2025年8月、OpenAIが大きな一歩を踏み出しました。同社初となるオープンウェイトモデル「gpt-oss」をApache 2.0ライセンスで公開したのです。これは誰でも無料で使えて、自由に改良もできるということ。今回は、この画期的なモデルの特徴と使い方をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- gpt-ossがどんなモデルなのか
- 120Bと20Bの2つのモデルの違い
- 他のオープンモデルとの性能比較
- 自分のパソコンで動かす方法
- 日本語での実力
gpt-ossとは?OpenAI初のオープンウェイトモデル
gpt-ossは、OpenAIが2025年8月5日に公開したオープンウェイトの大規模言語モデルです。「オープンウェイト」とは、AIの頭脳にあたる「重み」と呼ばれるデータが公開されていて、誰でも自由にダウンロードして使えるという意味です。
OpenAIがオープンなモデルを出すのは、2019年のGPT-2以来じつに6年ぶり。しかもライセンスはApache 2.0という、商用利用もOKのとても自由度が高いものです。つまり、企業が自社サービスに組み込むことも、個人が研究に使うこともまったく問題ありません。
公開の背景には、MetaのLlamaやDeepSeekなど、強力なオープンモデルが次々と登場する競争環境の変化があります。OpenAIもオープンソース陣営に本格参入することで、開発者コミュニティの支持を集めようとしています。
120Bと20Bの2つのモデルの違い
gpt-ossには2つのサイズが用意されています。
| 項目 | gpt-oss-120B | gpt-oss-20B |
|---|---|---|
| 総パラメータ数 | 約1,170億 | 約210億 |
| 実際に動くパラメータ数 | 51億 | 36億 |
| 必要メモリ | 80GB | 16GB |
| 想定用途 | 高性能サーバー向け | 個人PC・エッジ向け |
ここで「総パラメータ数」と「実際に動くパラメータ数」が大きく違うことに気づいたかもしれません。これはMoE(Mixture of Experts)という仕組みのおかげです。
たとえるなら、1,000人の専門家チームがいて、質問ごとに最適な数人だけが答えるようなイメージです。全員が同時に働く必要がないので、少ないメモリでも高い性能を発揮できます。
特に注目なのがgpt-oss-20B。パソコンのメモリが16GBあれば動かせるので、わざわざ高価なサーバーを借りなくても、手元のパソコンでAIを使えるようになります。
他のオープンモデルと比べてどれくらいすごい?
gpt-oss-120Bの実力を、主要なベンチマーク(AIの成績表)で見てみましょう。
| ベンチマーク | gpt-oss-120B | DeepSeek R1 | Qwen3 235B |
|---|---|---|---|
| MMLU-Pro(知識・推論) | 90.0% | 85.0% | 84.4% |
| AIME 2025(数学) | 97.9% | — | — |
| SWE-bench(コーディング) | 62.4% | 65.8% | — |
知識・推論の分野ではDeepSeek R1やQwen3を上回る90.0%という高スコアを記録。数学の競技問題(AIME 2025)ではなんと97.9%という驚異的な成績です。
一方、コーディングの実務テスト(SWE-bench)ではDeepSeek R1にやや及ばない結果に。ただし、アメリカ発のオープンウェイトモデルとしては最高性能と評価されています。
ちなみに、小さいほうのgpt-oss-20Bでも、OpenAIの有料モデル「o3-mini」と同等の性能を出せると言われています。無料で使えるモデルが有料モデルに匹敵するのは、すごいことですね。
個人のパソコンでも動かせる?必要なスペック
gpt-oss、特に20Bモデルは個人のパソコンでも動かせるのが大きな魅力です。
必要なスペックは以下のとおりです。
- gpt-oss-20B:VRAM(GPUのメモリ)16GB以上。MacBook Proの統合メモリでもOK
- gpt-oss-120B:VRAM 80GB以上。NVIDIA H100などの業務用GPUが必要
- 対応OS:Windows、macOS、Linuxすべてに対応
一番かんたんな動かし方は、Ollamaというツールを使う方法です。たった2つのコマンドで始められます。
- Ollamaを公式サイトからインストール
- ターミナル(コマンドプロンプト)で
ollama run gpt-oss:20bと入力
これだけで、ネットに接続しなくてもAIと会話できるようになります。プライバシーを大切にしたい方や、通信環境が不安定な場所で使いたい方にもぴったりです。
また、Hugging FaceというAIモデルの共有サイトからも、重みデータを無料でダウンロードできます。開発者の方はこちらから直接取得して、自分のアプリに組み込むこともできます。
gpt-ossの安全対策「safeguard」モデル
オープンなモデルを公開するとき、心配になるのが安全性です。OpenAIはこの点にもしっかり対応しています。
2025年10月には、gpt-oss-safeguardという安全性チェック専用のモデルも追加で公開されました。これは、AIの出力が安全かどうかを判定してくれる「見張り番」のような存在です。
gpt-oss-safeguardの特徴は以下のとおりです。
- 開発者が自分で安全ポリシー(ルール)を設定できる
- なぜ「安全」「危険」と判断したかの理由を説明してくれる
- gpt-ossと同じくApache 2.0ライセンスで無料で使える
たとえば、子ども向けのチャットボットを作るときに「暴力的な内容はブロックする」というルールを設定すれば、safeguardモデルが自動で不適切な回答をフィルタリングしてくれます。
日本語での実力はどう?
gpt-ossは主に英語のデータで学習されていますが、日本語でも一定の実力を発揮します。
AWSパートナーのアクロクエスト社による検証では、以下のような結果が報告されています。
- 要約タスク:日本語の文章を正確にまとめることができる
- 論理的推論:日本語でも筋の通った回答が可能
- 抽出型QA:文章から必要な情報を取り出す精度が高い
特に、意味の正確さが重要な業務では、有料のClaudeなどと比べても十分に実用的な精度が期待できるとのこと。コストを抑えたい企業にとっては、魅力的な選択肢と言えるでしょう。
ただし、日本語のニュアンスが重要な創作文やマーケティング文章では、まだ専用モデルに及ばない面もあります。用途に応じて使い分けるのがおすすめです。
まとめ:gpt-ossで広がるAIの可能性
OpenAI初のオープンウェイトモデル「gpt-oss」について解説しました。要点を振り返りましょう。
- gpt-ossはApache 2.0ライセンスで誰でも無料で使える
- 120Bと20Bの2サイズ。20Bは16GBのPCで動作可能
- MoE技術により、少ないメモリで高い性能を実現
- 知識・推論テストで90.0%、数学テストで97.9%の高スコア
- 安全対策モデル「safeguard」も無料でセットで公開
- 日本語でも実用的な精度を発揮する
これまで「高性能なAIは高いお金を払って使うもの」というイメージがありました。しかしgpt-ossの登場で、個人でも企業でも、手元のパソコンで高性能AIを自由に使える時代が始まっています。
プログラミングの補助、文章の要約、質問への回答など、さまざまな場面で活用できるgpt-oss。まずはOllamaで20Bモデルを試してみてはいかがでしょうか。
