• Googleが2026年9月15日、音声AIモデル「Gemini 3.8 Live」と「3.8 Live Extended Thinking」を公開
  • 97言語を会話の途中で自動検出して切り替え、話しながら裏でツールも実行できる
  • 音声品質指数82.6でOpenAIのGPT-Live-1やxAIのGrokを抜いて首位に
  • 入力音声は1時間0.84ドルからで、ライバルの約4〜7分の1という安さ
  • 日本でもSearch Live・Geminiアプリ・Gemini APIから順次使える

「AIと話すと、こちらが言い終わるまで待たされて会話にならない」と感じたことはありませんか?Googleが9月15日に公開したGemini 3.8 Liveは、97言語を会話中に切り替え、考えながら話し、裏で調べ物まで済ませる音声AIです。この記事では、その仕組み・ライバルとの差・料金・日本での使い方をまとめて解説します。

Gemini 3.8 Liveとは?2つのモデルの違い

Gemini 3.8 Liveは、Google DeepMindが開発した音声対音声(Speech to Speech)のAIモデルです。

音声対音声とは、人の声をいったん文字に直さず、声のまま理解して声のまま返す方式のことです。文字変換をはさまないので、返事が速く、声の調子や間の取り方も自然になります。

今回は性格の違う2つのモデルが同時に公開されました。

Gemini 3.8 Live(標準版)

大量のユーザーをさばく用途向けの、速さとコスト重視のモデルです。

店舗の案内、コールセンターの一次対応、ゲームのキャラクターとの会話など、「たくさんの人と、テンポよく話す」場面に向いています。

Gemini 3.8 Live Extended Thinking(思考拡張版)

Extended Thinking(拡張思考)とは、答える前にAIが頭の中で長く考える仕組みのことです。

従来の音声AIは「考えている間は黙ってしまう」のが弱点でした。Extended Thinking版は考えながら同時に話すことができます。

たとえば複雑な質問をすると「ちょっと調べますね、いま契約内容を確認しています」と経過を口で伝えながら裏で処理を進めます。人間のオペレーターが電話口でやっていることと同じです。

会話中に97言語を切り替え、話しながら裏で作業する3つの新機能

両モデルに共通する新機能は、大きく3つあります。

1. 97言語の自動検出と切り替え

会話の途中で言語が変わっても、AIが自動で気づいて切り替えて返事をします。設定変更は不要です。

日本語で話しかけ、途中で英語の固有名詞や中国語の質問が混ざっても、そのまま会話が続きます。訪日客の多いホテルや駅の案内には特に効きそうです。

2. 会話を止めずにツールを実行

ツール実行(AIが外部のシステムを呼び出すこと)を、会話の裏側で並行して行えます。

これまでは「予約状況を調べます」と言った後に数秒の沈黙が生まれていました。新モデルは検索や在庫確認を裏で走らせつつ、雑談や次の質問に答え続けられます。

3. ほぼリアルタイムの映像理解

カメラの映像を毎秒1コマのペースで取り込み、見えているものについて会話できます。

スマートグラスやロボット、スマホのカメラを向けながら「これ何?」と聞く使い方が想定されています。

ちなみに、生成される音声にはすべてSynthID(AIが作った音声だと後から判別できる透かし)が埋め込まれます。なりすまし対策です。

ベンチマークで首位|GPT-Live-1・Grokとの比較

音声AIの評価機関Artificial Analysisなどの指標で、Extended Thinking版は主要な項目で1位を取っています。

指標Gemini 3.8 Live Extended ThinkingGPT-Live-1 Astra(OpenAI)Grok Voice Think Fast 2.0(xAI)
Speech to Speech品質指数82.681.581.3
τ-Voice(音声エージェントの仕事完了率)68.6%67.9%56.5%
τ³-Banking(銀行業務の対応力)35.1%32.0%16.5%(xAI-Realtime)
Big Bench Audio(音声での推論)97.7%

Speech to Speech品質指数は、聞き取り・返答の正確さ・自然さをまとめて点数化したものです。3社の差は1ポイント前後と小さく、音声AIは横並びの激戦に入ったことがわかります。

一方でτ-Voiceのような「実際に仕事をこなせるか」の指標では、Grokとの差が12ポイントと大きく開いています。

標準版のGemini 3.8 Liveは品質指数76.0で、ライバルの上位モデルには届きません。ただし後述の料金を見ると、この差は納得できるものです。

なお、Speech Agent Arena(人が聞き比べて投票する順位)では2位でした。数値では首位でも、体感での好みは分かれています。

料金は1時間0.84ドルから|ライバルの4〜7分の1

今回いちばん驚かれているのが料金です。

Artificial Analysisの試算によると、音声入力1時間あたりのコストは次のとおりです(1ドル=約150円換算)。

モデル入力音声1時間あたり円換算
Gemini 3.8 Live0.84ドル約126円
Gemini 3.8 Live Extended Thinking3.50ドル約525円
Grok Voice Think Fast 2.04.80ドル約720円
GPT-Live-1 Astra5.83ドル約875円

標準版はGPT-Live-1の約7分の1、Extended Thinking版でも約6割の価格です。しかも品質はExtended Thinking版が上回っています。

