AIがマウスとキーボードを操作する時代が到来
2025年10月7日(現地時間)、Google DeepMindが発表した「Gemini 2.5 Computer Use model」は、AI技術の新たな転換点を示すものとなりました。このモデルは、AIが実際のコンピューター画面を理解し、クリックや入力などの操作を直接実行できる画期的な技術です。
従来のAIツールは、特定のソフトウェアやアプリケーション内での作業に限定されていました。しかし、Gemini 2.5 Computer Use modelは、一般的なコンピューター環境で人間と同じようにマウスカーソルを動かし、キーボードで文字を入力し、画面上の要素をクリックすることができます。これは「AIエージェント」という概念を大きく前進させる技術革新といえるでしょう。
既存のライバルモデルを上回る性能を実証
Googleはこのモデルのベンチマークテストにおいて、AnthropicのClaudeや他のOpenAIモデルを上回る性能を示したと発表しています。特に、複雑なワークフローの実行や、複数のアプリケーションを跨いだ作業において、高い精度と効率性を発揮することが確認されています。
具体的には、メールの作成・送信、ウェブブラウザでの情報検索、スプレッドシートでのデータ処理、プレゼンテーションの作成など、日常的なオフィス業務をAIが代行できる可能性を示しています。これまでRPAツールが担っていた定型作業の自動化を、より柔軟で知的な方法で実現できる可能性があります。
日本企業への影響と活用可能性
このテクノロジーは、特に日本企業にとって大きな意味を持ちます。日本のビジネス環境では、Excel作業やPowerPoint資料作成、メール対応など、コンピューター上での定型業務が多く存在します。Gemini 2.5 Computer Use modelは、これらの業務を人間と同じ操作方法で自動化できるため、既存のシステムを大幅に変更することなく導入できる利点があります。
例えば、月次レポートの作成プロセスにおいて、AIが複数のシステムからデータを収集し、Excelで集計・分析を行い、PowerPointで報告資料を作成するといった一連の作業を、人間の監督の下で自動実行することが可能になります。
また、カスタマーサポートの現場では、顧客からの問い合わせに応じて適切なシステムにアクセスし、情報を検索・確認して回答を作成するプロセスを、AIが画面操作を通じて実行できるようになるでしょう。
セキュリティと導入時の注意点
一方で、AIがコンピューターを直接操作するということは、セキュリティ面での新たな課題も生じます。特に機密情報を扱う企業においては、AIによる画面操作の記録・監視体制や、アクセス権限の適切な管理が重要になります。
また、AIが誤操作を行った場合の対応手順や、人間による適切な監督体制の構築も必要です。現段階では開発者向けの公開に留まっているため、実際の企業導入までには十分な検証と準備期間が必要でしょう。
未来への展望
Gemini 2.5 Computer Use modelの登場は、AIと人間の協働関係を根本的に変える可能性を秘めています。単純な作業の自動化から始まり、より複雑な判断を伴う業務まで、AIが人間をサポートする範囲が大幅に拡大することが予想されます。
日本企業がこの技術を効果的に活用するためには、現在の業務プロセスの見直しと、AI導入に向けた組織体制の整備が急務となるでしょう。また、従業員のAIリテラシー向上も重要な課題として浮上してきます。
この革新的な技術が、日本のデジタル変革をさらに加速させる原動力となることが期待されています。
参考文献:https://blog.google/technology/google-deepmind/gemini-computer-use-model/