- 2026年9月28日、AIエージェント「Manus」が大型アップデート「Manus 2.0」を公開しました
- 新アプリ「Cue」では、AIエージェント1体ごとに電話番号・メール・財布・パソコンが割り当てられます
- 新エンジン「Cascade」で、コストは32%減、作業時間は28.2%短くなったと発表されています
- ChatGPT Agentなどの競合との違いと、日本のユーザーが気をつけたい点を整理します
- Cueは招待コード制の早期アクセスで、今のところ無料です
「このお店に予約の電話をして、席が取れたら前金も払っておいて」。そんな頼み方がAIに通じる日が、思ったより早く来るかもしれません。Manusが公開した新アプリ「Cue」は、AIに電話番号と財布を持たせるという大胆な一歩を踏み出しました。この記事では、何ができるのか、どこまで信用していいのかを詳しく解説します。
Manus 2.0とCueとは?9月28日に何が発表されたのか
2026年9月28日(米国時間)、シンガポールに本社を置くManus(マナス)が「Manus 2.0」を発表しました。
Manusは、Webで調べものをして、資料を読み、ファイルを作るところまで自分で進める自律型AIエージェント(人の代わりに作業を最後までこなすAI)です。
今回のアップデートは大きく分けて3本柱です。
- Cascade(カスケード):作業を進めるしくみを作り直した新エンジン
- Manus Studio:資料・動画・ゲームまで作れるデスクトップ作業場
- Cue(キュー):AIに「身分」を持たせる新しい独立アプリ
このほか、クラウド上に専用のパソコンを借りる「Cloud Computer」、スマホから自分のPCを声で操作する「Remote Control」、メールやSlackの通知をきっかけに作業を始める「Automations」も加わりました。
中でも話題を集めているのがCueです。AIエージェントに専用の電話番号・メールアドレス・予算付きの財布・パソコンを渡すという発想は、これまでのAIアシスタントとは一線を画しています。
Cueの4つの持ち物|電話・メール・財布・パソコン
公式ブログによると、Cueのエージェントは1体ずつ自分の「身分」を持ちます。
電話番号とメールアドレス
エージェントには専用の電話番号とメールアドレスが割り当てられます。
そのため、お店や相手先にエージェント自身の名義で連絡ができます。あなたの個人番号を相手に教える必要はありません。
さらに、かかってきた電話にエージェントが出て、内容を要約してCueに残してくれる機能もあります。
ただし電話番号は「一部の国のみ」の提供です。国によっては音声通話だけの対応とされています。
予算付きの財布(ウォレット)
ユーザーが上限額を決めておくと、エージェントはその予算の範囲内で支払いができます。
公式の例では、レストランのQRコードを使って料理を注文したり、行列の順番を取っておいたりする使い方が紹介されています。
なお、どの決済サービスを使うのか、1回ごとに承認が必要なのかといった細かい仕組みは、発表時点では明らかにされていません。
自分専用のパソコンとグループチャット
各エージェントはクラウド上に自分のパソコンを持ち、あなたがアプリを閉じた後も作業を続けます。
複数のエージェントを1つのグループチャットに入れて、同じ目標に向けて仕事を分担させることもできます。調べる係、予約する係、まとめる係に分けるイメージです。
最終的な判断はユーザーに残る設計だと説明されています。
新エンジン「Cascade」とManus Studioで何が変わる?
コスト32%減のCascade
Manusは、作業を進める土台を「Cascade」という新しい仕組みに入れ替えました。
公式発表では、ある条件でのテストでトークン(AIが処理する文字の単位)使用量が23.2%減、作業時間が28.2%短縮、費用が32%減ったとしています。
ただしこれは「1つの構成で試した結果」と明記されています。第三者の比較テストではないので、実際の効果は使い方で変わると考えておきましょう。
動画もゲームも作れるStudio
Manus Studioは、文書・表計算・PDF・スライド・Webサイト・コードをまとめて扱えるデスクトップアプリです。
追加機能の「Video Editor」では、30〜60秒の商品紹介動画などをタイムラインで編集できます。AIに演出を任せる「Alchemy」モードもあります。
「Game Dev」では、テンプレートから遊べるゲームを作れます。複数人で遊ぶゲームなら、Cloud Computerをサーバー代わりに使えます。
対応環境はWeb、macOS・Windowsのデスクトップ版、iOS・Androidのスマホ版です。CueのiOS版はApp Storeの審査待ちとされています。
こんな場面で役立つ|Cueの活用シーン3つ
「AIに電話と財布を持たせて何になるの?」と思った方もいるでしょう。具体的な場面を想像してみてください。
シーン1:忙しい共働き家庭の「週末の段取り」
金曜の夜、子どもの誕生日会の準備が何も終わっていないと気づいたとします。
Cueに「土曜の昼に8人で入れるお店を探して、予約して。予算は1人3000円まで」と頼みます。
エージェントは候補のお店を調べ、自分の番号で電話やメールをして空きを確認します。予約が取れたら、結果の要約だけが届きます。あなたは寝かしつけに集中できます。
シーン2:個人事業主の「問い合わせ窓口」
ネットで雑貨を売る個人事業主にとって、作業中にかかってくる電話は悩みの種です。
エージェントに電話番号を持たせて窓口にすれば、問い合わせの電話に出て用件をまとめてもらえます。
「在庫はありますか」程度の質問なら、エージェント同士のグループチャットで在庫係に確認し、そのままメールで返事をする流れも考えられます。
