はじめに:AIニュースの話題性
皆さん、こんにちは!今回は、私たちの生活に直結する、日本の行政(ぎょうせい)に関する大きなAIニュースをご紹介します。
2025年12月2日、デジタル庁は、行政で使うAIの基盤である「ガバメントAI」で試すための、国内で開発された大規模言語モデル(LLM)の公募(こうぼ)を開始しました 1。
「ガバメントAI」「国産LLM」「機密性2情報」など、少し難しい言葉が出てきますが、これは「日本の役所の仕事にAIを本格的に導入する」という、とても重要な一歩です。なぜ今、日本の行政はAIを必要としているのでしょうか?そして、なぜ「国産」のAIにこだわるのでしょうか?
この記事では、このデジタル庁の取り組みを、日本の社会が抱える問題と、私たちの生活がどう変わるかという視点から、わかりやすく解説していきます。
「ガバメントAI」って何?
「ガバメントAI」とは、政府や役所(行政機関)の仕事のために作られたAIのことです。デジタル庁は、このガバメントAIの取り組みの一環として、職員が生成AIを使える環境を「源内(げんない)」というプロジェクト名で構築し、利用を進めています。
なぜ行政にAIが必要なのか?
デジタル庁の発表文にもあるように、日本は今、「人口減少」と「少子高齢化」という大きな問題に直面しています。これは、「行政の担い手(働き手)が減っている」ということです。
役所の仕事は、私たちが安心して暮らすために欠かせません。しかし、働く人が減ってしまうと、公共サービスを維持したり、さらに良くしたりすることが難しくなってしまいます。
そこで、AIの力が必要になります。AIに「書類の作成」「会議の議事録の要約」「問い合わせへの回答のサポート」といった仕事を任せることで、職員は「人間にしかできない、より重要な仕事」に集中できるようになります。これが、行政の効率を上げ、公共サービスを維持・強化するための、日本の大きな戦略なのです。
なぜ「国産LLM」が必要なのか?
世界には、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなど、素晴らしい性能を持つAIモデルがたくさんあります。しかし、デジタル庁は、あえて「国内開発LLM」を公募し、試験的に導入しようとしています。これには、主に3つの大きな理由があります。
理由1:日本語と行政文書への適合性
日本の行政文書には、独特の言い回しや表現が多く使われています。海外のAIモデルは、一般的な英語や日本語のデータで学習していますが、「行政文書特有の記述様式」を深く理解しているとは限りません。
国内で開発されたLLMは、日本の公的な文書や、日本語のニュアンスを深く学習しているため、「行政実務の質向上・省力化」に、より貢献できると期待されています。
理由2:最高レベルのセキュリティ確保
これが最も重要な理由の一つです。行政が扱う情報の中には、国民の個人情報や国の機密情報など、絶対に外部に漏れてはいけない情報が含まれています。
デジタル庁は、行政で扱う情報の中でも特に重要な「機密性2情報」(外部に漏れると国民生活や行政運営に大きな影響を与える情報)をAIで取り扱うことを想定しています。そのため、公募の条件として、「ガバメントクラウド上の推論環境で動作すること」、つまり、国が管理する安全なクラウド環境でAIが動くことを求めています。
海外のAIモデルの中には、利用したデータが開発元のサーバーに送られ、学習に使われる可能性があるものもあります。しかし、国産LLMを国の管理下で使うことで、情報漏洩のリスクを最小限に抑え、行政の信頼性を確保することができます。
理由3:日本のAI技術の発展
国産LLMを積極的に活用することは、日本のAI技術や産業全体を育てることにもつながります。行政という大きな市場で使われることで、国内のAI開発企業は技術を磨き、さらに良いモデルを開発するモチベーションになります。これは、日本の国際競争力を高める上でも非常に大切なことです。
公募の具体的な内容とスケジュール
今回の公募は、2025年12月2日から2026年1月30日まで行われます。
選ばれた国内開発LLMは、2026年夏頃から、デジタル庁の「源内」上で試験的に導入され、行政の現場で本当に使えるのかどうかが厳しくチェックされます。
| スケジュール | 内容 |
| 2025年12月2日〜2026年1月30日 | 国内開発LLMの公募期間 |
| 2026年1月〜 | 一部省庁で「源内」の試験的利用開始 |
| 2026年2月〜3月頃 | 国内開発LLMの選定 |
| 2026年5月頃 | 「源内」の他府省庁への展開 |
| 2026年夏頃 | 選定された国内開発LLMの試験導入開始 |
この試験導入の結果が良ければ、2027年度以降には、本格的に政府職員全員がその国産LLMを使えるようになる予定です。
私たちの生活への影響
行政のAI活用は、私たちの生活にどのような良い変化をもたらすのでしょうか?
1. 待ち時間の短縮とサービスの向上
役所での手続きや、電話での問い合わせなど、「待たされる時間」が短くなる可能性があります。AIが書類のチェックや情報検索を素早く行うことで、職員は私たち一人ひとりへの「より丁寧な対応」や「複雑な相談への集中」ができるようになります。
2. 災害時などの迅速な対応
災害が発生した際など、緊急時には大量の情報処理が必要になります。AIが関係省庁の情報を素早くまとめたり、必要な文書を自動で作成したりすることで、より迅速で正確な対応が可能になり、私たちの安全を守ることにつながります。
3. 税金の効率的な使い方
行政の仕事が効率化されるということは、私たちの税金がより無駄なく使われるということです。AIが職員の残業を減らしたり、作業ミスをなくしたりすることで、行政コストの削減にもつながります。
日本のAI戦略の未来
デジタル庁のこの取り組みは、単なるAI導入ではなく、「日本の行政の未来」をかけた大きな挑戦です。
「人口減少」という避けられない課題に対し、「AI」という最新の技術で立ち向かい、「公共サービスを維持・向上させる」という強い意志が感じられます。
AIは、私たち一人ひとりの仕事だけでなく、国という大きな組織のあり方も変えようとしています。このガバメントAIの成功は、世界各国からも注目されており、日本のAI戦略のモデルケースとなる可能性を秘めています。
私たち国民も、行政のAI活用に注目し、「もっとこうなったら便利なのに」という声を上げていくことが、より良い未来を作るための鍵となるでしょう。
参考文献
[1] ガバメントAIで試用する国内大規模言語モデル(LLM)の公募について – デジタル庁
URL:https://www.digital.go.jp/news/1b093bba-a4c8-4001-8a92-ff3667a69198


