- 米国で計画中のAIデータセンター809件のうち、約3分の2(517件)が干ばつ地域に建設予定だとわかります
- 大型データセンターは1日に最大約1,890万リットルもの水を使い、これは5万人分の生活用水に相当します
- 米国のデータセンターの水需要は2023年の年間170億ガロンから、2028年には730億ガロンへ急増する見込みです
- GoogleやMicrosoftの水使用量が公開され、年々大きく増えている実態が見えてきます
- 日本企業は「水を使わない冷却(WUE最小化)」技術で世界をリードしようとしています
スマホでChatGPTに質問するたびに、どこかで大量の「水」が消えている――そんな話を聞いたことはありますか。AIの裏側にあるデータセンターは、電気だけでなく膨大な水も飲み込みます。しかも、その多くが水不足に悩む土地に建てられようとしています。この記事を読めば、AIと水をめぐる世界の最新事情と、日本企業の挑戦がよくわかります。
何が問題になっているの?
2026年6月、英ガーディアン紙が衝撃的な分析を報じました。
米国で計画されているAIデータセンターは全部で809件あります。
そのうち約3分の2にあたる517件が、過去1年間で干ばつを経験した地域に建設予定だというのです。
この数字は、アメリカ海洋大気庁(NOAA、気象や海を調べる政府機関)の干ばつデータをもとに集計されました。
つまり、水が足りない場所で、これから大量の水を使う施設がどんどん増えていくということです。
水を必要とする施設が、よりによって水の乏しい土地に集まる。この「ねじれ」が、いま大きな議論を呼んでいます。
データセンターはなぜそんなに水を使うの?
熱を冷ますために水が必要
データセンターには、AIを動かすコンピューター(サーバー)が何千台も並んでいます。
サーバーは動くと、まるでストーブのように大量の熱を出します。
この熱をそのままにすると故障するため、冷やし続けなければなりません。
その冷却に使われるのが水です。水を蒸発させて熱を逃がす仕組みが広く使われています。
想像を超える水の量
大型のデータセンターは、1日に最大で約500万ガロン(約1,890万リットル)もの水を使うことがあります。
これは、およそ5万人が1日に使う生活用水と同じ量です。
小さな町が丸ごと使う水を、たった1つの施設が毎日飲み込んでいる計算になります。
さらに国際エネルギー機関(IEA)の推定では、世界のデータセンターの水消費はすでに年間5,600億リットルを超えています。
そして2030年までに、年間1.2兆リットルに達する可能性があると言われています。
水の量はこれからどう増える?
アメリカだけを見ても、増え方は急です。
データセンターが使う水の量は、2023年の年間170億ガロンから、2028年には730億ガロンへ。わずか5年で4倍以上に膨らむ見込みです。
背景にあるのは、AI投資の爆発的な伸びです。
2026年4月だけで、データセンターへの投資は24億ドルに達しました。年初からの合計は495億ドル(約7兆円規模)にのぼります。
この投資の半分以上が、アメリカ南部に集中しています。
南部には、もともと水不足が深刻な地域も多く含まれます。だからこそ、水との衝突が心配されているのです。
実は「冷却の水」だけが問題ではない
意外に思うかもしれませんが、水を使うのは冷却だけではありません。
ある試算によると、2050年までにAIが新たに必要とする水のうち、冷却が占める割合はわずか約4%です。
では残りはどこへ消えるのでしょうか。
- 発電:約54%。AIを動かす電気をつくる発電所も、大量の水を使います
- 半導体の製造:約42%。AIチップを作る工場でも、きれいな水が欠かせません
- データセンターの冷却:約4%
つまり、AIの「水問題」は冷却だけの話ではないのです。
電気を作る段階、チップを作る段階まで含めると、私たちが思う以上に水を使っています。
GoogleやMicrosoftはどれくらい使っている?
