150兆円IPO競争|AnthropicがOpenAI逆転

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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  • OpenAIとAnthropicが、そろって株式の新規上場(IPO)に動き出しました
  • 時価総額でAnthropicが約965億ドル(約145兆円)となり、初めてOpenAIを逆転しました
  • OpenAIは「1兆ドル(約150兆円)の評価にこだわり、上場を2027年に延ばすか検討中です
  • ソフトバンクの株価が1日で約5.7兆円ぶん下落するなど、日本にも影響が広がっています
  • 先に上場したSpaceXの株価が乱高下し、「AIバブル」への警戒感が高まっています

いま、AIの世界で「上場レース」が始まっていることをご存じですか。ChatGPTのOpenAIと、ClaudeのAnthropic。この2強がほぼ同時に株式市場への上場をめざしています。ところが、先頭を走っていたはずのOpenAIが足踏みを始めました。何が起きているのか、やさしく整理します。

AI2強がそろって上場へ|いま何が起きている?

2026年の初夏、AI業界に大きなニュースが続きました。

Anthropicが6月1日、上場のための書類を非公開で提出しました。これは「IPO(新規株式公開)」への正式な第一歩です。

その1週間後、OpenAIも6月8日に「S-1」と呼ばれる上場書類を提出しました

IPOとは、会社の株を一般の投資家が買えるようにして、市場からお金を集めるしくみです。上場すると会社は大きな資金を手に入れられます。

つまり、AIをリードする2社が、ほぼ同じタイミングで「株式市場デビュー」に名乗りを上げたのです。これは今までにない出来事でした。

AnthropicとOpenAIを徹底比較

2社は同じ「上場レース」を走っていますが、中身はかなり違います。数字で見てみましょう。

時価総額でAnthropicが初めて逆転

Anthropicは6月、約650億ドル(約9.8兆円)を集める資金調達を実施し、評価額が約965億ドル(約145兆円)に達しました

この金額は、2026年2月時点の約3800億ドルから、わずか数カ月で2倍以上にふくらんだ計算です。

そして注目すべきは、この965億ドルという評価が、初めてOpenAIを上回ったことです。長らく「AIの王者」だったOpenAIを、Claudeを作るAnthropicが追い抜きました。

売上の伸びが桁違い

Anthropicの売上の伸びは、まさに桁違いです。

年間の売上ペースは、2025年末の約90億ドルから、2026年5月末には約470億ドル(約7兆円)まで急拡大しました。半年ほどで5倍以上です。

いっぽうのOpenAIは、直近の資金調達で評価額が約8520億ドル(約128兆円)とされています。数字だけ見れば互角の勝負に見えます。

ただOpenAIは、2026年1〜3月に約213億ドル(約3.2兆円)の巨額赤字を出しました。稼ぐ力と使うお金のバランスが、投資家から厳しく見られています。

OpenAIはなぜ上場を2027年に延ばす?

先に書類を出したOpenAIですが、ここへ来て「延期」の話が浮上しました。

もともとOpenAIは2026年9月ごろの上場をめざしていました。ところが6月末、「上場を2027年まで遅らせるか検討している」と報じられたのです。

理由は、サム・アルトマンCEOが「1兆ドル(約150兆円)」という評価額にこだわっているからです。

いまの評価額は約8520億ドル。1兆ドルには少し足りません。アドバイザーは2つの案を示したと言われています。

  • いま急いで上場する。ただし評価額は目標より下げる
  • 2027年まで待つ。そのかわり1兆ドルをめざす

アルトマン氏は、評価額を下げる案を「論外だ」と一蹴したと伝えられています。プライドと市場の現実が、正面からぶつかっている状態です。

SpaceXの「荒れたデビュー」が水を差す

OpenAIが慎重になった背景には、もう1社の存在があります。イーロン・マスク氏のロケット企業SpaceXです。

SpaceXは2026年6月12日に上場し、850億ドル(約13兆円)以上を集める史上最大級のIPOとなりました。上場時の評価額は約1.77兆ドルにのぼりました。

