「AIが自分でソフトウェアを買う」と聞いたら、びっくりしませんか?
2026年2月、Sapiom(サピオム)というスタートアップが、AIエージェント向けの決済インフラを作るために1,575万ドル(約24億円)の資金を調達しました。
この記事では、Sapiomがどんなサービスなのか、なぜ今「AIに財布を持たせる」技術が必要なのかを、やさしく解説します。
この記事でわかること
- Sapiomとは何か、どんなサービスなのか
- AIエージェントが「買い物」する仕組み
- エージェントコマース(AIによる自動購買)の最新トレンド
- 日本での影響と今後の展望
Sapiomとは?AIエージェント向けの決済インフラ
Sapiom(サピオム)は、サンフランシスコに本社を置くスタートアップ企業です。元Shopifyのエンジニアリングディレクター、Ilan Zerbib(イラン・ゼルビブ)氏が創業しました。
一言でいうと、「AIエージェントが自分でソフトウェアやAPIを購入できるようにする仕組み」を作っている会社です。
たとえば、あなたがAIに「SMSを送れるアプリを作って」とお願いしたとします。通常なら、Twilio(SMS送信サービス)にアカウントを作り、クレジットカードを登録し、APIキーをコピーする……という作業が必要です。
Sapiomがあれば、AIエージェントがこれらの手続きを全部やってくれます。人間は何もしなくていいのです。
なぜAIに「お財布」が必要なのか
最近のAIは、ただ質問に答えるだけでなく、自分で判断してタスクを実行するようになっています。こうしたAIを「AIエージェント」と呼びます。
AIエージェントが外部のサービスを使おうとするたびに、2つの壁があります。
- 認証:「あなたは誰?使っていい人?」という確認
- 決済:「使った分のお金を払ってね」という支払い
今までは、この2つを毎回人間が手動でやっていました。つまり、AIがどんなに賢くても、お金の問題で手が止まってしまうのです。
Sapiomは、この「認証」と「決済」をまとめて自動化する基盤を提供します。いわば、AIのためのクレジットカードのようなものです。
1,575万ドル調達の背景と投資家たち
2026年2月、SapiomはシードラウンドでAccel(アクセル)を中心に1,575万ドル(約24億円)を調達しました。
注目すべきは、出資した企業の顔ぶれです。
- Accel:Facebook初期の投資家として有名なベンチャーキャピタル
- Okta Ventures:セキュリティ認証大手Oktaの投資部門
- Menlo Ventures:シリコンバレーの老舗VC
- Anthropic:Claude(クロード)を開発するAI企業
- Coinbase Ventures:暗号通貨取引所の投資部門
AI企業のAnthropicや、認証のOkta、暗号通貨のCoinbaseが出資していることから、AIの自律的な決済がテック業界全体で注目されていることがわかります。
エージェントコマースとは?市場規模は数兆ドル
Sapiomのようなサービスが注目される背景には、「エージェントコマース」という大きなトレンドがあります。
エージェントコマースとは、人間の代わりにAIエージェントが商品を選び、比較し、購入まで行う新しい買い物の形です。
たとえば、Googleは検索のAIモード内で「Buy for me(代わりに買って)」ボタンを導入し、AIがユーザーに代わって商品を購入できるようにしました。Visaも2026年初頭にアジア太平洋地域で「エージェンティックコマース」の試験を開始しています。
マッキンゼーの予測によると、2020年代末にはエージェント型コマースが米国小売だけで1兆ドル規模に達し、オンライン売上全体の約3分の1を占める可能性があると言われています。
Sapiomは、このエージェントコマースを支える「裏方のインフラ」を担っているのです。
バイブコーディングとの関係
Sapiomが特に力を入れているのが、「バイブコーディング」との連携です。
バイブコーディングとは、プログラミングの知識がなくても、AIに指示するだけでアプリが作れる開発手法のこと。LovableやBoltといったサービスが代表例です。
ここで問題になるのが、作ったアプリに外部サービスを組み込むときです。たとえば「SMS送信機能を付けたい」と思ったら、普通はTwilioの契約が必要です。
Sapiomがあれば、バイブコーディングのプラットフォームがSapiom経由でTwilioの契約・決済を自動処理してくれます。ユーザーは、Twilioの利用料がバイブコーディングの料金に上乗せされるだけ。面倒な手続きはゼロです。
日本への影響と今後の展望
日本でも、AIエージェント決済への注目が高まっています。
Googleが発表したAP2(Agent Payments Protocol)は、AIエージェントが人間の承認なしに安全に決済を行うための技術仕様です。日本の開発者コミュニティでも、この技術の検証が始まっています。
ちなみに、Gartnerの予測では、2026年末までに企業アプリの40%にAIエージェントが組み込まれるとされています。2025年はわずか5%未満だったので、爆発的な成長です。
日本のEC(ネット通販)業界でも、「AIに財布を預ける」時代に向けた準備が求められています。今後、Sapiomのようなインフラが日本市場にも広がってくる可能性は十分にあるでしょう。
まとめ
- SapiomはAIエージェントが自律的にソフトウェアやAPIを購入できる決済インフラを提供するスタートアップ
- Accel主導で1,575万ドル(約24億円)を調達。AnthropicやCoinbaseも出資
- 「エージェントコマース」の市場は2020年代末に数兆ドル規模に成長すると予測されている
- バイブコーディングとの連携で、非エンジニアのアプリ開発を加速させる
- 日本でもAIエージェント決済の注目度が上昇中。今後のインフラ整備が鍵