シーン3:出張中の会社員の「行列番」
出張先で人気のラーメン店に行きたいけれど、会議が長引きそうな日もあるでしょう。
エージェントがお店のQRコードから順番待ちに登録し、呼ばれそうな時間を知らせてくれます。
先に料理を注文して支払いまで済ませておけば、着いてすぐに食べられます。小さな時短ですが、毎日積み重なると大きな差になります。
ChatGPT Agent・Metaのエージェントとの違い
AIエージェントの分野は、2026年に入って競争が一段と激しくなっています。主なサービスと比べてみましょう。
| サービス | 得意なこと | Cueとの違い |
|---|---|---|
| Manus Cue | 電話・メール・支払いで現実の用事を代行 | エージェント自身が連絡先と財布を持つ |
| ChatGPT Agent(OpenAI) | ブラウザ操作での調査・予約・買い物 | 基本はユーザーのアカウントで操作する |
| Meta Muse系のエージェント | SNSやメッセージと連携した日常の手助け | Metaのアプリの中での利用が中心 |
| Genspark | 調査レポート作成、電話代行など | 1回ごとのタスク依頼が中心 |
いちばんの違いは、エージェントが「あなたの代理」ではなく「独立した担当者」として動く点です。
ChatGPT Agentなどは、基本的にユーザーのブラウザやアカウントを借りて操作します。一方Cueは、エージェント自身の番号・アドレス・財布で動きます。
いわば、あなた専属の秘書に名刺と経費カードを渡すようなものです。便利さは大きい反面、秘書が勘違いしたときの被害も大きくなります。
見逃せないリスクとManusの経営事情
「財布を持つAI」の安全性
AIがお金を払えるようになると、だまされたときの損害も現実のお金になります。
たとえばWebページに悪意ある指示を隠しておき、AIをだまして送金させるプロンプトインジェクション(AIへの不正な指示の埋め込み)が心配されています。
セキュリティ企業Salt Labsの研究者ヤニフ・バルマス氏は、ガードレール(AIの安全装置)だけに頼らず、何重もの防御を設計すべきだと指摘しています。
Cueでは予算の上限を決められますが、1回ごとの承認のしくみは公表されていません。使うなら、上限は小さく設定するのが安全です。
Meta買収の破談と資金調達
Manusの経営にも大きな動きがありました。
Metaは2025年12月、Manusを約20億ドル(約3000億円)で買収すると発表しました。しかし中国当局が安全保障を理由に反対し、買収は白紙に戻りました。
その後Manusは独立企業として再出発し、評価額40億ドル(約6000億円)で5億ドル(約750億円)の資金調達を進めていると報じられています。
Manus 2.0は、独立後の「勝負の一手」と言えるでしょう。
日本のユーザー・企業への影響
Manus自体は日本語で使えるため、Studioの資料作成やAutomationsは日本からでも試しやすいです。
一方、Cueの目玉である電話番号は「一部の国のみ」の提供です。日本の電話番号が使えるかどうかは、発表時点で明らかになっていません。
日本の飲食店は電話予約の文化が根強く残っています。もし日本の番号に対応すれば、予約代行の需要はかなり大きいはずです。
ただし日本では、AIからの電話に店側がどう対応するかというマナーの問題も出てきそうです。AIによる電話かどうかを最初に名乗るといったルール作りが求められるかもしれません。
企業の場合は、社外への連絡や支払いをAIに任せる前に、社内ルールの整備が欠かせません。誰の責任で、いくらまで任せるのかを先に決めておきましょう。
なお、Manusでは8月にMetaとの分離にともなうデータ削除もありました。業務データを預けるなら、定期的なバックアップも習慣にしておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Q1. Cueは無料で使えますか?
早期アクセス期間中は無料です。ただし招待コードが必要で、公式ブログでは先着順のコード「MEETCUE」が案内されています。正式版の料金はまだ発表されていません。
Q2. 日本でもエージェントに電話番号を持たせられますか?
現時点では電話番号は「一部の国のみ」の提供で、日本が対象かは公表されていません。メールやパソコンなど、ほかの機能は日本からも試せる可能性があります。
Q3. AIが勝手に大金を使ってしまうことはありませんか?
ユーザーが予算の上限を設定し、その範囲内でのみ支払う仕組みです。ただし承認の細かいルールは未公表のため、最初は少額の上限で試すのがおすすめです。
Q4. 今までのManusは使えなくなりますか?
いいえ。Manus 2.0は従来のManusのアップデートで、Web・デスクトップ・スマホから引き続き使えます。Cueは別アプリとして追加で提供されます。
Q5. Cloud Computerの料金はいくらですか?
Cloud Computerは別途購入が必要とされていますが、具体的な価格は発表時点では公開されていません。
まとめ
- Manusは2026年9月28日に「Manus 2.0」と新アプリ「Cue」を公開しました
- Cueのエージェントは電話番号・メール・予算付き財布・パソコンを持ち、現実の用事を代行します
- 新エンジンCascadeで、コスト32%減・作業時間28.2%短縮とされています(1構成でのテスト)
- 電話番号は一部の国のみで、日本対応は未定です
- 支払いを任せるAIには、だまされるリスクもあるため少額の上限から試すのが安全です
まずはManus 2.0のStudioやAutomationsで、身近な資料作成や定型作業を任せるところから試してみてください。