NASAがAIで火星ローバーを運転!Claude活用の全貌

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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2026年1月、NASAが驚きの発表をしました。火星を走る探査車「Perseveranceパーサヴィアランス」が、AIが計画したルートで走行に成功したというのです。使われたのは、Anthropic社の大規模言語モデル「Claude」。人類の歴史上、AIが別の惑星わくせいで乗り物のルートを決めたのはこれが初めてです。

この記事でわかること

  • NASAの火星ローバーがAI計画のルートで初走行した事実
  • Anthropic「Claude」がどうやって火星の地形を分析したのか
  • ローバー専用プログラミング言語「RML」のしくみ
  • 50万以上の項目をチェックする「デジタルツイン」の安全検証
  • ルート計画にかかる時間が半分になった成果
  • 今後の宇宙探査でAIがどう使われるかの展望

NASAの火星ローバーがAIで初めて走った

2025年12月8日と10日、火星の「ジェゼロ・クレーター」で歴史が動きました。NASAの火星探査車Perseveranceが、AIが作ったルートに従って合計約456メートルを走行したのです。

1回目の走行は約210メートル、2回目は約246メートル。どちらもAIが事前に決めた「ウェイポイント」(通過地点)に沿って、岩だらけの火星の地面を無事に走り切りました。

このプロジェクトを動かしたのは、NASAのJPLジェット推進研究所とAI企業Anthropicのチームです。Anthropicが開発した大規模言語モデル「Claude」に、火星の衛星えいせい写真や地形データを読み込ませて、安全な走行ルートを自動で作らせました。

これまでローバーのルート計画は、地球にいるエンジニアが衛星えいせい画像を見ながら手作業で行っていました。つまり今回は、「人間がやっていた仕事をAIが代わりにやった」という画期的な出来事なのです。

どうやってAIがルートを決めたのか?

では、Claudeはどうやって火星のルートを計画したのでしょうか?

まず、JPLのエンジニアがClaudeに渡したのは2種類のデータです。

  • HiRISE画像:火星の上空を回る探査機「Mars Reconnaissance Orbiter」に搭載された高解像度カメラの写真
  • デジタル標高モデル(DEM):地形の高さや傾斜けいしゃを数値化したデータ

Claudeはこれらのデータを「ビジョン言語モデル(VLM)」という技術で分析しました。ビジョン言語モデルとは、画像を見て内容を理解し、言葉で説明できるAIのことです。

Claudeは画像から以下のような地形を見分けました。

  • 岩盤がんばん(比較的安全に走れる場所)
  • 露頭ろとう(むき出しの岩石)
  • 危険な巨石きょせき地帯
  • 砂の波紋はもん(タイヤがはまる可能性がある場所)

その精度はなんと98.4%。ほぼ完璧に危険な場所を見抜いたのです。そのうえで、10メートルごとの区間をつなぎ合わせて、安全な連続ルートを作りました。

たとえるなら、上空から撮った写真だけを見て「この道は安全、あの場所は避けよう」とナビを作るようなもの。しかもそれを、人間が何日もかけていた作業の半分の時間でやってのけたのです。

「Rover Markup Language」でローバーに命令

ルートを決めただけでは、ローバーは動きません。ローバーに「ここを走れ」と命令するには、専用の言語が必要です。

Perseveranceが理解できるのは「Rover Markup Language(RML)」という特別なプログラミング言語です。これはXML(ウェブページの設計などに使われるマークアップ言語)をベースにした形式で、もともと火星探査ローバー専用せんように開発されました。

驚くべきことに、ClaudeはこのRMLコードを自分で書いたのです。ルートの分析結果をもとに、ローバーが直接実行できる移動命令を生成しました。

ちなみにClaudeは、自分が書いたコードを自分でチェックする「セルフレビュー」も行っています。最初に作ったルートを見直して、より安全な経路に修正するという作業をり返したそうです。

人間のプログラマーが「コードを書いて、見直して、直す」という流れで仕事をするのと同じことを、AIが火星のルート計画でやったわけです。

50万項目の安全チェック:デジタルツインの役割

とはいえ、27億ドル(約4,000億円)もするローバーを、AIが作ったルートでいきなり走らせるわけにはいきません。

そこで登場するのが「デジタルツイン」です。デジタルツインとは、実物とまったく同じように動くコンピューター上の仮想コピーのこと。JPLは、Perseveranceのデジタルツインを使って、AIが生成した走行命令をテストしました。

チェック項目はなんと50万以上。たとえば以下のようなことを確認します。

  • 車輪が岩に引っかからないか?
  • 傾斜けいしゃが急すぎて転倒しないか?
  • ローバーの飛行ひこうソフトウェアと命令が互換ごかんしているか?
  • バッテリーは走行距離に足りるか?

