マネーフォワードがAI課金を無料可視化|1000社狙う

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • マネーフォワードが2026年8月17日、法人向け「マネーフォワード クラウドAIトークン管理」を無料で提供開始
  • ChatGPTやClaudeの利用量とコストを、ユーザー別・部署別・AIモデル別にダッシュボードで見える化できる
  • API連携かCSV取り込みでデータを集め、翌月の利用料の概算やコスト増減の原因特定まで対応
  • 背景にあるのは、企業の平均AI支出が月8万5521ドル(約1300万円)まで膨らんだ「AI課金のブラックボックス化」
  • 同社は1年以内に1000社の利用を目標に掲げ、法人カードによる決済の一元化まで狙っています

先月、自分の会社がAIにいくら払ったか、すぐに答えられますか。ChatGPTもClaudeも便利ですが、請求は部署ごとにバラバラ。気づけば誰も全体額を知らない、という会社は少なくありません。マネーフォワードが8月17日に出した無料サービスは、この「AI課金のブラックボックス」に光を当てます。

マネーフォワードが無料で出した「AIトークン管理」とは

マネーフォワードは2026年8月17日、「マネーフォワード クラウドAIトークン管理」の提供を始めました。

法人がAIサービスに使ったお金を、まとめて把握するためのサービスです。

ここでいうトークンとは、AIが文章を読み書きするときの単語のかたまりのことです。多くのAIサービスは、このトークンの量に応じて料金が決まります。使えば使うほど請求が増える仕組みです。

つまり「AIトークン管理」とは、社内で誰がどれだけAIを使い、いくらかかったのかを数える道具だと考えるとわかりやすくなります。

ちなみに、このサービスは無料です。マネーフォワードIDを取得すれば使えます。会計ソフトなど同社の既存サービスの契約は必要ありません。

何ができる?ダッシュボードでわかる4つのこと

1. 誰がいくら使ったかが人単位でわかる

ダッシュボード(数字をグラフや表で一覧表示する画面)に、ユーザーごとの利用量とコストが並びます。

部署別、AIモデル別の切り分けにも対応します。

「開発部のClaude利用が先月の2倍になっている」といった発見が、画面を開くだけでできるわけです。

2. 来月いくらかかるかの見当がつく

日本経済新聞の報道によると、翌月の利用料の概算を示す機能があります。

AI費用の困りごとは「使いすぎに気づくのが請求書を見た後」という点にあります。事前に概算が出れば、月の途中で手を打てます。

3. コストが増えた原因を追える

期間を区切ってコストを比べ、増減の原因を特定する機能も用意されています。

先月と今月を並べれば、跳ね上がった部署やモデルがすぐ浮かび上がります。

4. データはAPI連携でもCSVでも入れられる

データの取り込み方法は2種類です。API連携(サービス同士を自動でつなぐ仕組み)と、CSVファイルの手動アップロードです。

API連携が難しい環境でも、明細をダウンロードして流し込めば使えます。導入のハードルはかなり低いといえます。

さらに、同社が発行する「マネーフォワード ビジネスカード」で支払えば、AIサービスの決済そのものも一本化できます。

なぜ今、AIコストの見える化が必要なのか

この動きの裏には、はっきりした数字があります。

CloudZeroの調査によると、企業の1カ月あたりの平均AI支出は8万5521ドル(約1300万円、1ドル150円換算)に達し、前年から36%増えました。

もはや「ちょっとした実験費用」で済む金額ではありません。

さらに深刻なのが、会社が把握していないAI利用です。会社の承認を得ずに従業員が個人アカウントでAIを使うことを、シャドーAIと呼びます。

シャドーAIが多い組織は、少ない組織に比べて平均で約67万ドル(およそ1億円)の追加コストを負担しているという調査結果もあります。

見えない支出は、削れません。まず数えることが、コスト管理の出発点になります。

現場で起きている「3つの困りごと」

もう少し身近な場面で考えてみます。

ある中小企業の経理担当者は、月末に届くクレジットカードの明細に頭を抱えています。「OpenAI」「Anthropic」という英語の請求が複数並んでいるものの、どれが誰の分なのかわかりません。各部署に問い合わせるメールを送るところから、毎月の締め作業が始まります。

別の会社では、情報システム部の担当者が困っています。AI導入の効果を役員会で報告したいのに、「投資対効果はどうか」と聞かれても分母となる費用が出せないのです。効果を語る前に、使った金額の集計で数日を溶かしています。

スタートアップでは、逆の問題が起きます。エンジニアがAIエージェント(人の指示で作業を自動でこなすAI)を動かしっぱなしにした結果、月の請求が想定の3倍になっていた——そんな事故が珍しくありません。使いすぎに気づく仕組みがないと、開発の勢いがそのまま出費に変わります。

他のAIコスト管理ツールと何が違う?