大手IT企業の数字を見ると、増加のスピードがよくわかります。
Googleの場合
Googleのデータセンターが消費した水は、2021年の43億ガロンから2024年には61億ガロンへ増えました。
2024年に引き込んだ水は合計78億ガロン。そのうち78%が蒸発して消えています。
特に米アイオワ州カウンシルブラフスの施設は、2024年だけで10億ガロンを使いました。
Microsoftの場合
Microsoftの全世界での水消費は、直近の報告で約640万立方メートル(約16.9億ガロン)。前年から34%も増えました。
同社は世界で300以上のデータセンターを運営しています。
ここで参考になるのが「WUE」という指標です。WUEは、電力1kWhあたり何リットルの水を使うかを表します(数字が小さいほど水を節約できている)。
業界平均は約1.9L/kWh。一方で、進んだ施設は0.2〜0.5L/kWhまで下げています。
たとえばMicrosoftのアリゾナ州の施設は1.52L/kWhですが、シンガポールの施設は0.02L/kWhと、場所によって大きく差があります。
日本にはどう関係するの?
「アメリカの話でしょう?」と思うかもしれません。でも日本も無関係ではありません。
日本でもAI向けのデータセンター建設が急ピッチで進んでいます。
そして日本企業は、この水問題を逆にチャンスと捉えています。
カギになるのが「水冷(すいれい)」技術です。サーバーを水で直接冷やすことで、エアコン方式より効率を高める方法です。
たとえば、Preferred Networks(PFN)・インターネットイニシアティブ(IIJ)・北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の3者は、2026年4月から千葉県白井市のIIJデータセンターで新しいAI設備「AImod」を稼働させました。
さらに、ニデック・第一実業・カンネツのアライアンスは、国産の液冷データセンターを推進しています。
彼らが目指すのは、業界最高水準の電力効率(PUE 1.1)に加えて、水をほとんど使わない「WUE最小化」です。
水を密閉して循環させ、外に捨てない仕組みなら、水不足の心配を大きく減らせます。
世界が水問題に頭を抱えるなか、日本の省エネ・節水技術が世界市場で評価される可能性があるのです。
よくある質問(FAQ)
Q1. ChatGPTを1回使うと、どれくらい水を使うの?
正確な量は企業や施設によって異なり、はっきり公開されていません。ただ、AIへの質問を数十回繰り返すと、おおよそペットボトル1本分の水に相当するという試算もあります。「1回ごとはわずか、でも世界中の利用が積み重なると膨大」と考えるとわかりやすいです。
Q2. なぜ水不足の地域にわざわざ建てるの?
土地が安く広いこと、電気代が安いこと、税制の優遇があることなどが理由です。水のリスクよりも、コストや電力の条件が優先されてしまうのが現状です。だからこそ「立地の見直しが必要だ」という声が高まっています。
Q3. 水はそのまま汚れて捨てられるの?
多くは蒸発して大気に戻ります。Googleの例では引き込んだ水の78%が蒸発しました。蒸発した水は地域の水循環からは失われるため、「使ったら戻る」とは限らない点が問題視されています。
Q4. 水を使わない冷却はできないの?
できます。外気で冷やす方式や、水を密閉して循環させる方式があります。日本企業が進める「WUE最小化」もその一つです。ただし設備コストが高くなりやすく、すべての施設にすぐ広がるわけではありません。
まとめ
AIと水をめぐる動きを、最後に整理します。
- 米国で計画中のAIデータセンターの約3分の2(517件)が干ばつ地域に建設予定
- 大型施設は1日最大約1,890万リットル、5万人分の生活用水に匹敵する水を使う
- 米国の水需要は2023年170億ガロン→2028年730億ガロンへ急増見込み
- 冷却だけでなく、発電(54%)や半導体製造(42%)でも大量の水を使う
- 日本企業は「水をほぼ使わない冷却」で世界市場をリードしようとしている
AIを使うときは、その裏で電気と水が動いていることを少し意識してみてください。便利さの裏側を知ることが、これからのAIとの賢い付き合い方につながります。
参考文献
- The Guardian「Majority of US’s new AI datacenters to be built on drought-hit land」(2026年6月8日)
- Tom’s Hardware「Most new U.S. AI data centers are being built in drought zones」
- TechTarget「AIの代償は『年間4260億リットルの水』」
- The Invading Sea「Data centers consume massive amounts of water」
- MONOist「次世代AI向け国産水冷データセンター、水使用効率を実質的ゼロへ」


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