- ポケモン・HEROZ・松尾研究所が「ポケカ対戦AI」開発コンテストを開催
- 賞金は第2ラウンド優勝で5万ドル(約800万円)、総額は最大規模
- 相手の手札が見えない「不完全情報ゲーム」がAIにとって最大の壁
- チェスや将棋のAIとは技術的にまったく別のアプローチが必要
- 世界90以上の国と地域で人気のポケカが、AI研究の新しい舞台に
「カードゲームをAIにプレイさせる」と聞くと、もう簡単そうに思えませんか?でも実はポケモンカードは、将棋や囲碁よりもAIにとってずっと手強い相手なのです。2026年6月、その難題に世界中の開発者が挑むコンテストが始まりました。賞金は最大約800万円。この記事では、何が起きているのか、なぜ難しいのかをやさしく解説します。
ポケカ対戦AIコンテストとは?
2026年6月16日、新しいAIコンテストが始まりました。
名前は「ポケモンカードゲーム AI Battle Challenge(ポケカABC)」です。
ポケモンカードゲームを上手にプレイするAIエージェント(自分で考えて動くAIプログラム)を作って、その強さを競う大会です。
主催するのは3社です。
- 株式会社ポケモン(ポケカの生みの親)
- HEROZ(将棋AI「Ponanza」を作った会社)
- 松尾研究所(東京大学・松尾豊教授ゆかりのAI研究組織)
さらに、GoogleやNVIDIAも協力企業として名を連ねています。AI業界の有力プレイヤーが集まった、注目の企画です。
賞金とスケジュール
大会は2つのラウンドに分かれています。
第1ラウンドは2026年6月16日にスタートしました。上位8チームには、それぞれ3万ドル(約480万円)が贈られます。
勝ち残った8チームは、2026年末以降に開かれる第2ラウンドへ進めます。
第2ラウンドの賞金はさらに大きく、優勝チームには5万ドル(約800万円)、2位には3万ドル(約480万円)が用意されています。出場者全員にGoogle Cloudのクーポン3,000ドル分(約48万円)も配られます。
参加は無料です。個人でも、最大5人のチームでも応募できます。
なぜ「不完全情報ゲーム」は難しいのか
このコンテストの一番のポイントは、ポケカが「不完全情報ゲーム」だということです。
不完全情報ゲームとは、相手の情報が全部は見えないゲームのことです。ポケカでは、相手の手札も山札の中身も隠れています。
一方、チェス・将棋・囲碁は「完全情報ゲーム」と呼ばれます。盤面の駒や石はすべて見えていて、隠れた情報がありません。
見えない情報があると、AIは相手の手を「推測」しながら戦わなければなりません。これがとても難しいのです。
難しさはそれだけではありません。
- カードの種類が数千種類以上あり、組み合わせが膨大
- コインを振るなど運(ランダム要素)が勝敗を左右する
- 炎・水・草などのタイプ相性を読む戦略性
松尾研究所の松尾豊氏は、こう指摘しています。不完全情報に加えて多様なカード効果やランダム要素が絡むゲームにAIを応用した例は、世界的にもほとんどないそうです。それだけ挑戦的なテーマなのです。
2つの部門で何を競う?
第1ラウンドは、2つの部門に分かれています。
シミュレーション部門
こちらは「とにかく強さで勝負」する部門です。
データ分析プラットフォーム「Kaggle(カグル)」の上で、AI同士が自動で何度も対戦します。その勝敗をもとにレーティング(強さの点数)が決まります。
期間は2026年6月16日から8月17日までです。
ストラテジー部門
こちらは強さだけでなく、デッキの独創性や開発の工夫も評価される部門です。
「ただ勝てばいい」のではなく、「どんな発想で戦ったか」も見られます。提出期間は9月14日までです。
使えるカードは、主催者が用意した指定リストの中だけです。みんな同じ条件でアイデアを競うわけですね。
HEROZの林隆弘氏は、この大会を単なる技術コンペにしたくないと話しています。「AIと人間の知恵のぶつかり合いをエンターテインメントとして楽しめる」大会を目指すそうです。
過去のゲームAIと何が違う?
「ゲームに強いAI」は、これまでもたくさん登場してきました。でも、今回のポケカAIはそれらと少し違います。比べてみましょう。
将棋AI「Ponanza」は、2017年にプロ棋士の名人を破りました。100億局以上の自己対戦(AI同士の練習対局)で鍛えられた強さです。ただし将棋は、すべての駒が見える完全情報ゲームでした。
ポーカーAI「Libratus」や「Pluribus」は、相手の手札が見えないポーカーでプロに勝ちました。これは不完全情報ゲームへの挑戦として有名です。
ゲームAI「AlphaStar」(StarCraft)や「OpenAI Five」(Dota2)は、複雑なリアルタイム対戦で世界トップ級のプレイヤーを倒しました。
では、ポケカは何が新しいのでしょうか。
ポケカは「相手が見えない不完全情報」と「数千種のカード」と「運の要素」がすべて同時に絡む点が特別です。ポーカーよりも選択肢が多く、将棋のように先読みだけでは勝てません。だからこそ、世界の研究者が注目しているのです。
日本のユーザーや企業への影響
このコンテストは、日本にとっても意味が大きい出来事です。
まず、ポケモンカードは日本生まれのコンテンツです。世界90以上の国と地域で遊ばれている、日本発の世界的ゲームがAI研究の舞台になりました。
次に、主催のHEROZと松尾研究所はどちらも日本のAI企業・組織です。日本の技術力を世界にアピールする場にもなっています。
カードゲームが好きな中高生や、AIを学び始めた大学生を想像してみてください。好きなポケカを題材にAIを学べるのは、大きなモチベーションになりますよね。
さらに、企業にとっても無関係ではありません。不完全情報の中で意思決定するAIは、在庫の発注や金融取引、物流の最適化など、ビジネスの現場にも応用できる技術だからです。「見えない情報の中で最善手を選ぶ」力は、ゲームの外でこそ価値を発揮します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 誰でも参加できますか?
はい。参加費は無料で、個人でも最大5人のチームでも応募できます。Kaggleというサイト上で世界中から参加できます。
Q2. ポケカが強くないと参加できませんか?
カードの強さよりも、AIを作るプログラミングの力が中心になります。ただしルールやタイプ相性を理解していると有利です。
Q3. 賞金は合計いくらですか?
第1ラウンドで上位8チームに各3万ドル、第2ラウンドで優勝5万ドル・2位3万ドルなどが用意されています。優勝賞金は約800万円相当です。
Q4. なぜ将棋AIより難しいと言われるのですか?
将棋は盤面がすべて見えますが、ポケカは相手の手札が見えません。さらに運やカードの組み合わせも絡むため、AIにとって難易度が高いのです。
Q5. 一般の人も対戦を観られますか?
主催者は「観る人も楽しめる」エンターテインメントを目指すと話しています。今後、対戦を観戦できる形が用意される可能性があります。
まとめ
今回のポイントを振り返ります。
- ポケモン・HEROZ・松尾研究所が、ポケカ対戦AIの開発コンテストを開催
- 賞金は第2ラウンド優勝で5万ドル(約800万円)と大規模
- 相手の手札が見えない「不完全情報ゲーム」がAIの大きな壁
- 将棋やポーカーのAIとも違う、複雑な要素が同時に絡む難題
- 日本発のポケカが、世界のAI研究の新しい舞台になった
AIがどこまでポケカを攻略できるのか、これからの結果に注目してみてはいかがでしょうか。

