量で動くのです。これにより、同じサイズの通常モデルと比べて最大10倍速い処理速度を実現しています。
有料AIに迫る実力!ベンチマーク結果
AIの実力を測る指標(ベンチマーク)で、Qwen3-Coder-Nextは驚きの結果を出しています。
SWE-Bench Verified:70.6%
SWE-Bench(ソフトウェアエンジニアリングベンチ)は、実際のGitHubの問題を解けるかテストする指標です。Qwen3-Coder-Nextは70.6%を記録しました。
これは、有料のClaude Opus 4.6(80.8%)には届かないものの、無料で使えるモデルとしては最高クラスの成績です。
セキュリティでは有料モデルを超えた
面白いのは、安全なコードを書く能力ではQwen3-Coder-Nextが有料モデルを上回ったことです。SecCodeBench(セキュアコードベンチ)というテストでは、Qwen3-Coder-Nextが61.2%に対し、Claude Opus 4.5は52.5%でした。
つまり、脆弱性(セキュリティの穴)が少ない安全なコードを書く力では、無料モデルが有料モデルに勝っているのです。
他のモデルとの比較
主要なベンチマークの比較をまとめます。
- SWE-Bench Verified:Qwen3-Coder-Next 70.6% / Claude Opus 4.6 80.8%
- SWE-Bench Pro:Qwen3-Coder-Next 44.3% / DeepSeek-V3.2 40.9%
- Aiderベンチマーク:Qwen3-Coder-Next 66.2%
- SecCodeBench:Qwen3-Coder-Next 61.2% / Claude Opus 4.5 52.5%
自分のパソコンで動かせる!必要なスペック
Qwen3-Coder-Nextの大きな魅力は、自分のパソコンで動かせることです。クラウドAPIに依存しないので、コードやデータが外部に送られる心配がありません。
動作に必要な環境
- MacBook Pro:64GBメモリ搭載モデル
- NVIDIA GPU:RTX 4090 / RTX 5090(24GB VRAM)
- AMD GPU:Radeon RX 7900 XTX
- コンテキスト長:最大256Kトークン(約100万トークンまで拡張可能)
たとえば、ゲーム用の高性能パソコンを持っていれば、そのまま動かせる可能性が高いです。Ollama(オラマ)やLM Studio(エルエムスタジオ)といったツールを使えば、数クリックでセットアップできます。
ローカル実行のメリット
- プライバシー保護:会社のコードを外部に送らなくてよい
- コスト0円:API料金が一切かからない
- オフライン対応:インターネットがなくても使える
- カスタマイズ自由:自社のコードベースで微調整できる
日本の開発者への影響は?
Qwen3-Coder-Nextの登場は、日本の開発者にとっても大きな意味があります。
個人開発者の強い味方に
これまで、高性能なAIコーディングアシスタントを使うには、月額2,000〜3,000円のサブスクリプションが必要でした。Qwen3-Coder-Nextなら、対応するパソコンさえあれば完全に無料で使えます。
個人開発者や学生にとって、コストを気にせずAIの力を借りられるのは大きなメリットです。
企業での導入にも期待
日本の企業では、セキュリティの理由から社外にコードを送れないケースが多くあります。Qwen3-Coder-Nextなら、社内のサーバーだけで完結するため、情報漏洩のリスクなしにAIコーディング支援を導入できます。
ちなみに、日本語での説明文やコメントの生成にも対応しているため、日本語のプロジェクトでも活用しやすいと言われています。
オープンソースAIの競争が加速
Qwen3-Coder-Nextの登場により、オープンソースのコーディングAI市場はさらに活性化しています。DeepSeek-V3.2やGLM-4.7といった競合モデルもあり、無料AIの実力が有料AIに急速に追いつきつつある状況です。
この流れは、AIコーディングツールの価格を下げ、より多くの人がAIの恩恵を受けられる方向に進んでいます。
注意点:万能ではない
もちろん、Qwen3-Coder-Nextにも弱点はあります。
- 最上位の有料モデルには劣る:SWE-Benchでは、Claude Opus 4.6やGPT-5.3 Codexに10ポイント以上の差がある
- ハードウェアが必要:64GBメモリのMacやRTX 4090クラスのGPUが必要で、普通のノートパソコンでは動かない
- 複雑なタスクには注意:大規模プロジェクトの複雑なバグ修正では、有料モデルの方が安定している場合がある
- 日本語の精度:コードの生成は得意だが、日本語の自然言語理解では有料モデルに劣る場面がある
「すべてのケースで最高」ではありませんが、無料で使えるモデルとしては間違いなくトップクラスです。用途に応じて有料モデルと使い分けるのがおすすめです。
まとめ
Alibaba発のAIコーディングモデル「Qwen3-Coder-Next」について、ポイントを振り返ります。
- Qwen3-Coder-Nextは無料・商用利用OKのコーディング特化AI
- MoE技術により、800億パラメータの知識を30億分の計算量で活用
- SWE-Bench Verifiedで70.6%、オープンモデルとして最高クラス
- セキュアコード生成では有料モデルを超える61.2%を記録
- 370言語のプログラミング言語に対応
- 64GB MacBookやRTX 4090でローカル実行が可能
- 企業のセキュリティ要件にもマッチする選択肢
- オープンソースAIのコーディング能力が急速に進化中
「AIにコードを書いてもらう」時代は、もはや有料サービスだけのものではなくなりました。Qwen3-Coder-Nextは、その流れを決定づける重要なモデルと言えるでしょう。
参考文献
- MarkTechPost「Qwen Team Releases Qwen3-Coder-Next」
- VentureBeat「Qwen3-Coder-Next offers vibe coders a powerful open source model」
- WinBuzzer「Alibaba’s Qwen3-Coder-Next Activates Just 3B of 80B Parameters」
- WEEL「Qwen3-Coder-Next コーディング特化型LLMの性能・ライセンス・使い方を徹底解説」
- Innovatopia「Qwen3-Coder-Next登場:80Bパラメータでも3Bだけ稼働」


