ChatGPTなどの生成AIはとても便利です。でも、使いすぎると考える力が落ちてしまうかもしれません。MIT(マサチューセッツ工科大学)やペンシルバニア大学の最新研究で、AIに頼りすぎることの危険性がわかってきました。この記事では、研究でわかったことと、AIとの正しい付き合い方をやさしく解説します。
この記事でわかること
- AIに頼りすぎると、本当に考える力が落ちるのか
- MITやペンシルバニア大学の研究で判明した具体的なデータ
- 「認知的負債」とは何か
- AIとうまく付き合うための5つのコツ
「AIに依存するとバカになる」とは何の話?
2026年1月、SHIFT AIが発表した「AIトレンド通信1月号」で、「AIに依存するとバカになる」という衝撃的なテーマが取り上げられました。
これは単なるウワサではありません。MIT(マサチューセッツ工科大学)、ペンシルバニア大学、ロンドン大学、ミュンヘン大学という世界トップクラスの大学が行った研究にもとづいています。
たとえば、こんな経験はありませんか?
- AIに文章を書いてもらったけど、中身をよく覚えていない
- AIの回答をそのまま使って、自分では考えなかった
- AIなしだと何も書けない気がする
こうした「AI任せ」の習慣が、じわじわと思考力を奪っている可能性があるのです。
MITの研究が示した衝撃の数字
MITメディアラボの研究チームは、54人の大人を3つのグループに分けて実験しました。
- AIグループ:ChatGPTを使って小論文を書く
- 検索エンジングループ:Googleなどで調べて書く
- 自力グループ:何も使わず自分の頭だけで書く
4ヶ月間にわたる実験の結果、驚きのデータが出ました。
AIで書いた小論文について「自分の文章を正確に引用できるか」を検証したところ、AIグループの正答率はたった16.7%でした。一方、自力グループは88.9%という高い正答率を記録しています。
つまり、AIに頼って書いた文章は、書いた本人すらほとんど覚えていないのです。
さらに、脳波(EEG)の分析では、AIグループの脳の活動量がもっとも低かったことがわかりました。研究チームはこの現象を「認知的負債(Cognitive Debt)」と名付けています。
ペンシルバニア大学の研究結果
ペンシルバニア大学でも、AIの使いすぎが学習に悪影響を与えることが確認されました。
高校生を対象にした実験では、ChatGPTを使って練習したグループは問題を解くスピードは48%向上しました。しかし、概念の理解度テストでは17%低いスコアになったのです。
ちなみに、この研究ではAIを使ったグループについて「個人的な所有感」と「深い学び」が減少していることも報告されています。
たとえるなら、電卓に頼りすぎて暗算ができなくなるのと似ています。便利な道具を使いすぎると、もともと持っていた能力が衰えてしまうのです。
なぜAIを使うと考える力が落ちるのか
では、なぜAIを使うと思考力が低下するのでしょうか。研究者たちは主に3つの原因を指摘しています。
1. 認知的オフロード
「認知的オフロード」とは、考える作業をAIに丸投げしてしまうことです。脳は使わないと衰えます。筋トレをやめると筋肉が落ちるのと同じで、考えることをAIに任せ続けると、思考する「脳の筋肉」が弱くなります。
2. アイデアの画一化
ミュンヘン大学の研究では、AIを使うと似たようなアイデアばかりが出てくることが確認されました。初心者には効果的でも、専門家が使うとアイデアの多様性が減ってしまいます。みんなが同じAIを使えば、みんなが同じような答えにたどり着いてしまうのです。
3. 学びの実感がなくなる
AIが出した答えは「自分で考えた」という実感がありません。ペンシルバニア大学の研究でも、AIを使った情報収集では「自分のものだ」という感覚が薄れると報告されています。この感覚の欠如が、記憶の定着を妨げていると考えられています。
AIとうまく付き合う5つのコツ
だからといって、AIを使うなというわけではありません。大切なのは「使い方」です。以下の5つのコツを意識すれば、思考力を維持しながらAIを活用できます。
1. まず自分で考えてからAIに聞く
いきなりAIに丸投げするのではなく、自分なりの答えを出してからAIに意見を求めましょう。たとえば、企画書を書くときは自分で骨子を作ってから、AIに改善点を聞くのがおすすめです。
2. AIの回答を必ず検証する
AIの出力をそのまま使わず、「本当にこれで合っているか?」と確認するクセをつけましょう。この検証プロセス自体が、思考力を鍛えるトレーニングになります。
3. 単純作業はAI、創造的な仕事は自分で
正解が明確な事務作業(データ整理、フォーマット変換など)はAIに任せましょう。一方、アイデア出しや判断が必要な仕事は、自分の頭で考えることが大切です。
4. AIを「壁打ち相手」として使う
AIに答えを求めるのではなく、「私の考えのどこが弱いか教えて」と質問してみましょう。AIを対話相手として使うことで、批判的思考力を鍛えることができます。
5. 定期的に「AIなしデー」を作る
週に1日でもAIを使わない日を設けると、自分の頭で考える習慣を維持できます。デジタルデトックスならぬ「AIデトックス」です。
まとめ
最新の研究から見えてきたポイントを振り返りましょう。
- MITの実験で、AIに頼って書いた文章の内容を覚えていた人はわずか16.7%
- ペンシルバニア大学の研究では、AI利用で問題解決は速くなるが理解度は17%低下
- 原因は「認知的オフロード」で、脳を使わなくなること
- AIは「答えを出す道具」ではなく「考える力を伸ばす相棒」として使うのが正解
- まず自分で考え、AIを検証や壁打ちに使うことで思考力を維持できる
AIは間違いなく便利な道具です。しかし、使い方を間違えると自分の考える力を失うリスクがあります。2026年は「AIを賢く使いこなす力」がますます問われる年になりそうです。
参考文献
- MIT Media Lab「Your Brain on ChatGPT: Accumulation of Cognitive Debt when Using an AI Assistant for Essay Writing Task」
- SHIFT AI「2026 AIトレンド通信 1月号」(PR Times)
- TIME「ChatGPT’s Impact On Our Brains According to an MIT Study」
- Harvard Gazette「Is AI dulling our minds?」
- Timewell「AIは思考力を奪うのか?過剰利用が招く認知能力低下のリスクと対策」