AI費用を見える化するツール自体は、すでにいくつもあります。整理してみます。

まず海外勢です。Langfuseはオープンソース(誰でも中身を見られ、無料で使えるソフト)のAI監視ツールで、エンジニア向けの定番とされています。ただし利用するには、自社のプログラムに計測用のコードを埋め込む作業が必要です。

HeliconeはAPIの接続先を1行変えるだけで使える手軽さが売りでした。しかし2026年3月にMintlifyへ買収されて以降は、新機能の開発が止まっていると伝えられています。

CloudZeroは、AI費用を「顧客1人あたりいくら」といった事業の単位に結びつける分析が得意です。その分、本格的な導入作業が必要になります。

これらはいずれもエンジニアが使う道具です。

対してマネーフォワードのサービスは、経理・情シス・経営者が使う道具として設計されています。コードを書く必要はなく、CSVでも始められ、しかも無料。この組み合わせが最大の違いです。

国内のSaaS管理ツールとの関係

国内では、会社が使っているクラウドサービスを一覧管理する「SaaS管理ツール」が普及しています。代表格がジョーシスAdminaです。

Adminaは300以上のサービスと連携し、50IDまで無料、以降は1ユーザー月300〜500円程度とされています。ジョーシスは260以上の連携で1ユーザー月300円程度です。

面白いのは、このAdminaもマネーフォワードグループのサービスだという点です。「契約とアカウントの管理」はAdmina、「AIの使用量と課金の管理」は新サービスという役割分担が見えてきます。

日本企業にとって、これはどう効くのか

日本市場の事情を踏まえると、このサービスの意味がはっきりします。

2026年2月時点で、日本のインターネット利用者のうち生成AIを使った経験がある人は54.7%に達しました。一方でビジネスでの活用率には差があり、大企業46.5%に対して中小企業は32.4%にとどまります。

中小企業がAI導入をためらう理由のひとつが、費用が読めないことです。「月いくらかかるかわからないものは稟議に出せない」という壁は、現場で本当によく聞かれます。

無料で使えて、費用が事前に見える道具は、この壁を低くします。

もうひとつ大きいのがガバナンス(組織としての管理体制)の観点です。誰がどのAIを使っているかが一覧できれば、シャドーAIの発見にもつながります。情報漏えいリスクへの対策としても意味を持ちます。

マネーフォワードは1年以内に1000社の利用を目指すとしています。無料で入口を広げ、法人カードや会計ソフトへつなげる——同社らしい戦略といえます。

使い始めるときの流れと、押さえておきたい点

導入の手順はシンプルです。マネーフォワードIDを取得し、ダッシュボードにAIサービスのデータをつなぎます。API連携かCSV取り込みのどちらかを選びます。

ただし、いくつか理解しておきたい点があります。

対応するAIサービスはChatGPTやClaudeなど複数とされていますが、社内で使っている全てのAIが対象とは限りません。導入前に対応状況の確認をおすすめします。

また、このサービスが数えるのはAPI利用にともなうトークン課金が中心です。1人あたり定額のチャットプラン(ChatGPT Businessなど)の費用管理とは、性質が少し異なります。

そして当然ながら、見える化しただけでは支出は減りません。数字を見て「この使い方は本当に必要か」を判断する運用があって、初めて効果が出ます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 本当に無料ですか?追加料金はかかりませんか?

A. マネーフォワードIDを取得すれば無料で利用できると発表されています。会計ソフトなど他サービスの契約も不要です。ただし将来的な有料機能の追加については、現時点で明らかにされていません。

Q2. ChatGPTとClaude以外のAIにも対応していますか?

A. 「ChatGPTやClaudeなど」複数のAIサービスに対応すると案内されています。具体的な対応サービスの一覧は公式サイトでの確認が確実です。

Q3. エンジニアがいない会社でも使えますか?

A. 使えます。CSVファイルの取り込みに対応しているため、明細をダウンロードしてアップロードするだけでも始められます。プログラムを書く必要はありません。

Q4. 個人でAIを使っている場合も対象になりますか?

A. このサービスは法人向けです。個人利用の費用管理を目的としたものではありません。ただし会社として、従業員の個人アカウント利用(シャドーAI)を把握する用途には役立ちます。

Q5. マネーフォワードのビジネスカードは必須ですか?

A. 必須ではありません。カードを使うと決済も一元化できる、という位置づけです。カードなしでも利用量とコストの可視化は利用できます。

まとめ

  • マネーフォワードが2026年8月17日、「クラウドAIトークン管理」を無料で提供開始しました
  • ChatGPTやClaudeの利用量とコストを、ユーザー別・部署別・モデル別に見える化できます
  • 翌月の概算表示やコスト増減の原因特定にも対応し、API連携とCSV取り込みの両方が使えます
  • 背景には企業の平均AI支出が月約1300万円に達し、前年比36%増という現実があります
  • 海外ツールがエンジニア向けなのに対し、経理・情シス向けに設計されている点が差別化要素です
  • 同社は1年以内に1000社の利用を目標としています

まずは自社が先月AIにいくら使ったかを調べてみてください。その金額が即答できないなら、こうした可視化ツールを試す価値は十分にあります。

参考文献