この徹底的てっていてきなシミュレーションを通過して初めて、命令が火星に送信されます。

実際の検証では、地上の画像で砂の波紋が見つかり、ルートの一部を細かく分割する修正が必要になりました。ただし、それ以外はAIが作ったルートがほぼそのまま使えたそうです。

つまり、AIが作って、AIがチェックして、人間が最終確認するという三段階の安全体制が組まれているのです。

従来の方法と比べてどれだけ速くなった?

これまでのローバー運転は、すべて地球にいるエンジニアの手作業でした。

地球と火星の距離は平均で約2億2,500万キロメートル。通信には片道で最大24分もかかります。リアルタイムで「右に曲がれ」「止まれ」と指示することは不可能です。

そのため、エンジニアは毎日、衛星画像を分析して翌日の走行ルートを計画していました。この作業には数日かかることもあったのです。

ClaudeによるAI計画では、この時間が約半分に短縮されました。JPLのエンジニアは「Claudeが火星の旅をマッピングする時間を半分にできる」と語っています。

ちなみに、Perseveranceにはもともと「AutoNav(オートナビ)」という自律じりつ走行システムが搭載されています。これはローバー自身が目の前の障害物しょうがいぶつを避けながら走るシステムです。

今回のClaudeによるルート計画は、AutoNavとは役割が違います。AutoNavが「目の前の石を避ける」のに対し、Claudeは「どこからどこまで走るかの全体ルートを決める」という、より大きな視点での計画を担当しています。たとえるなら、AutoNavが「運転手」で、Claudeが「カーナビ」のような関係です。

今後の宇宙探査はAIが主役に?

NASAとAnthropicは、今回の成功を足がかりに、さらなるAI活用を計画しています。

まず、より長い距離の走行計画です。今回は約456メートルでしたが、将来はキロメートル単位のルート計画をAIに任せることが検討されています。

さらに注目なのは、火星以外の天体への応用です。Anthropicの発表によると、ClaudeのAI技術は以下のミッションにも活用できる可能性があります。

  • アルテミス計画:NASAが進める月面探査プログラム
  • エウロパEuropa:木星の衛星えいせいで、氷の下に海があると考えられている天体
  • タイタンTitan:土星の衛星で、大気と液体の湖がある天体

エウロパやタイタンは地球からさらに遠く、通信に数時間かかります。そのような場所では、AIが現地で判断を下す能力がいっそう重要になります。

また、Claudeは単にルートを計画するだけでなく、科学的に興味深い地形を自動で見つけて提案する機能も期待されています。つまり「ここに面白い岩があるから調べませんか?」とAIが科学者に提案する未来も、そう遠くないかもしれません。

まとめ

この記事のポイントをおさらいしましょう。

  • NASAの火星ローバーPerseveranceが、AIが計画したルートで初めて走行に成功した
  • 使われたのはAnthropic社のAIモデル「Claude」で、衛星画像から98.4%の精度で地形を判別した
  • Claudeはローバー専用言語「RML」のコードまで自分で書いた
  • デジタルツインで50万以上の項目をチェックし、安全性を確認してから火星に送信
  • ルート計画にかかる時間は従来の約半分に短縮された
  • 今後は月面探査や木星・土星の衛星探査にもAIが活用される見込み

今回の出来事は、AIが「文章を書く」「絵を描く」といった地球上の作業だけでなく、宇宙探査という人類最先端の現場でも活躍できることを証明しました。AIと人間が協力して宇宙のなぞに迫る——そんなSFのような時代が、もう始まっています。

参考文献

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