2025年8月13日より、YouTube(米国)はAIを活用した年齢推定機能の実証テストを一部のユーザーを対象にスタートしました。これは「アカウントに登録された生年月日では判断が難しい未成年のアクセス制限を強化する」取り組みとして、注目を集めています。同時に、個人のプライバシーとサービス利便性のバランスをどう整えるかという、AI倫理の最前線でもあります。
どんな仕組み?年齢推定AIのなんたるか
YouTubeは、「機械学習(AIの一種)」を通じて、ユーザーが18歳以上か未満かを、以下のような「行動情報」から推測します。
- アカウントの開設からの期間(アカウントの“古さ”)
- 検索したキーワードや視聴した動画のカテゴリ
- 動画視聴のパターン
これらの情報からAIが「この人は未成年かもしれない」と判断すると、プライバシー保護されつつ、適切な体験が提供される設定が自動的に有効になります。
未成年と判断されたらどうなる?
自動で下記のような保護措置が適用されます。
- パーソナライズド広告(個別に合わせた広告)をオフに
- 「デジタルウェルビーイング機能」(休憩や就寝のリマインダーなど)を有効化
- 特定のコンテンツの繰り返し表示を制限
- 年齢制限のあるコンテンツへのアクセスを制限
これらにより、未成年の無自覚な閲覧やアカウント乗っ取りによる不正な視聴が防がれます。
推定が誤ったら?本人確認の仕組み
AIによって誤って「未成年」と判定された場合でも、以下のような方法で年齢の証明が可能です。
- 政府発行の身分証(ID)
- クレジットカード
- セルフィー(自撮り写真)
これにより、正しく21歳以上と確認された利用者は、年齢制限コンテンツへのアクセスが再び可能になります。
どうして今?背景には規制と安全性の強化
近年、未成年の有害コンテンツへのアクセスを防ぐための法整備が各国で進んでいます。2025年にはテキサス州の未成年向け規制が米最高裁で認められたほか、イギリスやオーストラリアでもオンライン安全法が成立するなど、プラットフォーム側にも年齢確認の強化が求められています。
このような規制の圧力の中、YouTubeは「子どもたちの安全を守りつつ、家族が安心して使える環境」づくりをAI技術で実現しようとしています。
でも不安の声も上がる:プライバシーと監視の懸念
一方で、ユーザーからはプライバシー侵害の懸念が強く出ています。
- 視聴履歴や行動パターンがAIに分析されること自体に抵抗感
- 間違った判定による不利益(未成年とされ自由が制限されること)
- 認証情報がどのように扱われるのか不透明な点への不安
Change.org※には早くも数万人規模の反対署名が集まっており、監視社会への一歩ではないかという声もあります。
※世界最大級の署名サイトで、誰でも無料で「オンライン署名(請願)」を始めたり、既にある署名に参加したりできます。
初心者向け 用語解説
- 機械学習(Machine Learning):AIの一種で、膨大なデータからパターンを学び、判断できるようになる技術です。
- プライバシー:個人の行動や情報が無断で第三者に知られない権利や自由を指します。
- デジタルウェルビーイング:長時間連続でオンライン利用するのを防ぎ、健康的な使い方を促す機能です。
まとめ:安全と自由の狭間にあるAI導入
YouTubeがAIで年齢推定を米国でテスト導入したことで、「未成年の安全を高める」「規制に応える」といった意図は明確ですが、同時に「個人の自由と監視の境界線はどこか?」という課題も浮き彫りになりました。
AIを使った安全対策が普及する中で、私たちが安心してオンライン空間を使うためには、「技術理解」と「透明性」が不可欠です。今後の展開にも注視していきましょう。
引用元:https://blog.youtube/news-and-events/extending-our-built-in-protections-to-more-teens-on-youtube/