Googleの公式料金表では、音声入力が1分0.005ドル、音声出力が1分0.018ドルと定められています。さらに無料枠でも両モデルを試せます。

OpenAIのGPT-Live-1は音声部分が1分0.05ドルで、裏で動く推論モデル(GPT-6 Astraなど)の料金が別にかかる仕組みです。Googleは1つのモデルで完結するぶん、見積もりがしやすいと言えます。

どこで使える?一般ユーザー・開発者・企業の3ルート

9月15日から順次提供が始まっています。

一般ユーザー

GoogleアプリのSearch Live(検索Live)で、両モデルが使えます。日本では2026年3月から提供されている機能なので、日本語でも試せます。

Geminiアプリの「Gemini Live」でも利用できます。Extended Thinking版はGoogle AI Pro(月2,900円)またはUltra(月14,500円)の加入者向けで、GmailやKeepでは全加入者に開放されます。

開発者

Gemini APIとGoogle AI Studioで公開されています。接続はWebSocket(つなぎっぱなしで双方向にデータを送る方式)で、音声は16kHzで入力、24kHzで出力です。

LiveKit・Pipecat・Vercel・Agora・LangChainといった音声アプリの定番ツールがすでに対応しています。

企業

Gemini Enterpriseでプライベートプレビュー中です。Salesforce、ServiceNow、Genspark、医療のLumerisなどが先行導入パートナーとして名前を連ねています。

身近な活用シーン3つ

具体的にどう変わるのか、3つの場面で想像してみてください。

訪日客が多い温泉旅館のフロント

夕方のチェックイン時、韓国語のお客さまと英語のお客さまが同時に並んでいるとします。

タブレットのGemini 3.8 Liveに向かって話しかけてもらえば、それぞれの言語で夕食の時間や大浴場の場所を案内できます。途中で日本語のスタッフが口をはさんでも、AIはそのまま3言語で会話を続けます。

通販会社の電話サポート

「先週注文した商品がまだ届かない」という電話に、Extended Thinking版が応対します。

AIは「注文番号を確認しますね」と言いながら、裏で配送システムを検索。沈黙をつくらず「いま配送状況が出ました、今日の午後に届く予定です」と答えます。τ³-Bankingで35.1%というスコアは、こうした複数手順の業務にどこまで対応できるかの目安です。

中学生の英語学習

英語の音読練習で、わからない単語が出てきたときに日本語で「これどういう意味?」と聞けば、AIが日本語で説明して英語に戻ります。

言語を切り替える操作がいらないので、学習の流れが途切れません。カメラで教科書を写せば、そのページの内容についても質問できます。

日本市場への影響

日本のユーザーと企業にとって、注目すべき点は3つあります。

1つ目は多言語対応の負担が激減することです。訪日客は過去最多の水準が続き、観光・小売・交通の現場では多言語対応が長年の課題でした。97言語の自動切り替えは、英語しか対応できなかった現場の選択肢を一気に広げます。

2つ目はコールセンターのコスト構造です。1時間126円という単価は、人件費と比べれば桁が違います。もちろんAIが全部を置き換えるわけではありませんが、営業時間外の一次対応や、混雑時の待ち時間解消には現実的な選択肢です。

3つ目は国内勢との競争です。国内ではNTTの「tsuzumi」のような日本語特化LLMや、各社のコールセンター向け音声AIが企業向けに展開されています。Googleが無料枠つきで日本語対応のAPIを出したことで、国内ベンダーは価格と日本語品質の両面で対抗を迫られます。

一方で注意点もあります。ベンチマークは英語中心で測られており、日本語での聞き取り精度や敬語の自然さは、実際に試して確かめる必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q. 無料で試せますか?

はい。Gemini APIの無料枠で両モデルを試せます。一般ユーザーはGoogleアプリのSearch Liveで無料で使えます。Geminiアプリ内のExtended Thinking版はGoogle AI Pro/Ultraの加入が必要です。

Q. 標準版とExtended Thinking版、どちらを選べばいいですか?

雑談や簡単な案内なら標準版で十分です。予約変更や契約内容の確認など、複数の手順を踏む仕事をさせるならExtended Thinking版が向いています。料金は約4倍差なので、まず標準版で試すのがおすすめです。

Q. 日本語の精度は英語と同じですか?

公式には97言語に対応していますが、公開されているベンチマークは主に英語で測定されています。日本語の実力は、実際に試して確認することをおすすめします。

Q. AIの声だとバレますか?

生成音声にはSynthIDという透かしが入っており、専用ツールで判別できます。聞いただけではわかりにくいですが、なりすまし電話などへの悪用を防ぐ仕組みです。

Q. ChatGPTの音声機能と何が違いますか?

OpenAIのGPT-Live-1は音声部分と推論モデルを分けて課金する仕組みです。Gemini 3.8 Liveは1つのモデルで完結し、料金も安く抑えられています。品質は指数上ほぼ互角です。

まとめ

  • Googleが9月15日に音声AI「Gemini 3.8 Live」と「Extended Thinking」版を公開
  • 97言語を会話中に自動切り替え、話しながら裏でツールを実行できる
  • 品質指数82.6でGPT-Live-1(81.5)・Grok(81.3)を抜いて首位
  • 料金は入力1時間0.84ドルからで、ライバルの4〜7分の1
  • 日本ではSearch Live・Geminiアプリ・Gemini APIで利用可能

まずはGoogleアプリのSearch Liveを開き、日本語と英語を混ぜて話しかけて、切り替えの速さを体感してみてください。

参考文献