2026年2月、中国のAIスタートアップ「StepFun(阶跃星辰)」が発表した新しいAIモデル「Step-3.5-Flash」が、世界中のAI業界で大きな話題になっています。
なんと、このモデルは他社の巨大モデルよりずっと小さいのに、同等かそれ以上の性能を出しているのです。
この記事でわかること
- Step-3.5-Flashがどんなモデルなのか
- なぜ「小さいのに強い」のか(MoEの仕組み)
- DeepSeekやQwenなど他の中国AIとの違い
- 開発元StepFunの正体と資金力
- 私たちの生活にどう影響するのか
Step-3.5-Flashとは?ひと言で解説
Step-3.5-Flashは、中国・上海のAI企業「StepFun」が2026年2月2日にリリースした大規模言語モデル(LLM)です。
最大の特徴は、全体で1,960億個のパラメータ(AIの「脳細胞」のようなもの)を持ちながら、実際に使うのはわずか110億個だけという点です。
たとえるなら、1,960人の専門家チームがいて、質問のたびに最も詳しい8人だけが答えるようなイメージです。これにより、高い性能を保ちながら、処理速度を大幅に上げているのです。
しかもオープンソース(誰でも無料で使える形)で公開されており、HuggingFaceやGitHubなどの主要プラットフォームからすぐに利用できます。
なぜ小さいのに強い?MoEの仕組み
Step-3.5-Flashの秘密は「MoE(Mixture of Experts/混合エキスパート)」という技術にあります。
通常のAIモデルは、どんな質問に対しても全てのパラメータを使って処理します。つまり、簡単な質問でも難しい質問でも、同じだけの計算量がかかります。
一方、MoEモデルのStep-3.5-Flashは、1層あたり288個の「専門家(エキスパート)」を持っていて、質問の内容に応じて最適な8個だけを選んで使います。
さらに「MTP-3(3ウェイ・マルチトークン予測)」という技術で、1回の処理で複数の単語を同時に予測できます。これにより、通常の使い方で毎秒100〜300トークン、コーディング作業では最大350トークンという驚異的な速度を実現しています。
たとえるなら、普通のAIが1文字ずつ手書きしているのに対し、Step-3.5-Flashは3文字まとめてタイピングしているようなものです。
ベンチマーク結果がすごい!数字で見る実力
Step-3.5-Flashは、さまざまなテストで驚異的な成績を出しています。
数学・論理テスト:
- AIME 2025(数学オリンピック級の問題): 99.8点
- HMMT 2025(ハーバード・MIT数学大会): 98.0点
- IMOAnswerBench(国際数学オリンピック級): 86.7点
AIエージェント性能:
- SWE-bench Verified(プログラムのバグ修正): 74.4%
- Terminal-Bench 2.0(ターミナル操作): 51.0%
- τ²-Bench(実際のカスタマーサポート業務): 88.2点
特に注目すべきは、DeepSeek V3の3.4分の1のパラメータしか使っていないのに、同等の成績を出していることです。つまり、計算コストが大幅に安くなります。
128Kコンテキスト(長い文章を扱う場合)での推論コストは、DeepSeek V3.2の約6分の1とも言われています。
DeepSeek・Qwenとどう違う?中国AIモデルを比較
中国からは最近、優秀なAIモデルが次々と登場しています。主なモデルを比べてみましょう。
DeepSeek V3.2: 6,710億パラメータの巨大モデル。高い推論能力を持つが、その分コストも高い。MITライセンスで完全オープンソース。
Qwen3-235B: アリババが開発。2,350億パラメータで220億を活性化。バランスの良い性能が特徴。
Step-3.5-Flash: 1,960億パラメータでわずか110億を活性化。3モデルの中で最も効率的。エージェント用途に特化した設計。
つまり、Step-3.5-Flashの強みは「少ない計算資源で、大きなモデルに匹敵する性能を出せる」ことです。これは、高価なGPUを何台も用意できない企業や個人開発者にとって、とても魅力的なポイントです。
開発元StepFunとは?7億ドル調達の中国AIユニコーン
StepFun(阶跃星辰)は、2023年4月に設立された上海のAIスタートアップです。
創業者の姜大昕(ジャン・ダシン)氏は、元マイクロソフトの上級副社長という経歴を持つ実力者です。2026年には、顔認識AI大手「Megvii(メグビー)」の共同創業者である印奇(イン・チー)氏が会長に就任し、経営体制を強化しました。
資金面でも勢いがあります。2026年1月に完了したB+ラウンドでは、約7億1,800万ドル(約1,080億円)を調達。これは中国のLLM業界で過去12ヶ月間の最大額です。
投資家には中国の大手テクノロジー企業テンセントや、浦東ベンチャーキャピタルなどが名を連ねています。
すでにStepFunのモデルは4,200万台以上のデバイスに搭載され、日間アクティブユーザーは約2,000万人に達しています。OPPOやHonorなど、中国の主要スマートフォンメーカーの約60%と提携しているのです。
私たちの生活への影響は?
Step-3.5-Flashの登場は、「AIは巨大でなくても強い」という流れを加速させます。
これまでAIモデルは「大きいほど賢い」と考えられてきました。しかし、Step-3.5-FlashやDeepSeekの成功は、効率的な設計で小さなモデルでも十分な性能が出せることを証明しています。
具体的な影響としては:
- AIの利用コストが下がる — 小さなモデルで済むなら、サーバー代も安くなります
- スマホでAIが動く時代が近づく — 軽量モデルはスマートフォンやパソコンでも動かしやすい
- AIエージェントの普及が加速 — Step-3.5-Flashはエージェント(AIが自律的にタスクをこなす機能)に特化しており、カスタマーサポートやプログラミング支援の自動化が進みそうです
- 中国AI企業の存在感がさらに増す — DeepSeek、Qwen、そしてStep-3.5-Flashと、中国勢の技術力は着実に向上しています
まとめ
- Step-3.5-Flashは、中国StepFunが開発した軽量・高性能のオープンソースAIモデル
- 1,960億パラメータのうち110億だけを活性化するMoE技術で、効率と性能を両立
- 数学テストやプログラミングテストで、はるかに巨大なモデルに匹敵する成績
- DeepSeek V3の約3.4分の1の計算コストで同等の性能を実現
- 開発元StepFunは約1,080億円を調達した注目のユニコーン企業
- AIの「小型化・効率化」トレンドを象徴するモデルとして、今後の業界に大きな影響を与える可能性がある