ところが、その後の株価が大きく揺れました。1株150ドルで始まった株価は225ドルを超えたあと、6月26日には約153ドルまで急落したのです。

ピークからわずか2週間で3割以上の下落。この乱高下を見て、市場が「高すぎる会社」への熱を冷ましつつあると受け止められました。

OpenAIのアドバイザーも、この荒れた値動きを警戒材料として指摘したと報じられています。先を行くSpaceXのつまずきが、AI2強の背中に冷や水を浴びせた形です。

ソフトバンクを直撃|日本市場への影響

「アメリカの話でしょう?」と思うかもしれません。でも、この上場レースは日本と深くつながっています。カギをにぎるのはソフトバンクグループです。

ソフトバンクはOpenAIに約650億ドル(約9.8兆円)を投資し、約13%の株を持つ第2位の株主です。1位はマイクロソフト(約27%)です。

問題は、ソフトバンクがこの投資のために約400億ドル(約6兆円)のつなぎ融資を借りていることです。返済の期限は2027年3月に迫っています。

もしOpenAIの上場が2027年後半までずれ込むと、ソフトバンクは大きな返済を、上場による現金化のないまま迎えることになります。

実際、OpenAIの延期報道が出た日、ソフトバンクの株価は東京市場で一時14%も下落し、時価総額が約380億ドル(約5.7兆円)ぶん失われました

孫正義会長は、AIへの巨額投資に自信を見せています。「AIバブルという言葉を口にするのは冒とくだ」とまで語ったと伝えられます。日本の個人投資家にとっても、けっして遠い話ではありません。

これは「AIバブル」の兆候なのか?

今回の一連の動きで、いちばん多く聞かれる言葉が「AIバブル」です。

バブルとは、会社の実力以上に株価や評価額がふくらみ、やがてはじけてしまう状態のことです。

心配される理由は、はっきりしています。OpenAIは巨額の赤字を出しながら、1兆ドルの評価をめざしています。売上は伸びていても、利益はまだ先の話です。

いっぽうで、Anthropicは2028年の黒字化を見込むなど、成長の勢いも本物です。売上が半年で5倍になる会社は、そう多くありません。

つまり今は、「本物の急成長」と「行きすぎた期待」が混ざり合っている時期だと言えます。上場レースの行方は、この見きわめのテストにもなりそうです。

よくある質問(FAQ)

Q. IPO(上場)って、そもそも何ですか?

会社の株を一般の投資家が売り買いできるようにすることです。会社は市場から大きな資金を集められ、投資家は成長した会社の株で利益をねらえます。

Q. AnthropicとOpenAIは、どちらが上場が早いのですか?

いまのところAnthropicの方が早い見込みです。早ければ2026年10月をめざしています。OpenAIは2027年への延期を検討中で、順番が逆転する可能性があります。

Q. 日本からこれらの会社の株は買えますか?

上場すればアメリカの株式市場で取引されます。日本の証券会社でも、米国株を扱っていれば購入できる場合があります。ただし上場前の株を個人が買うのは簡単ではありません。

Q. ソフトバンクの株を持っていると、影響はありますか?

可能性はあります。ソフトバンクはOpenAIの大株主なので、OpenAIの上場が進むか遅れるかで、株価が動きやすくなっています。

Q. AIバブルは本当にはじけるのですか?

それは誰にもわかりません。急成長は事実ですが、赤字や高すぎる評価を心配する声もあります。楽観と慎重、両方の見方があると知っておくことが大切です。

まとめ

AI2強の上場レースは、業界の未来を占う大きな出来事です。要点を振り返ります。

  • OpenAIとAnthropicが、そろってIPO(新規上場)に動き出した
  • 時価総額でAnthropicが約965億ドル(約145兆円)となり、初めてOpenAIを逆転
  • OpenAIは1兆ドルの評価にこだわり、上場を2027年に延ばすか検討中
  • 先に上場したSpaceXの株価が乱高下し、市場の熱が冷めつつある
  • 大株主のソフトバンクを通じて、日本市場にも大きな影響が及んでいる

まずは日々のニュースで、両社の上場がいつになるのかをチェックしてみてください。AIの実力とお金の動きが、これからますます結びついていきます。

参考文献

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